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契約不適合責任の免責とは⁉
不動産売買で免責になるケース、免責にならないケースをわかりやすく解説

更新日2022-01-23 (日) 03:11:19

2020年4月1日、約120年ぶりに民法が大きく改正施行され、それまでの「瑕疵担保責任」という概念はなくなり「契約不適合責任」が施行されました。
それ以降の不動産取引で、『契約不適合責任を免責する(負わない)』という特約を良く目にするようになりました。

そこでここでは、『契約不適合責任の免責』だけに焦点を当て、不動産売買を例として解説します。

ただ『契約不適合責任の免責』とはどういう事なのかを知る前に、契約不適合責任とはどういう責任なのかも知る必要があるでしょう。

この契約不適合責任の免責については、不動産業者も知識と理解が十分ではなく、その事が不動産売買時に売主にも買主にも大変な不利益をもたらす結果となる場合があるのですが、その事実について、ほぼ他のコンテンツでは解説していません。
由々しき事態です。

契約不適合責任を簡単に言うと

契約不適合責任では、売主が契約の内容に適合しない物を買主に提供したとき、例えば引き渡された目的物が不動産(土地建物)でその種類、品質、数量に関して契約の内容に適合していないときは、買主は5つの権利で責任を求める事ができるように変更(再構成)されました。
この『契約不適合責任』は、それまでの「瑕疵担保責任」とは大きく内容が異なり、売主の責任を一切合切全部免責とする方法は採らず、免責としたい部分のみを抽出して免責にする方法に変更されたのです。

『契約不適合責任』はここが最も大きな変更点で、要は「瑕疵担保責任」の時の免責とは一線を画し、売買契約書に「何が書かれているか、いないのか」がとても重要と言うことです。

この『契約不適合責任』への移行は、日本が国際社会の基本ルールに合わせるためにも必要で、特に日本の不明瞭な不動産売買場面においてとても重要になり、不動産売買契約時において宅地建物取引業者も、また売主や買主もそれに併せ明確に対応しなければいけなくなりました。

ということで、『契約不適合責任の免責』を解説します。

契約不適合責任とは

『契約不適合責任 免責は、』のポイント・まとめ11個

〇 売主の負う買主への売買物件の欠陥引渡しについての責任を免除にすること!

〇 売主買主の任意合意で約定できる。しかし、約定しても無効になる場合がある!

〇 不動産業免許業者が売主で、買主が一般個人の場合、売主の責任は免責にできない!

〇 現状有姿売買という契約文言がある場合でも、自動的に付与されない!

〇 旧民法の瑕疵担保責任免責のように全部免責とすることはせず、特約でその内容・範囲を取り決める!

〇 重要事項説明書と売買契約書で約定した後、個別具体的には売主から買主への『物件状況等報告書』と『付帯設備表』の作成交付で確認し合う。

〇 不動産仲介業者は、個人間で確認した『物件状況等報告書』と『付帯設備表』について何ら責任をとらない。

〇 買い手に不利な特約なので、買い手は大幅な価格交渉をしてくることがある!''

〇 心理的瑕疵と環境的瑕疵を契約不適合責任の免責にしたいなら、販売時から告知しよう!

〇 契約不適合責任免責で売るくらいなら、インスペクション+瑕疵保険付保で売却しよう!

〇 契約不適合責任免責でどうしても売りたいなら、不動産買取会社が断然おススメ!


★目 次★【契約不適合責任の免責とは⁉不動産売買の場面でわかりやすく解説】

ここでは、『契約不適合責任の免責』について不動産売買の場面で解説していますが、そもそもどんな責任を免責にできるのか、免責できる場合と出来ない場合について、また実際の売買現場での契約不適合責任を免責した不動産売却時、購入時の注意点と、運用方法までをも解りやすく解説させていただきます。

ゆえに、まずは契約不適合責任とは何なのか、基礎を簡単に確認しておきましょう。

なお便宜上、2020年4月1日の改正民法を「新民法」、2020年3月31日までの民法を「旧民法」として解説します。

契約不適合責任とは? どんな責任を免責にしようとする⁉

契約不適合責任とは何かを一言で言うと、契約によって定められている品質、種類、数量が適合しない宅地・建物を売主が買主に引き渡した場合に、売主が負う責任を言います。

実は、2020年3月末まで適用されていた旧民法570条の隠れた瑕疵が発覚した場合にのみ責任を負う瑕疵担保責任制度を廃止して、契約不適合責任制度にルールに変更したのです。

