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耐震基準適合証明書と住宅ローンの関係【知らないと大きな損失になる!】
更新日2021-10-17 (日) 03:14:05 公開日2020年4月20日
住宅の購入を予定している人の中には、住宅借入金等特別控除(住宅ローン減税)といった住宅購入時に利用可能な税制の軽減措置制度を検討している人も多いと思います。
しかし、この制度は中古住宅の購入時には注意しておかないと購入後に利用ができないことが有ります。
住宅ローン減税はある一定の築後年数や有るべき書類が無いときなど受けることができない場合もあるので注意が必要なのです。
ここでは築後年数の要件を緩和できる書類のひとつ、耐震基準適合証明書とは何なのか、取得することで得られるメリットについて解説していきます。
★目 次★【知らないと損に!】耐震基準適合証明書と住宅ローンの関係
耐震基準適合証明書とは
耐震基準適合証明書は、建物の耐震性が基準を満たすことを建築士等が証明する書類です。主に住宅ローン減税などの税制優遇を利用するための築年数要件の緩和などに使用されます。
この耐震基準適合証明書発行できるのは、
・建築士事務所に所属する建築士
・指定確認検査機関
・登録住宅性能評価機関
・住宅瑕疵担保責任保険法人
などとなっておりますが、当然証明書が発行してもらうには、「新耐震基準を満たしている」必要がありますので、建物が古く新耐震基準を満たしていない建物は、耐震診断を受けたからといって証明書発行されるわけではありません。
耐震基準適合証明書の申請書ひな形は国土交通省に公開されています。
☛ 国土交通省 住宅ローン減税
新耐震基準はいつから?
耐震基準とは、建物の設計において適用される地震に耐えることができる構造の基準で、昭和56年(1981年)6月1日以降の建築確認において適用される基準の事をいいます。
この日以降に建築確認を受けて建築された建物先ほどの「現行の建築基準法の耐震基準を満たしている」建物で「新耐震基準」の建物といいます。これに対してその前日までに適用されていた基準を「旧耐震基準」の建物といいます。
ここで注意が必要なのが、「昭和56年6月1日」というのは建築確認を受けた日付となります。新耐震基準に基づいた設計で建てますと申請をして、許可を受けた日付ということです。
昭和56年7月に完成している建物は、旧耐震基準に適合する内容で建築確認を申請している可能性がありますが、あくまでも基準日は建物が完成した日ではなく建築確認を受けた日付となります。
特にマンションの場合は、着工から完成まで1~2年程度必要となりますので、昭和58年頃に完成しているマンションでも「旧耐震基準」の建物である可能性もあります。
不動産の公告やチラシなどに記載されている築年数も建物が完成した年月が記載されていますので、「昭和56年9月築」では新耐震基準なのか旧耐震基準なのかを判断することはできません。
新耐震基準と旧耐震基準では建築にかかるコストも変わってきますので、基準日以前に駆け込みで申請している物件も多くありますので、ご注意ください。
新耐震基準と旧耐震基準の違い
昭和25年(1950年)に生命や財産を守ることを目的に建築基準法で定めらました。現在の日本にある建築物はすべてこの基準を守らないといけない決まりがあります。
この建築基準法に定める耐震基準は、過去に起きた大震災に合わせて見直されてきました。昭和53年(1978年)の宮城県沖地震や平成7年(1995年)の阪神・淡路大震災では、多くの住宅や建築物の倒壊、道路などの尊家など多くの被害が見られ多数の死傷者がでました。
現行の耐震基準は昭和53年の宮城県沖地震の被害が想像以上に大きかったため、旧建築基準法のままでは大規模な地震が起こらずとも大きな被害が生じることが予想され、耐震基準を見直すことになりました。
具体的には、
旧耐震基準は、震度5強程度の揺れでも建物が倒壊しないような構造基準と設定されていたのに対して、新耐震基準は震度6強~7程度の揺れでも倒壊しないような構造基準として設定されております。
また木造住宅にはもう一つ大きな転換点があります。
それは、2000年(平成12年)6月に「品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)」が制定され、木造住宅についても重要な改正がされています。
