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新住所登記とは⁉違法性も含め旧住所登記とどう違うのか解説

更新日2022-02-01 (火) 00:39:39 

自己居住用の不動産を購入した場合、大半の方が購入した新しいお家に住民票を異動します。
なかにはセカンドハウスとして購入した場合など、住民票を異動しないレアなケースもありますが、ほとんどの方が新住所に住民票を移動し登記もします。
この登記を新住所登記と言いますが、実は今行われている新住所登記はその時期によって違法な場合があります。
では、違法にも係わらずなぜ行われるのか?
ここでは、「住民票を異動するタイミング」「新住所登記」「現(旧)住所登記」と違法ながら新住所登記を行う理由を解説していきます。

もくじ


新住所登記、旧住所登記について動画で解説!

コーラルではYouTube動画を利用し、新住所登記について解説しています。文章を読むのは面倒と言う方はこちらの動画を見てください。そのうえで下記解説を読んだらより深くご理解いただけると存じます。


不動産購入時のスケジュールと新住所への移転・所有権移転登記

まずは「不動産売買における購入者のスケジュール」について確認しておきましょう。
住宅ローンを利用した流れは、ほぼ以下のようになります。

①物件の内覧
②購入申込書の提出
③住宅ローン事前審査
④住宅ローン事前審査の承認
⑤不動産売買契約の締結
⑥住宅ローン本審査
⑦住宅ローン本承認
⑧金銭消費貸借契約書(金融機関とのローン契約)
⑨融資実行・残代金決済・鍵の授受・所有権移転登記
⑩新しい家に引越し

例えば不動産会社の仲介で家を買い、そこの移り住む場合、以上の流れで進められるでしょう。
この流れの中の『⑧金銭消費貸借契約書(金融機関とのローン契約)』時に、不動産会社や住宅ローンを借入する銀行からのいくつかの質問に「登記の住所はどうしますか?」というものが有ります。

これは、『⑨融資実行・残代金決済・鍵の授受・所有権移転登記』の中の所有権移転登記を行う場合、今住んでいる家の住所で登記をするか?新しく購入した家の住所で登記をするか?という意味の質問なのですが、多くの方は家を買い所有権移転登記など初めてなのですから、まだ引越しが終わっていないし住民票も移転していないのでどちらにすればいいか迷う事になるのが普通なのです。

特に「新住所登記」の場合、不安になってしまうのでしょう。

新住所登記、 現(旧)住所登記とは?

購入したマイホーム(新住所)へ引越はまだ終わっていないけど、市町村役場や区役所へ新住所の住所移動手続きを行い、所有権移転や抵当権設定などの登記まで行う事を『新住所登記』と言い、現実に新住所へ引っ越ししていないので、購入時の住所(現住所)で所有権移転や抵当権設定などの登記を行う事を『旧住所登記』と言います。

新住所登記=新しい引越先の住所で登記すること
現(旧)住所登記=今住んでいる住所で登記すること


新住所登記、 現(旧)住所登記と、どの場所のことなの?

では、全部事項証明書ではどの場所の事を言っているのか見本が有りますからご覧ください。
赤丸で囲んでいる場所の事です。

新住所登記は法律違反(違法)⁉

実は、新住所登記はある時期に行うと法律違反(違法)になります。

家を買ったら住所移転する方は多いでしょう。
住所移転する場合、本来は、引越しをする前に引越し前の市町村に「転出届」を提出し、新しいお家に引越しをしてから14日以内に新しい住所の市町村に「転入届」を提出しなければなりません
同一の市町村で引越しをする場合は、引越し後14日以内に「転居届」を市町村に提出しなければなりません。

【なりません】と表現しましたが、住民票の異動は「住民基本台帳法」という法律で定められた法律上の義務なのです。

この法律に照らし合わせてみると、住民票の異動のタイミングは上記フローの「⑩新しい家に引越し」後、14日以内に行う(届け出る)こととなります。

ゆえに、新しい家(新住所)に、まだ引越ししていないのに行う新住所登記は法律違反になります。

登記と金融機関、司法書士

さてここからちょっとややっこしい話になってきます。

不動産売買に絡み住所が変わるときに、住宅ローンを融資する金融機関もしくは所有権移転登記を担当する司法書士から「新住所登記ですか?」「現住所登記ですか?」と聞かれることが多々あります。

もう一度確認しておきますが。
「現住所登記」とは・・・
引っ越し前の住所で上記⑨のお融資実行・残代金決済・鍵の授受・所有権移転登記を行うことをいいます。

「新住所登記」とは・・・
所有権移転登記する前に新しい住所に住民票を異動してしまい、上記⑨のお融資実行・残代金決済・鍵の授受・所有権移転登記を行うことをいいます。