特に近年では日本の不動産を諸外国の方々が買う事が多くなり、この『契約不適合責任』への移行は、日本が国際社会の基本ルールに合わせるためにも必要で、特に日本の不明瞭な不動産売買場面においてとても重要になりました。

契約不適合責任制度では、宅地・建物に欠陥等があったときに売主が契約責任を負うか否かは、当該欠陥等の存在が「契約の内容」に適合しているか否かで判断します。

旧民法の瑕疵担保責任における買主の権利は、隠れた瑕疵が発覚した場合にのみ責任を請求できる『損害賠償請求権』と、隠れた瑕疵が発覚し契約の目的を達することができない場合の『契約解除権』の2つだけでしたが、新民法での契約不適合責任では、買主は当該欠陥等の存在が「契約の内容」に適合しているか否かで「追完請求」、「代金減額請求」、「催告解除」、「無催告解除」、「損害賠償請求」5つの方法で対応可能となったのです。
要は、契約不適合責任では買主の権利行使の範囲が広くなったというわけですね。
ここではそれぞれ簡単に見ておきましょう。

契約不適合責任の範囲

追完請求

引渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができます。

例えば、クルマを購入したけどウィンドウが壊れていたため、新たに新車や同程度の別車種との交換、または修理を求めることができます。

ではクルマを不動産に置き換えて考えると、

不動産はまったく同じ物件は存在しません。よって代替物は用意できません。
雨漏りが発生したからと言って、代わりの家と交換することができませんので主に追完請求は修補の請求となってきます。

ただし、売主は買主に不相当な負担を課すものではないときは、買主が請求した方法と異なる方法での履行の追完をすることが可能とされています。

つまり、売主に選択肢があるということです。
また、契約内容の不適合が買主のせいで生じたときは、買主は売主に対して追完請求ができないとされています。

代金減額請求

代金減額請求権は契約不適合責任として上記の追完義務を催告したのにも関わらず、あるいは売主が追完拒絶の意思表示を明確にしている場合に「代金を減額してください」と言える権利であることがポイントです。

いくら減額されるのかは、「不適合の程度に応じて」ということになります。

先ほどの「追完請求」で雨漏りの修補を請求したにも拘わらず、売主が応じてくれなければ、「じゃあ売買代金を安くしてくれ」と請求できるのです。

催告解除

売主、買主は、その相手方が本契約にかかる債務の履行を遅滞したとき、その相手方に対し、相当の期間を定めて債務の履行を催告したうえで、その期間内に履行がないときは、本契約を解除することができます。
ただし、売主の債務不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは催告解除ができません。

無催告解除

契約の内容に適合しないこと(契約不適合)で、契約の目的を達成できないときは無催告解除ができます。こちらは、目的を達成できないときに限り行使される権利になるため、多少の不具合で補修できる場合は認められないものになります。

損害賠償請求

買主に損害が発生した場合は、売主への損害賠償請求が可能となります。
ただし、売主の責めに帰すべき事由がない場合は、売主は損害賠償義務を免れることができます。

以上、契約不適合責任とは何かについて簡単に説明させていただきました。
さて、契約不適合責任とは何かについてご理解いただいたので、次はこの項の本題、『契約不適合責任の免責』について解説します。

契約不適合責任の免責とは? 免責に出来る事、出来ない事とは⁉

不動産売買に関し、個人間の中古物件の売買であって、売主と買主双方が合意すれば、売主の契約不適合責任を免責とする旨を特約することは可能になります。
双方合意を確認するために、契約書条項として交わすことも忘れないようにしましょう。

契約不適合責任の免責は、「特約」で有効になる!

新民法の契約不適合責任も、旧民法の瑕疵担保責任と同様に絶対的なものではなく『任意規定』なので、売主と買主双方が任意合意し特約することは自由で、基本的には有効になります。

契約不適合責任の免責が無効になる場合もある!

ただ、この契約不適合責任の免責を売主と買主双方が任意合意し特約していても、法律で無効となる場合もあるので、以下で見てみましょう。

①新民法の規定による(新民法572条)

売主自ら第三者のために権利を設定したり、第三者に対し、目的物を譲渡した結果、契約内容に不適合をもたらした場合や、売主が契約内容に適合しないことを知りながら、買主に対しその事を告げなかった場合には免責となりません。これは信義に反する場合に該当するので、免責されないのは当然と言えば当然でしょう。

要は、売主が知りながら告げられていなかった事実については、契約不適合責任を免れることはできないということです!