この改正では、地盤調査が事実上義務化されたほかに、接合部の金属や体力壁の設置などが具体的に規定され更に耐震性が向上しました。
品確法では「耐震等級」という胸中の基準で評価・表示されるようになり、耐震等級は以下のとおりとなっています。
等級1:建築基準法と同程度の耐震性能
等級2:建築基準法の1.25倍程度の強度
等級3:建築基準法の1.5倍の強度
建築物の耐震基準が新旧どちらか知りたいときは
耐震基準が新耐震基準なのか、旧耐震基準なのか、これから住宅の購入を検討している方なら気になるところでしょう。新築住宅や築浅物件を検討している方は気にしないと思いますが・・・。
新耐震・旧耐震、どちらの基準で建てられているかを調べるには、「建築確認」を見れば分かります。
建築確認は住宅を建てる時に「このような建物を建てます」と役所や検査機関に申請する書類なので、建物の所有者や売主が所有していると思います。
中古住宅の購入を検討されている方は不動産仲介会社に依頼して、売主が所有している「建築確認」を見せてもらうようにしましょう。
建築確認の通知の発行日が昭和56年6月1日以降であれば新耐震基準、それ以前であれば旧耐震基準の建築物となります。
もし、建物所有者や売主が建築確認通知書を紛失されている場合は、役所や自治体の窓口で、「建築計画概要書」もしくは「台帳記載事項証明書」を発行してもらいましょう。こちらの書類に建築確認の通知日付が記載されています。
耐震基準適合証明書取得のメリット
耐震診断を受けて新耐震基準に適合している場合は、「大きな地震が発生しても倒壊する危険性は少ない」と安心を得られることは言うまでもありませんが、「住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)」などの税制優遇が受けられることが最大のメリットとなります。
ここでは住宅ローン減税を受けるための適用要件を見ていきましょう。
1.その者が主として居住の用に供する家屋であること
2.住宅の引渡し又は工事完了から6カ月以内に居住の用に供すること
3.床面積が50㎡以上であること
4.店舗等の併用住宅の場合は床面積の1/2以上が居住用であること
5.借入金の償還期間が10年以上であること
6.既存住宅の場合、以下のいずれかを満たすものであること(一般住宅のみ)
①木造(耐火建築物以外) ・・・ 築後20年以内
マンション等(耐火建築物) ・・・ 築後25年以内
②一定の耐震基準を満たすことが証明されるもの
③既存住宅売買瑕疵保険に加入していること
7.合計所得金額が3000万円以下であること
8.増改築等の場合、工事費が100万円以上であること 等
お気づきでしょうか?
昭和56年6月1日以降に建築確認を受けた建物は「新耐震基準」とお伝えしましたが、住宅ローン減税などの税制優遇を受けられる建物は、木造住宅の場合は築後20年以内、マンションの場合は築後25年以内の建物しか適用となりません。
これらの期間を超えている建物は、「②一定の耐震基準を満たすことが証明されるもの」いわゆる「耐震基準適合証明書」を取得しないと税制優遇を受けることはできないのです。
逆をいえば、「旧耐震基準」の建物であっても「耐震基準適合証明書」を取得できれば、築年数に関係なく適用要件を満たし、住宅ローン減税を受けることができるのです。
おまけとして、住宅ローン減税の適用外ケース
1.対象とならない住宅の例
①別荘・セカンドハウス
②貸家、投資用物件
③自己居住用でない住宅(親のために建てた等)
2.対象とならない住宅ローンの例
①会社からの借入(無利子または利率0.2%未満)
②親、知人からの借入
3.その他、適用外の例
①贈与による取得、または同一生計親族などから取得した場合
②居住の用に供した年とその前後の2年ずつの5年間に、居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例などの適用を受けていないこと
主な税制優遇
ここでは住宅を購入したときに利用できる主な税制優遇について見てみましょう。
住宅ローン減税(住宅借入金等特別控除)
