英国建築に憧れて
皆さん、こんにちは!
モデルルーム巡りと同じく、西洋館巡りも好きな主婦、ヤマダです。
かなり前になりますが、東京都駒込駅から徒歩12分の場所にある、旧古河邸へ行ったことがあります。イギリス人建築家、ジョサイア・コンドル氏によって設計されたこちらの建物は、1階が西洋建築、2階が和風建築になっているという、なかなかに趣のある建物でした。特に気になったのは、1階にあったサンルーム! そして数多のバラを植えた英国風庭園!とっても心が華やぎました!
2階に和室を取り入れていることからも完全なる英国建築、というわけではないのですが、英国建築の特徴のひとつである煉瓦が外壁に使われたその佇まいは、見ているだけで、海を越えて、ここイギリス? 気分にしてくれます。
旧古河邸がいかにすばらしかったか、延々とお伝えしたいなあと思いつつも完全なる旅行記になってしまいそうなのでいったんストップするとして……。
英国建築の特徴で日本の住まいに取り入れられる考え方、様式はないか、とふと思いました。
日本とイギリス、気候の違いも当然あります。完全な英国建築を建てて住むというのは、現実的ではないでしょう。
けれども設備や、家に対する考え方には学べる部分が数多く隠れているような、そんな気がして。
ということで今日は、イギリスにおける住まいの特徴に焦点を当てて考えてみたいと思います!
1. イギリスでは新築よりも圧倒的に中古物件が多い
日本において住宅を買うとなると、中古マンション、中古住宅と同時に新築物件が選択肢に挙がることもあるでしょう。
そしてそんなとき、自分の希望をすべて形にする注文住宅をと考えられる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、イギリスだと新築物件自体が少ないといいます。理由は家というものを一生ものとして考える日本とは根本的に違う捉え方をイギリス人はしているからのようなのです。
調べてみて驚いたのは、イギリスの方が一生涯に購入する家の平均が5〜6軒である、ということ。
そして、イギリスの方は住宅を選ぶ場合の基準として、内装よりも価格、部屋数、外観を重要視する、ということ。
あまりに日本と考え方が違い過ぎておおお!となりました。
そもそもなぜそんなに家が必要なんだ?!と思ったら、どうも一生涯5〜6軒というのはライフスタイルによって住み替えていった結果、ということのようなのです。
たとえば、独身時代、住むための部屋は、日本でいうアパートと同じ扱いとなる、「フラット」と呼ばれる住宅を購入します。
その後、パートナーを見つけ、共に暮らすようになると、フラットよりも部屋数もほしくなります。そのため、アパートのような外観でありながら、小さな家同士がくっついた「テラスハウス」に移り住むことを考えるようになります。
さらに子どもが増え、庭やベッドルームの数が多い家がほしい、ということになると、「セミデタッチドハウス」という、二つの家が左右対称にくっついた様式の家、子どもが成長して、もう少し大きい家が、となったらさらに大きい「デタッチドハウス」というように、ライフシーンに合わせて家を住み替えていくんですね。
子どもが手を離れ、夫婦ふたりになって家のメンテナンスも大変、となったら「バンガロー」という平屋へ移り住む方もいらっしゃるとか。
唯一無二の自分だけの城を生涯持つ、というよりも、そのときどきに必要な住まいを、必要に応じてカスタマイズして住むという考え方をイギリスの方はしているのだな、と感じました。
最近の建材の価格高騰の影響もあり、新築マンションよりも中古マンションに人気が移ってきたとはいえ、安価に新築に住めるなら新築を選ぶ方が日本は多いのではないか、と個人的に思います。
しかし、イギリスにおいては新しさ、内装よりも町並み、外観に重きを置いて考えられる方が多いよう。実際、イギリスの町並みをテレビで見たとき、感じたことがあります。日本だと多種多様な家が立ち並んでいて雑多な印象があるけれども、イギリスはひとつひとつの家が景色を形作る要素として息づいている、と。
町並みを含めて家、と認識している、と言い換えてもいいかもしれませんね。