②宅地建物取引業法の規定による

売主が宅地建物取引業者(宅建業者=不動産業者)で、買主が宅地建物取引業者(宅建業者=不動産業者)でない一般人の場合、契約不適合が存在することを通知する期間を、目的物の引渡しから2年以上としなければならず、2年未満に限定する特約は無効となります。

ここで注意しなかればならないのは、上記の場合、特約として有効なのは、買主が契約不適合の事実を知った時の、売主に対する通知期間を引き渡しから最短2年間とすることだけであるということです。民法改正前と同様、「契約不適合責任は引渡しから2年間に限り行使することができる」という行使期間自体を限定2年間にする特約を設けたら無効となるので注意が必要です。

例えば、マンションや一戸建てなどでリノベーション済み中古物件などは、その多くが不動産業者が所有し売主となっています。不動産業者が売主で、買主が一般人の場合、売主は契約不適合責任を必ず負うこととなり免責にできないのです。

③住宅の品質確保の促進等に関する法律の規定による【新築物件の場合】

住宅の品質確保と促進等に関する法律に基づき、新築マンションや新築一戸建て、建売住宅など新築住宅の売主は、目的物の引渡時から10年間は、「主要構造部分」については、契約不適合責任を負う義務が有り、これに反する特約は無効となります。

言い換えますと、要は、新築物件は中古物件とは違い、この住宅の品質確保の促進等に関する法律の規定によって、売主が契約不適合責任を負う義務が有るという事です。

このように、売買する物件については売主買主双方で不具合、問題がないのかどうかをきちんと確認をする必要がありますが、特に買主は、購入時行動として販売図面閲覧時や物件内覧時、また売買契約時に契約不適合責任免責という条件が付いているかどうか、また付いていればその内容について十分に確認をして臨むべきなのです。

④消費者契約法の規定による

事業者(法人その他の団体や事業のために契約する個人を含む)と、消費者(個人であって非事業のために契約する者)との間の契約(消費者契約)の場合には契約不適合責任の免責特約は無効となります。


以上、契約不適合責任の免責が無効となる場合を見ていただきました。

では次に、中古物件の不動産売買時によく見かける『現状有姿で土地建物を売り渡す』という文言だけで、免責が自動付保できるのかということについてみ見てみましょう。

現状有姿という言葉がある場合、契約不適合責任の免責は自動的に付与されているか⁉

中古マンションや中古一戸建てなどの中古物件の不動産売買契約書において、売主は売買対象物件を買主へ「現状有姿」にて引き渡す旨が規定されていた場合、契約不適合責任の免責は自動的に付与されているのかという疑問が出てきますね。

実は、「現状有姿」にて引き渡す旨が規定されているのみでは、売買対象物件(中古物件)に契約不適合があったとき、売主は契約不適合責任を負うようになります。

「現状有姿で引き渡す」という約定が有っても、売主の契約不適合責任を免責するとの規定も特約していない限り、売主は買主への契約不適合責任を負い、免責となりませんから注意すべしです。

ゆえに契約不適合責任を免責にしたいときは、売買契約書に「特約・容認事項」をしっかり書くことが最も重要です。
契約不適合責任では、売買対象物がどんな状態であるかをはっきりさせる必要があるため、特約・容認事項で「売買対象物の状態を告知し、そのうえで契約不適合責任を免責とする」必要があるのです。
これをカバーするために用意されている条文と書面がありますので、後程ご紹介します。

ただ、売主が宅地建物取引業者(宅建業者=不動産業者)の場合、契約不適合責任を免責する旨を特約しても上記『宅地建物取引業法の規定』により無効となります。

売買契約書の契約不適合責任の免責についての具体的条文

コーラルでは、売買契約書で『契約不適合責任の免責』については、以下の条文で特約し対応しています。
この条項は、コーラルの加盟する公益社団法人全日本不動産協会のマンション売買契約書書式の条項になりますが、文例を出しておきますので参考に確認しておきましょう。