対象となる建物が消費税が課税されている建物か否か、長期優良住宅や低炭素住宅であるのか否かにより、減税される上限額(200万円or400万円)や還付期間(10年or13年)がことなりますが、適用される税制優遇の中で一番効果の大きいものとなります。
また、ご夫婦でペアローンを組んだ場合は、それぞれに住宅ローン減税を利用することができますので夫一人で6000万円の住宅ローンを組むより、夫婦でそれぞれ3000万円づつローンを組んだ方が、効果が大きくなる場合があります。
(妻が産休・育休で収入が無い年があると、その年は住宅ローン減税が受けられない可能性がありますので要注意)
登録免許税の軽減
耐震基準適合証明書を取得すると所有権移転登記や抵当権設定登記にかかる登録免許税が以下の通り軽減されます。
①建物の所有権移転登記:固定資産税評価額×2% → 0.3%に軽減
②土地の所有権移転登記:固定資産税評価額×2% → 1.5%に軽減
③抵当権設定登記 :借入金額×0.4%が0.1%に軽減
あまりピンとこないかもしれませんが、軽減を受けられる場合と受けられない場合では、ウン十万円の差がでてきます。
不動産取得税の軽減
建物の不動産取得税:固定資産税評価額×4% → (固定資産税評価額-控除額)×3%に軽減
土地の不動産取得税:固定資産税評価額×4%→
「固定資産税評価額×0.5×3%-控除額(下記①か②の多い方」に軽減
①45,000円
②「土地1㎡当たりの固定資産税評価額×0.5」×「課税床面積×2(上限200㎡)」×3%
※昭和57年1月1日以降に建築された住宅は耐震基準証明書不要
余談ですが、
不動産を購入する時には、物件価格とは別に仲介手数料・登記費用・火災保険・銀行保証料などの諸費用が必要となります。3000万円の物件を購入した場合、200万円前後の諸費用が必要となりますが、これらの代金の支払いは不動産の引渡しを受けるとき(残金決済時)に支払う事が一般的です。
それに対して、不動産取得税は取引が完了してから半年~1年後くらい、忘れた頃に通知がやってきます。
軽減が受けられる住宅を購入していればそれほど大きな金額にはなりませんが、軽減が受けられないと住宅の場合はかなり大きな金額を支払う必要があります。
もし軽減が受けられない住宅を購入した場合は、予めどれくらいの不動産取得税がかかるのかを計算してお金を準備しておくことが重要です。
ちょっと一服(住宅ローン減税の名称)
「住宅ローン減税」、これが一番しっくりくる言い方ですが、正式名称は「住宅借入金等特別控除」となります。
しかしこの名称は長ったらしいので、一般的には「住宅ローン減税」もしくは「住宅ローン控除」と呼ばれています。
では、「住宅ローン減税」という言い方がなぜしっくりくるのかを医療費控除と比較して解説。
年間で10万円以上の医療費を支払った場合、確定申告するとちょびっと戻ってきます。
例えば、年収(所得額)500万円の方が年間で医療費30万円を支払った場合、当初の所得税は年収(所得額)500万円に対して課税されますが、確定申告することにより年収(所得額)480万円(500万円から医療費10万円を超えた額を控除)に対しての所得税を再計算することになり、ちょびっと税金が戻ってきます。
このように医療費の場合は、所得から支払った医療費を「控除」して、所得税の再計算をしますので「医療費控除」と呼びます。決して「医療費減税」とは呼びません。
対して、「住宅ローン減税」は住宅ローンの年末残高の1%が支払った所得税から戻ってきます。
具体的には、1年間で支払った所得税が20万円の方が住宅ローンの年末残高2000万円あれば、支払った所得税20万円が全額返ってきます。
医療費のように年収から控除して所得税を再計算して・・・、というようなまどろっこしい計算はしません。ダイレクトに支払った税金が戻ってきます。
所得から「控除」して計算するのではなく、支払った所得税から「減税」されて還付されますので、「住宅ローン減税」という呼び方がしっくりくるのです。
耐震基準適合証明書を取得するタイミングと注意点
木造住宅で築20年、マンションで築25年を経過している場合は、耐震診断適合証明書を取得することによるメリットがあることを説明してきました。
では、誰がどのタイミングや流れの中で取得するもなのかを解説していきましょう。
基本的には売主が申請し、引渡し前までに取得することをお勧めしております。