そういえば日本でも、京都では景観を崩すような家は建てられない、という話を聞いたことがあります。この辺り、イギリス人の住まいへの考え方と近いものがあるのかもしれません。
日本もどんどん高齢化が進み、空き家も増えます。そうなったとき、新しい家を建てるというよりも、古い家を上手に使える仕組みを作れたら、自分の死後、家をどうしていったらいいか、悩まずともよいのかもしれない、と思いました。
2. 家を見せるということは心を開くということ
イギリスの方にとって家を見せるということは心を開くこと、だそうです。心を開く、なので、家が綺麗とか広いとかそんなことはどうでもよくて、片付いていなくても狭くても、それでもいいそう。家にあるこだわり、家に漂う空気などを余さず見せるのが大切だとか。
なんか素敵ですね!日本だとうちみたいな狭くて片付いていない家にご招待していいのか、なんていろいろ考えちゃうけれど、家を見せることで心を開くとお互いが認識しあっているのであれば、むしろ散らかった状態であればあるほど、心を許されているようにも感じる。少し変わったオブジェが飾られていてもそれも個性とするっと受け入れてもらえそうな気がする。
住む人の色がどうしたって滲む家。その家を肯定することで人も肯定できるこの考え方、とても素敵だと私は思います。
さて、そんな風に開けた考え方を持つイギリスの方たちにとって、人を家に招くことは日常的なこと。だからなのか、設備にも日本とは少し違う部分が見受けられます。
・キッチン
日本だとキッチンは料理をする場所、だからこそ機能性が求められる、というところですが、イギリスはキッチンもひとつの部屋として扱うそうです。だからリビングや玄関のようにお客様が見ても楽しめるようなデザイン性を大事にしているのだとか。小物を置いてみたりとか。見せるキッチン、とでもいいましょうか。でもそんなことをしたら汚れる……と思いたくなるのですが、これはイギリスという国において料理がオーブンを使うものが多いことも大きいみたいです。日本のようにコンロもあるのですが、コンロの上に蓋をかぶせて調理台と一続きにできるようにしている家も多いそう!不便そう……と思ったけれどあんまり焼いたり煮たりする料理をしないからそんなに不便にも思わないということのようです。あと食洗器もわりと当たり前に家にあるみたいで、水撥ねも少ないからできるとか。まあ、イギリスは日本よりも冬が長いし、水仕事は日本より辛いはず。だとしたら食洗器は絶対必要かもですよね。また食器棚も扉がないそう。見せる収納と言う感じでお客様に目で見て楽しんでもらうという感じだそうです。ウェルカム感がキッチンんから溢れていますね!これを日本で取り入れるのは厳しいな…と正直思ったのですが、食器棚の部分には共感も覚えました。
機能性だって大事。でも毎日使う場所だからこそ、テンションが上がる場所にするのも大事だと思うのです。扉がない、というのはちょっとだけ抵抗はあるけれど、中が見やすい食器棚にして、そこにお気に入りの食器やちょっとおしゃれな洋書、エスプレッソマシーンやコーヒーミルなんかも飾ってリビングからも見られるようにしたら、自分も家を訪ねてくれたお客様も目を楽しませられるのではないでしょうか。
・照明の考え方
英国建築を見ていて感じたこと。ちょっと、暗い? どうやらこの感覚は間違いではなかったようで、イギリスの方の住まいも明るすぎない照明を使われる傾向があるようなのです。たとえば、日本であれば当たり前にシーリングライトを使い、部屋のどこにいても光を充分に感じられるようにしますよね。しかしイギリスでは違います。間接照明を多数使うのが主流のようです。光の色も白熱灯のような温かみのある色がベース。もっともキッチンなど作業するスペースには日本と同じようにシーリングライトが使われてはいるようですが、リビングなどくつろぎスペースで使用されているのは、関節照明たちです。ちょっと暗いんじゃ……と心配にもなりましたが、必要なところに、たとえば本を読むスペースにデスクライトを置く、など、光が必要ならば小さな照明をピンポイントで置くという感じです。結果、小さな関節照明たちが集まって温かい光が郁恵にも重なってとても優しい雰囲気が部屋に満ちることになります。