(契約不適合による修補請求)
1.売主は、買主に対し、引渡された建物の専有部分が次に該当する場合は、品質に関して契約の内容に適合しないもの(以下「契約不適合」といいます。)として、引渡完了日から3ヶ月以内に通知を受けたものにかぎり、契約不適合責任を負い、それ以外の建物の契約不適合および土地の契約不適合ならびに共用部分に原因がある契約不適合について、責任を負いません。
(1) シロアリの害
(2) 給排水管の故障

2.売主が、買主に対し負う前項の契約不適合責任の内容は、修補にかぎるものとし、買主は、売主に対し、前項の契約不適合について、修補の請求以外に、本契約の無効の主張、本契約の解除、売買代金の減額請求および損害賠償の請求をすることはできません。

3.買主は、売主に対し、本物件について第1項の契約不適合を発見したとき、すみやかに通知して、修補に急を要する場合を除いて立会う機会を与えなければなりません。

4.売主は、買主に対し、本契約締結時に第1項の契約不適合を知らなくても、本条の責任を負いますが、買主が本契約締結時に第1項の契約不適合を知っていたときは、売主は本条の責任を負いません。

(設備の引渡し)
1.売主は、買主に対し、別紙「付帯設備表」中「設備の有無」欄に「有」とした各設備を引渡します。
2.売主は、買主に対し、設備について契約不適合責任を負いません。

以上、公益社団法人全日本不動産協会の区分所有建物(マンション)売買契約書から一部抜粋

不動産売買契約の実務においては、旧民法の『瑕疵担保責任』でも、上記のように「売主は引き渡しから3ケ月以内の瑕疵担保責任の負担を負う」と約定する事が一般的でした。これは新民法の『契約不適合責任』での売買契約においても一般的として継承されております。

売買場面での個別具体的対応

売買現場では、この契約不適合責任の免責について、売主と買主とが不動産売買契約時に交わす書面(重要事項証明書と売買契約書)に免責内容と容認事項を特約して対応しています。

特に気になる箇所については全て物件現状を容認事項として書きだし、引き渡す目的物が種類、品質又は数量に関して契約内容に適合しないものがないように適合させる必要があります。

そのために、これら書面締結と共に、細かい部分については、後の【契約不適合責任免責で売買するメリット・デメリット】で解説する『物件状況等報告書(告知書)』と『付帯設備表』を売主が作成し買主に手交して運用しています。

心理的瑕疵・環境的瑕疵は販売開始前から必ず告知すべし!

売買対象物件に自殺・他殺・事故死・孤独死などがあったことは心理的瑕疵と言い、環境的瑕疵近くに墓地や嫌悪・迷惑施設が立地していること、近隣に指定暴力団構成員等が居住していることは環境的瑕疵と言います。

心理的瑕疵や環境的瑕疵は、新民法でも契約解除や損害賠償の事由になるので、売買契約書にしっかり明記する必要があります。
更に心理的瑕疵や環境的瑕疵に関しては、告知書に記載する対応も必要です。

なお、心理的瑕疵・環境的瑕疵も、売主が知っていて告げなかった場合には、免責条項を設けても免責できません。

この心理的瑕疵や環境的瑕疵は、どのような事が告知すべきかわからない方や、そもそも売買に関し重大事と言えると知らなかった人など様々です。
ただ、これらの心理的瑕疵・環境的瑕疵は、購入者からすれば物件内覧時から知り得たい情報となり、契約不適合責任云々前に先にわかっていればそもそもの購入判断に大きな影響を及ぼすこととなります。

ゆえに売主様は、もしこれらの事項が有るようであれば、不動産査定時や査定額、販売方法にも影響が出ますので、売却を任せようとする不動産会社の担当者に相談しておいたほうが良いでしょう。

不動産会社では販売活動するにあたり、『告知事項あり』として対応しています。

宅地建物取引業者(宅建業者)の、契約不適合責任免責への対応・立場

しかしこの、『物件状況等報告書』と『付帯設備表』の作成に関しては旧民法下の瑕疵担保責任と同様、売主と買主の署名押印はするものの宅建業者は契約当事者としての署名押印をしていません。

その理由は、あくまで契約不適合責任の免責は、売主と買主との任意規定なので、宅建業者はあくまで契約不適合責任とその免責については売買契約時説明し、売主買主に同意を求めるものの、個別具体的には売主から買主へ手交する『物件状況等報告書』と『付帯設備表』で告知し、宅建業者が契約当事者として関知しない所で取り決めるものと思っているからです。