これは、税制優遇を受けられる物件であることと、築年数が経過しているけど現行の耐震基準に適合している安心な物件であることを購入者にアピールすることができ、耐震診断適合証明書を取得していない他の物件と差別化して販売活動を優位に進めていけるというメリットがあるからです。
しかし、現実としては診断を受けるために費用もかかりますし、もし基準を満たしていなければ耐震改修工事を行って基準を満たす必要があります。
リフォームやリノベーションなどの工事だけでは耐震診断適合証明書を取得する基準は満たさない場合が多いのです。
もし戸建ての耐震補強工事を行う場合は100万円以上の費用が発生する可能性もありますので、これから売却(手放す)する物件にお金をかけたくないという売主も少なくありません。
また、マンションの場合はマンション管理組合で耐震診断や耐震補強工事を行うことになりますので、物件の売主である個人で行うことは現実的ではありません。ゆえに旧耐震のマンションを購入する場合は、耐震基準適合証明書の取得は困難であると認識しておいた方がよいでしょう。
このように「引渡し前に耐震基準適合証明書」が取得できない場合は、引渡し前に買主が仮申請を行い、引渡後に耐震診断と耐震補強工事を行う方法も認められています。
ただし、住宅ローン減税を利用するには住宅の引渡しから6カ月以内に入居することが決められています。
買主が耐震基準適合証明書を取得しようとする場合は、居住開始(最長引渡しから6カ月)までに耐震診断を受け、耐震補強工事を行い、証明書の申請を行い書類を発行してもらう、というスケジュールを組まなければなりませんので、かなりタイトなスケジュールとなります。
しかも引渡後の耐震診断で耐震基準を満たしていることが判明しても、住宅ローン減税の対象外となってしまうのです。
また、登録免許税は引渡の時に発生する費用となりますので、引渡しの時に耐震基準適合証明書が必要となります。引渡後に耐震基準適合証明書が取得できても登録免許税の軽減措置は受けられないのです。
結論としましては、
「売主が耐震基準適合証明書を取得してから販売を開始する」というのがベストです。
売主が費用もかけたくない、取得する気もない、という場合は、「買主が費用を負担して売主に協力してもらい耐震基準適合証明書を引渡し前に取得する」がベターです。
ただこの場合は「おれは耐震基準適合証明書がなくても購入するよ」と他の購入者が現れると、せっかく購入したいと考えていても他の人に取られてしまう可能性もあります。
また、売主としては耐震診断は受けたけど基準を満たしていないと診断されることを嫌がりますので、不動産仲介会社を通して丁寧に説明して売主の協力を得ることが必要となります。
マンション管理組合としてマンション価値アップの対応を!
築後25年を経過したマンションが、一律住宅ローン控除対象外になるのであれば、せっかく多額の費用を使い大規模修繕工事を行っても、売却するにあたり売却しづらくなる可能性があります。
ただ、ほとんどのマンション管理組合では、定期的な大規模修繕工事などを行いマンションの資産価値を維持しています。
マンションでも耐震基準適合証明書の取得はマンションの資産価値を高め、売却の場合にも税制を有利に利用でき、その他対応していないマンションに比べ優位性が有るでしょう。
従って、マンション管理組合で積極的に耐震基準適合証明書を取得するほうが良いと言えます。
まとめ
毎年2月の確定申告の時期になると、「住宅ローン減税を使いたいんだけど、耐震基準適合証明書はどうすればいいの?」という問い合わせが購入した人から不動産会社に問い合わせがはいることがあります。
木造で築20年以内、マンションで築25年以内の物件であれば耐震基準適合証明書がなくても住宅ローン減税を利用できますが、それ以外の物件の場合は購入した後に「耐震基準適合証明書はどうすればいいの」と言っている時点で手遅れの場合がほとんどです。
多くの不動産会社は購入する時に「この物件は住宅ローン減税を受けられません」「税制優遇が受けられません」と購入者に説明をしているとは思いますが、中には説明しない不動産会社もあります。
そんな場合でも、購入した後に税制優遇が受けられないと知っても後の祭りです。今はほとんどの情報が簡単に手に入りますので、しっかり自分でも調べてみましょう。