私は洋館巡りが好きなのですが、部屋の中には陽光があまり差さない部屋もあり、そうした部屋では昼間でも明かりが灯されていました。そんなとき、暗いながらも妙に落ち着く気持ちになったことを覚えています。
日本では明るくて清潔な印象を与える「白」の光が多数利用される傾向にあると感じます。しかし、白熱灯のような「橙」の明かりに癒しを私は感じます。これは科学的にも証明されていて、白熱灯や蝋燭の明かりなど「橙」の明かりは副交感神経に作用し、リラックス効果があるそうです。
先程、家を選ぶ際、町並みも大切にしてイギリスの方は家選びをするというお話をしましたが、この明かりにもその考え方が反映されていて、イギリスでは窓の中から漏れる明かりも町並みの一つとして個人が考えているそうです。つまり、オレンジ色のほのかな明かりが複数の窓から零れる景色というものをそれぞれが演出することで町並みを皆が作っている、というような。
いや、すごいな、と思いました。そしてちょっとうらやましいなと感じました。家だけでなく、町を皆が愛しているのが当たり前というその感じがすごく、素敵だな、と。
日本においてこの意識を個人が取り入れていく、ということは難しいな、とは感じます。しかし、白熱灯の明かりにより癒しを感じる、というそのメカニズムは国を越えて同じ。ただでさえ、外で頑張って働く、あるいは家でも必死に頑張って仕事をしているのであれば、リラックスができる部屋というものを家にひとつは作り、そのリラックスのための材料として間接照明、白熱灯などを取り入れてみるというのも素敵なのではないか、と感じました。
・フォーカルポイントといての暖炉
イギリスといえば暖炉がある、は私の中の勝手なイメージでしたが、実際のところ、イギリスのお宅には現在でも暖炉を設置したお宅が多いようです。古い建物を大事に使い続けるからこそ、暖炉も残り続けるのでしょうね。もっとも暖房器具が発達した現在、暖炉を、暖を取る目的で使用する家は減ってはきています。それでも家の中に残したままにしているのは、暖炉をお部屋の個性のひとつとしてイギリスの方が大事にされているからのようなのです。フォーカルポイント=部屋の個性を決定づける、最初に目を引く設備、あるいはインテリアとして。
日本には暖炉のある家は少ないと思います。しかし歴史的建造物として公開されている建物において、囲炉裏が配された住まいはありますよね。そうした建造物を見学したとき、真っ先に目が行くのってやはり囲炉裏だなあと感じます。囲炉裏と暖炉。形式は違いますが、囲炉裏も暖炉同様、フォーカルポイントと呼べるのかもしれません。
日本の住宅には暖炉を設けることは難しいと感じますが、暖炉のように注目が集められ、なおかつリラックス効果もありそうなインテリアを置けたら、お部屋に個性が生まれて面白いのではないかと感じました。
ということで、調べてみると、暖炉風のヒーターが結構売っている!!!
このヒーターあったらかなりお部屋にインパクトが生まれる気がします!
なんとなくこの家具を、ではなく、フォーカルポイントとなるべきなにかを設定し、それを中心にインテリアを整えていく。そうしてこだわりを持ってお部屋作りに臨むことで、住む側も訪れた側も楽しんで過ごせるようなお部屋が作れるのではないかとわくわくいたしました!
3. 終わりに
それぞれの国、それぞれの土地によって住みやすい家は異なります。
だから完全にトレースして、英国建築の家を建てて住むとなると、住みにくさを感じてしまうかもしれません。
けれど、そんな中でも日本の住まいに取り入れてみたら面白い!と思うものはたくさんある!今回、イギリスの住まいについて調べていてそんなことを思いました。
調べてみたら他の国の住まいの中にも、ものすごく日本にフィットする住まいもあるかもしれませんね。
今後、調べてみたいなあ、と意欲が湧きました!
最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!
次回の記事でもお目にかかれましたら幸いです!
参考文献:英国の住宅 住まいに見るイギリス人のライフスタイル
著:山田佳世子 Cha Tea紅茶教室