ゆえに、売買完了後にこの契約不適合責任とその免責についてトラブルが有ったとしても宅建業者は、「我関せず」という立場を執っているのです。

中古住宅の売買における契約不適合責任とその免責は、コロナ禍で混乱している2020年4月の改正施行となったことからまだまだ宅建業者の理解度も低いようです。例えば大手と言われる宅建業者でも未だに混乱しているようなのです。
ゆえにトラブルも多発しています。

一例:中古マンションにおけるエアコンの隠蔽配管に関するトラブル【契約不適合責任免責の可否】

中古マンション売買の場面では、よく室内にある既存エアコンを設置したまま引き渡すことが売主買主で合意されています。このエアコンの動作について売主は保証していない場合が多く、壊れていても買主は何も言えない事になります。
ただここで問題がよく起こることが有るのです。
それは、既存エアコンの隠蔽配管問題です。
隠蔽配管とは、エアコンと室外機をつなぐ配管を壁や天井に埋め込み、見えなく設置した配管のことで、エアコンが設置しづらい場所や、ベランダがない部屋などにも取り付けられるので、利用している場合がありますが、しかし、マンション売買時にはよくエアコンの新機種への付け替え工事に時間や手間がかかる可能性が高く、さらに料金の面でも高額になってしまう可能性があるなど問題になる場合が有ります。

実は不動産会社の多くはこの隠蔽配管に造詣が無く、売買後にエアコンの新機種への付け替え工事に時間や手間がかかる事を教えていない業者や売主が多いのです。そんなことを教えてもらっていなかった買主が売主や不動産会社との間でトラブルとなるケースが有るので注意が必要なのです。

ゆえに、不動産売買を任せる不動産業者は、契約不適合責任とその免責についての基礎知識と売買実績の豊富な業者を選びましょう、さすればこんなトラブルも未然に防いでくれるでしょう。


契約不適合責任免責で売買するメリット・デメリット

個人の売主が、契約不適合責任を免責としたい部分を抜き出し免責とする特約は有効という事は確認して頂きました。
免責の特約なのですから、例えば売買対象物件について『物件状況等報告書』と『付帯設備表』の全てを、売主から買主へ引き渡し後すぐに契約不適合責任を免責とするという条項も相談し合意が有れば有効です。
ただ、売主が事前に知りながら告げられていなかった契約不適合責任の事実については、契約不適合責任を免れることはできないので、くれぐれも注意しましょう!

売主にとっての契約不適合責任免責とするメリット

契約不適合責任は売主の責任が重いため、契約不適合責任を免責とする特約はとてもメリットになります。
この場合、中古住宅の引き渡し後すぐに契約不適合責任の箇所があったとしても、原則的に売主は買主への責任を負わないことになるのですから。

ただし、もう一度確認しておきますが、売主が知りながら告げられていなかった事実については、契約不適合責任を免れることはできませんので注意しましょう。

中古物件の売買では、契約不適合責任トラブル防止のために、売主に物件の状況についての告知を求め『物件状況等報告書(売主がどのような状態の物件を売却するのかを明記し告知する書面)』と『付帯設備表(売却物件と一緒に置いていく設備や家具があるのであれば何を置いていくのかを記載する書面)』を買主に交付していますが、新民法では、旧民法以上に、土地・建物の取引時の状況について、売主が知り得る限りの情報を買主に提供しておくことが必要と言えるのです。

なお、この物件状況等報告書や付帯設備表の売主から買主への交付は義務付けられていませんが、重要な事項は告知の義務があり、記載を怠ると契約不適合責任に問われてしまう可能性がとても高くなります。ゆえに売主は可能な限り具体的に詳細を記入し交付したほうが良いのです。

売主にとっての契約不適合責任免責とするデメリット

ただ、このような『契約不適合責任を引き渡し後すぐから全て免責とする特約』は、買い手にリスクがある契約となり買いずらい不動産物件となります。
売買完了後の契約不適合責任免責とする特約は、上記参考文面のように通常3カ月間を特約します。しかし、この3カ月間を設けず売買後すぐからの免責は、買い手側からすると売買対象物件に何か契約不適合責任に該当する部分、例えば配管のつまりがあるから免責にして逃げているのだろうと思われてしまうのです。