例えば、
引っ越し前の住所(現住所)が「東京都江東区亀戸5-5-11」
引っ越し後の住所(新住所)が「東京都港区麻布1-2-3」
というAさんの場合、

(ア)現住所登記を行うと、登記簿に記載される所有者名義人は
「東京都江東区亀戸5-5-11」に住んでいるAさん、と表示されます

(イ)新住所登記を行うと、登記簿に記載される所有者名義人は
「東京都港区麻布1-2-3」に住んでいるAさん、と表示されます

(ア)の現住所登記を行うと、登記簿記載の所有者住所(亀戸)と住民票の住所(麻布)に齟齬が生じてきてしまいますので、住所変更登記を行う必要がでてきます。
直ぐに住所変更登記を行う必要はありませんが、住宅ローンの借り換えや、不動産を売却する際には、必ず住所変更登記を行わなければなりません。

新住所登記のメリット・デメリット

一方、上記(イ)の新住所登記を行うと、以下のようなメリットがあります。

新住所登記のメリット

①登記簿記載の所有者住所(麻布)と住民票の住所(麻布)が一致しますので、将来住所変更登記を行う必要がありません。
②新住所登記の場合は「住宅用家屋証明書(専用住宅家屋証明とも言う)」という所有権移転登記の登録免許税を軽減できる書類の取得が容易にできます。

①は容易に理解できると思います。
解説が必要なのは②でしょう。

登録免許税の軽減措置に必要な手続きが削減できる

不動産を購入し、法務局で登記するときは登録免許税を支払う必要があります。
ただ購入した物件が一定の要件をクリアし、市町村が発行する「住宅用家屋証明書」の発行を受けることのできる居住用物件であれば、登録免許税の軽減措置を受けることが出来るのです。

ただ、市区町村は、原則、登記上の所有者と実際に住んでいる人が同一人物であることが確認できる登記事項証明書など登記記録がないと住宅用家屋証明書を発行しません。
つまり、登記上の住所が旧住所である場合に家屋証明書を取得するには、新住所への登記変更する必要があるということです。
ゆえに新住所登記をしていれば、速やかに住宅用家屋証明書を発行してもらえるというメリットが有ります。

では、登録免許税の軽減処置は新住所登記していないと受けれないかと言うとそうではありません!
そこはそこ、新住所登記していなくてもしっかり保全処置が有るので安心してください。

以下でさいたま市の例(☛さいたま市HP参照)で見てみましょう

インターネット登記情報提供サービスにより取得した照会番号及び発行年月日(「照会番号等」という。)が記載された書類の提出等がされ、市が当該照会番号等により電気通信回線による登記情報の提供に関する法律に規定する登記情報を確認できるときは、当該照会番号等が記載された書類を提出等することにより登記事項証明書の提出に代えることができます。

●当該家屋の売買契約書、売渡証書(競落の場合は、代金納付期限通知書)等[写・提示]
●住民票[写・提示]
 ただし、当該家屋に住所の異動に関する手続を済ませていないときは次の(1)から(3)の全ての書類

(1).現在の住民票【写・提出】 ※マイナンバー(個人番号)未記載のものに限る。
(2).入居(予定)年月日等を記載した当該申請者の申立書【原本・提出】
(3).申立に係る書類等【写(一部原本のみ)・提出】

●当該家屋に未入居の場合
 申立書(原本)
 現住家屋の処分方法を証する書類(注)
 (注)現住家屋の処分方法を証する書類は次のとおりです。
 1.現住居を売却予定→売買契約(依頼)書(写し可)
 2.現住居を賃貸予定→賃貸借契約(依頼)書(写し可)
 3.現住居が借家→賃貸借契約書又は家主の証明書(写し可)
 4.現住家屋に申請者の親族が住む場合等→当該親族の申立書等(原本)

なお、個別具体的な保全処置は各不動産会社の担当者や司法書士に確認してください。

新住所登記のデメリット

さてここで問題です。

新住所登記は、引っ越しする前に住民票を新しい住所に移動してしまいますが、住民基本台帳法では「住民票の異動は引っ越し後14日以内に行う事」とされています。

「引っ越す前に住民票を異動してもよい」とは定められていませんので、新住所登記を行うことは本来不可能なはずです。引っ越す前に住民票を異動することは、住民基本台帳法といいう法律を破っていることになります。

ゆえに自治体によっては、住民票の異動に際して証明を求めるところもあります。

しかし、違法という認識もなく新住所登記を行っている人も多く、金融機関や司法書士も「新住所登記ですか?」「現住所登記ですか?」と聞いてくるくらいですから、現状では新住所登記は違法であるにも拘わらず不動産売買の現場では当たり前のようにまかり通ってるのです。

新住所登記の為に住民票移動するなら・・・

ちなみに市町村で住民票移動の手続きを行う際は、引っ越しが済んでいないと住民票移動の届出を受け付けてくれません。「引っ越しが済んでから出直しておいで」と言われてしまいますので、新住所登記を行う場合は、引越し前にも拘わらず「引越しは済んでいます」と虚偽の申告をしなくてはなりません。