ゆえに、もし買い手が、売買完了後の契約不適合責任を3カ月間など期間を設けず免責とする特約という物件が売却中であれば、大幅な価格交渉してくることを念頭に置いておいた方が良いでしょう。

また最近では、『契約不適合責任を引き渡し後すぐから全て免責となる特約』は、住宅ローンの返済に窮した人の売却(任意売却)に利用されている場合が多く、不動産業者間ではこの『契約不適合責任を引き渡し後すぐから全て免責となる特約』が有ると、任意売却物件と判断されています。
要は、売主の懐具合や売る背景をわかられてしまうかもという事です。
ゆえに売買条件交渉が買主主導で進む可能性が有るのです。

買主にとっての契約不適合責任免責とするメリット・デメリット

買主にとっては契約不適合責任免責とするメリットは何もありません。デメリットしかないわけです。

売主が売買前に売買対象物件の契約不適合責任に及ぶ不具合に該当する部分を全て報告し、そのことが理解したうえで購入することができれば、少々は不安も解消できるかもしれませんが、しかし、売主も事前には察知していない不具合箇所も有るかもしれないのです。
例えば物件取得後、例えばシロアリの害が見つかったとしても売主に何も言えない、損害請求できないのですから不利しかないのです。

買主としてのメリット部分を強引に探せば、売買金額を通常より大幅にダウンさせることができる可能性が有るくらいでしょうか。
場合によっては時価額より安く買える場合が有るという事です。

ゆえに売主も買主も不動産売買契約する前に、売買対象物件が不具合や問題が無いのかどうかをしっかりきちんと確認をする必要があるのです。

契約不適合責任免責とインスペクション

日本では、中古住宅の取引に際し、物件引渡し後数カ月過ぎたら契約不適合責任免責という特約付保で不動産売買契約締結する場面が主流になっています。
また、その数カ月さえも経ずして契約不適合責任免責とする物件まであります。

実は、これ、日本人以外の方々にはとても分かりづらく、理解を得る事が出来ず、たびたびトラブルの元凶となっています。

それは、欧米では中古住宅を売買するにあたり、売主がインスペクション(建物状況調査)を施すことが一般的で、ゆえに買主が中古住宅を安心して購入することができる状況が整っているからです。

『契約不適合責任免責』が理解できない諸外国の人々

近年は、外国人が日本の不動産を購入する場面も多くなっています。特にアベノミクス後のインバウンド政策によりそれが顕著となり、日本における不動産価格高騰の誘引剤のひとつになったとされています。

ただ諸外国の方々の購買が、日本の不動産価格が高くなる要因の一つであるにもかかわらず、しかし、日本の商習慣『瑕疵担保責任』を保ちながら不動産売買することが、日本が諸外国から非難される原因ともなっているのです。
ゆえに、規定を諸外国の取引ルールに合わせるということが急務で、契約不適合責任へと改定されたという経緯があります。

しかし取引当事者が日本人同士であれば大きな問題になりませんが、購入者が外国人だとやはり『契約不適合責任の免責』は理解されず認識にズレが生じ、トラブルとなってしまう可能性が高いのです。

『契約不適合責任免責』の排除が、不動産価格が高くなった要因に!

先にも解説していますが、この契約不適合責任免責は、買主にとってとても不利で、売主にとっては有利になる場合が多くあり、その状態を平等にするインスペクションは欧米では常識なのですが、しかし日本ではなかなかインスペクションは広まっておらず、契約不適合責任免責の物件が多いのです。

インスペクションは、住宅の設計・施工に詳しい建築士などの専門家が、住宅の劣化や不具合の状況について調査を行い、欠陥の有無や補修すべき箇所、その時期などを客観的に検査するものです。
新築入居時やリフォーム実施時にも検査は行われますが、注目されているのは、既存(中古)住宅の売買時に行うインスペクションなのですが、日本では取り入れられる事が少なく、まだまだ採用されていないというのが現状なのです。

実は、今、日本で不動産を高く買ってくれる購入者は日本人以外の諸外国の人なのです。
日本人と外国人を競合させることで不動産は高く売れます。
しかし、契約不適合責任を免責とすれば、諸外国人には不人気となりまかな高く有利に売れません。

過日も、マンション売却される売主様にこのインスペクションを薦めたのですが、「買主に有利になる事をなんでわざわざ費用をかけてまで売主が行わなければいけないのか?」という疑念を持たれ、取り入れていただけなかった事が有ります。(実はそういう売主様のご売却は、コーラルの場合、やんわりお断りしています。)f^^)!