住民基本台帳法では、引越し後14日以内に届出を行わなかった場合や、虚偽の届出を行った場合は5万円以下の過料に処せられるという罰則があります。
恐らく、今後も不動産売買の現場では「引越しました」と虚偽の届を出して、新住所登記を行うことが横行されていくと思います。
仲介業者の役割としては、本来あるべき「現住所登記」の推奨、もし顧客から「新住所登記」の希望があれば、違法であり罰則が生じる可能性を理解してもらえるように説明することが重要になってくると思います。

以上のように、住民票移動の際に虚偽の申告をして新住所登記を行うことがまかり通っておりますが、虚偽の申告はやはりちょっと後ろめたいものです。

いち営業マンの考え

住民票の具体的引っ越し前の移動は違法な事から、住民票の移転登記前の異動推奨は、悪徳不動産屋の目安とさえ言われ始めています。
そこで違法は出来ない私、以下のような解決策(案)を考えました。
住民基本台帳法で定められている届出の期間「引っ越し後14日以内」を、売買契約書の提出や、いつまでに引っ越すという確約書の提出を条件に例外的に「引っ越し前1カ月から引っ越し後14日以内」と法律が変われば、万事うまく行きます。
行政のサービスや住民税、選挙権など諸々課題があると思いますので、一介の営業マンの考えたことなど実現することはないと思いますが、将来実現すればいいなと考えております。



更に新住所登記を行う事で被るデメリットは、住宅ローン控除を受けたい場合に最も考えられます。
以下で、その事を解説しましょう。

入居までに耐震基準適合証明書を取得し住宅ローン控除(住宅ローン減税)の特例利用したいなら、新住所登記はするな!

新住所登記で注意したいのが、下記の中古物件の住宅ローン控除の適用を耐震基準適合証明書で行いたい場合です。
この場合、住宅ローン控除の対象とするには耐震補強工事を行い、耐震基準適合証明書が必要なケースがあります。

【耐震補強工事を行い、耐震基準適合証明書が必要なケース】
・木造住宅で築年数が20年以上経過している
・マンションなどで築年数が25年以上経過している

耐震基準適合証明書は入居開始までに取得しなければ、住宅ローン控除の対象となりません。
新住所への変更は入居した後にするものなので、先に新住所に変更すると入居扱いとなり、この特例を利用したい場合は、入居前に住民票を異動すると特例が使えなくなります。ゆえに実際に入居するまで住民票の移転はしないようにしなければならず、新住所登記はしてはいけないとなります。

不動産取得税と新住所登記

不動産取得税は、不動産(土地・家屋)を取得したときにかかる税金です。
この不動産取得税は、住宅や住宅用土地を取得したときには適用要件を満たしていれば減税(軽減)される場合があります。

不動産取得税の減税は、新住所登記の場合には自動的に減税措置が適用されますが、旧住所登記の場合には、一旦満額の納税通知書が自治体から送付されてしまうため、軽減措置申請を行う事で減額されます。
尚、新住所登記の場合であっても、自動的に減税措置が適用されない自治あるみたいなので、不明な場合には自治体の不動産取得税の係に聞いて確認してください。

自治体に申告する場合は、納税通知書、売買契約書の写し、印鑑、土地・建物全部事項証明書(登記簿謄本(旧住所で可)、住民票の写し(新住所)など必要書類を持参して、各都道府県税事務所窓口で職員の指示に従って申告手続きをしましょう。
この手続きはとても簡単です。

実は、ある地方都市の取引で有ったことですが、経験不足な司法書士が「新住所登記でないと減税制度は適用されません」とアドバイスしていました。それは間違いで旧住所登記であっても減税は適用されます。
ただ、新住所登記の時よりも申告が必要になったり、申告時に用意する書類が有ったりで少し手続きが複雑になるだけです。
不動産会社のアドバイスでも間違いが散見されていますので、ぜひ、適用させたい場合は(大きな減税額になるので適用させるべきですが)各都道府県税事務所窓口に確認しましょう。
ただ、不動産取得税は後から修正申告ができますから慌てず手続きすればいいのです。

まとめ

今回は、新住所登記と旧住所登記、不動産購入時の登記はどうしたらいい⁉住民票異動の時期について考えてみました。
住宅ローンを貸す金融機関の思惑、また住所移転登記を代理する司法書士の立場、住宅ローン控除と減税、また、もしかすると数年後などに売る事もある場合のケースなどもあるでしょう。
ここで言いたいことは、これからマイホーム購入したい人は、上記各方面の思惑と現実的なメリット、デメリットを考えながら少しでも無駄なお金を使わないよう検討し登記しましょうという事です。