契約不適合責任への理解不足な不動産業者では、売主が思わぬ損失を被る場合も有る!

実は、この契約不適合責任の免責については、不動産業者の対応も千差万別です。
多くの業者が、ほぼこの契約不適合責任とその免責について勉強していないため、その知識も理解も十分とは言えないのです。
ゆえに特約として、契約不適合責任を負わない(免責)とすることは、法的に問題はないという事で、何でもかんでもこの特約を付けておけば、安心とばかりに売主の(仲介業者の)責任逃れのために濫用されていると思うのが現状なのです。
では、この事によりどういう売却時に、どういう悪影響を受けるか見てみましょう。

①成約価格が低くなる
②なかなか成約しなくなる

これだけでも十分に売主の利益に影響しそうですが、もっと悲惨な影響が有るのです。それが、

③成約後に買い手とトラブルに成り易く、損害賠償請求される可能性が高くなる。

です。
前に、売買完了後にこの契約不適合責任とその免責についてトラブルが有ったとしても宅建業者は、「我関せず」という立場を執っていると解説しましたが、もしトラブルとなり訴訟となっても業者は何もしてくれない可能性が有るのです。
否、逃げるだけでしょう。

事実、契約不適合責任の要なる『物件状況等報告書』と『付帯設備表』は売主と買主のみ署名押印するだけで、業者は署名押印しないのですから責任ある立場を放棄しているともいえるのです。

ゆえに、この契約不適合責任についての知識と理解、これを販売活動時に有効に活用できる不動産業者に売却を依頼しないと、売主様は大きな損失を被ることとなるのです。

なおコーラルは、この点について営業マンに十分教育し、知識を習得し理解して行動していますので、ご安心ください。
またコーラルで、この点について解説動画を作成しましたので、ぜひ、見ていただければと存じます。


契約不適合責任免責にする位なら、インスペクション+瑕疵保険付保が売主様に有利に売却できる

実は、このインスペクションは、国も売主様にとってもとても有利なのです。
国土交通省は、インスペクションを既存住宅の流通促進において、既存住宅市場の拡大による経済効果、ライフステージに応じた住替え等による豊かな住生活の実現等、大きな意義があるとして考えているのです。
事実、不動産取引のプロである宅建業者が、専門家によるインスペクションの活用を促すことで、売主・買主が安心して取引ができる市場環境を整備するよう進めてもいます。

また特に東京、大阪、京都、北海道など購買意欲旺盛な外国人が買い求める場所では、少しでも高く売りたい場合にとても有効な手段になります。

それは、既存(中古)住宅の場合は、売主も買主も一般消費者であり個人であることが多いので、売買対象となる住宅の状態についてはあまり理解していません。
だから買うのに不安なのです。
そのためインスペクションにより正確な情報を詳細理解すれば、購入の意思決定や条件交渉がスムーズにできるようになり、引いては安心して取引を行うことができ、また引き渡し後のトラブルを軽減する効果も期待でき、契約不適合責任免責の場合よりも少しでも高く売れる可能性が高まるのです。

しかし売主様のご理解は、インスペクションにそれなりの費用が掛かることからなかなか得ずらいのです。

ゆえに、不動産が高く売れる可能性が有るインスペクションにもかかわらず取り入れられることはなく、結果、日本の中古住宅はなかなか流通しないという現状が起こります。


インスペクションの詳細は↓↓↓でご確認ください。
☛ ホームインスペクション(住宅診断)と瑕疵保険

なおコーラルでは、売却時仲介手数料売買金額×2%プランには、この ホームインスペクション(住宅診断)と瑕疵保険をサービスしております。
それは契約不適合責任免責の場合よりも少しでも高く売れる可能性があるからです。
不動産の売主さまは、契約不適合責任の免責を約定するよりも、インスペクション+瑕疵保険付保して買主へ引渡ししたほうが少しでも高く安全に売れますよ。

契約不適合責任免責で売りたいなら買取会社がおススメ!

不動産取引において、『契約不適合責任免責となる特約』は個人が売主、買主が不動産会社の場合でも有効です。
ゆえに、もし『契約不適合責任を、売買対象物件の引き渡し後すぐから全て免責となる特約』として売りたい場合は、不動産買取会社への売却がとても有効です。

理由は、新築大好きと言われる日本人は、欧米人と違い購入後のリスクを嫌がります。
従って、契約不適合責任免責の物件は、日本人に好まれないのです。
近年では中古物件の購入へも対応しやすいように、売却時の建物検査等スインスペクションにより瑕疵担保責任保険付保の物件も登場し始め、購入者の意識も変化し始めていますが、しかし、まだまだ個人として買うことができるは、不動産取引の実務経験がある個人か、不動産投資に関しての知識豊富なセミプロのような人しかいないのです。
ただ、買取会社の場合は全く『契約不適合責任免責となる特約』に抵抗が有りません。買取会社は買取後リノベーションして再販する事から、リノベーション工事時に建物の具合を調査し、不具合が有れば修理保全して対処してしまうからなのです。

そんな理由から、『契約不適合責任免責となる特約』を引き渡し当初から付保する売却は、買主が買取不動産会社の場合が一番有効なのです。

契約不適合責任免責の売買契約は、今後増える⁉

契約不適合責任免責の契約は今後も増えていくと思います。
それは旧民法の瑕疵担保責任よりも、さらに売主の責任を問われる要素の範囲が広くなったからです。
上記で解説してきたように、契約内容に適合しているか否かという見方をするので、不動産仲介業者も売買契約書を細かく取り決めし、調査も万全に行う必要があり、今まで以上に仲介業者の負担と責任が増すため、契約不適合責任は免責にしておこうと業者が増えると考えるからです。

しかしいくら免責にしたところで、買主が納得しなければ(騙されたと思えば)、合法であっても訴訟になり、関係者はトラブルに巻き込まれ、多大なエネルギーを浪費することになるでしょう。

それであれば最初から契約契約不適合責任を免責とせず、売主にも責任を持って頂いて正直に申告をしてもらう方向に持っていったほうが、むしろトラブル回避になるのではないかと思います。

ちなみに瑕疵担保責任のときは、買主も売主も知らなかったこと(これを瑕疵と言う)に対しての責任でしたが、契約不適合責任は買主が認識していたことでも、『契約内容に適合しない』場合は売主の責任を問われることになります。

例えば物件の不具合は認識していて、買主が自ら補修をするという認識で購入したが、実際には補修では済まず、多大な費用がかかることになったといった場合が考えられます。
売主はどんなに細かいことでも、伝えておくことが、結果、正しい買主の購入判断にもつながり、トラブル防止になるのだと思いますが、不動産仲介業者の勉強不足からの対応はそれから逃れる行動を執る可能性が有ります。

契約不適合責任の免責とは⁉ まとめ

2020年4月1日の新型コロナ禍中でが、民法が改正され「新民法」が施行されました。これにより2020年3月31日までの民法「旧民法」にあった瑕疵担保責任から契約不適合責任へと移行され内容も大きく変わりました。

契約不適合責任は、それまでの瑕疵担保責任より売主の責任が重くなったといわれています。
ただこの契約不適合責任を免責とする事はやはり有効なので、売主も買主もしっかりと契約不適合責任とその免責については理解しておく必要があります。

コロナ禍の改正という事もあり、なかなか周知徹底されていない部分も有ったり、また、改正後まだまだ日が浅いことも有り、実際にトラブルなどが出てくるのはこれからだと言われています。
特に、『契約不適合責任の免責』については、それまでの瑕疵担保特約よりも改正後のルールの方が売主に厳しい内容となっていることをしっかりと理解し、中古住宅の売買においては宅建業者に確認しながら準備しておいた方が良いでしょう。

ただ、宅建業者にもこの「契約不適合責任の免責」については造詣が浅い業者も多くいます。

もし、『契約不適合責任の免責』についてよく分からないという方は、コーラルへお問合せいただければと存じます。

この記事を書いた者
【大久保一馬】宅地建物取引士・不動産売買のプロフェッショナル・不動産コンサルタント
不動産業界歴30年。過去司法書士事務所、弁護士事務所に従事。その後多くの不動産会社の現場責任者を経験した後不動産会社を設立。現在は宅地建物取引業者(宅建業者)コーラル株式会社顧問。また一般社団法人結い円滑支援機構の事務局長を務める。