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再建築不可物件とは? 売却は可能か、注意すべき点は⁉

更新日2021-06-13 (日) 10:49:16 公開日2021年6月12日

その昔、日本テレビ系の人気バラエティ番組「幸せ!ボンビーガール」で、人気タレントの森泉さんが再建築不可物件を買ってリノベーションをする企画が放映されていました。

再建築不可物件とは、その名の通り「再び建築できない物件」「土地上に建物を再度建て替えることができない不動産」を言い、一説には売却が難しいと言います。

ここでは、この再建築不可物件とはどのような物なのか、売却は可能か、また住まうにあたり注意すべき点とは⁉などについて解説します。

◎ここがポイント!
再建築不可物件の多くは、昭和55年の建築基準法改正前では適格、改正後は不適格扱いになった建物が建っている土地(敷地)で、建物をそのままリフォームなどを施し住むのは違法ではありません。
また第三者への売却も可能ですが、周辺相場より大幅に減額した金額でしか売れないでしょう。
なお、売却先によっては再建築不可物件を再建築可能物件へと変えることはできます。


★もくじ★【再建築不可物件とは?、売却は可能か、また注意すべき点とは⁉】


そもそも再建築不可物件とは、どんな物件?

日本では、建物を建てるにあたって取り決めた建物建築を取り締まる法律『建築基準法』があり、この法律にどういう場合が建物が建てられるかが決められています。

この建築基準法で審査した結果、建物建築許可がでない場合があり、再建築不可物件の多くは、この建築基準法の改正が原因で生じてきたという歴史が有ります。

建築基準法は、既に建物(古屋)が建っている場合でも適用運用されていて、その結果、建物が既に建っていても再度建築できない土地・不動産であるとき、再建築不可物件として取り扱われているのです。

再建築が不可になる理由は、この建築基準法にて決められた要件をクリアできないからなので、多くの再建築不可物件の場合、土地と接面している道路が深く関わっています。

具体的には、以下のような道路について建築基準法上の要件、建築するあたっての取り決めがあり、これを満たしていない物件は既に建物が建っていたとしても接道義務違反となり再建築不可となります。


① 建物を建てようとする土地の間口が、道路に2m以上接していること
② 接している道路の幅員(道幅)が4m以上で、建築基準法で定義されている「道路」であること

接道義務

この建築基準法の要件(建築基準法第43条)を「接道義務」と言い、この接道義務を満たしていない土地には再建築許可が出されません。
故に、建物は建てられず、自ずと再建築不可物件となります。

◎ここがポイント
再建築不可物件とは、建築基準法の建築要件に諮り、既存の建物を取り壊すと再度建物を建てる事が出来ない不動産(土地)を言う。


昔は建物建築できたのに、なんで再建築不可になるの⁉

戦後焼け野原の日本では、空襲で家が焼失し、家がとても足りない時代が有りました。
戦後間もない混沌とした時代には、空き地が有れば次々と住宅が建てられ、まるで無造作に建てられたように家が立ち並び、その結果、火災に弱い安全性が欠如した街並みが形成されてしまいます。

このような無計画な家の建築における災害に弱い市街地化を防ぐため、昭和25年に建築基準法が制定されます。

この建築基準法の内容はとても緩い基準で、その結果、多くの災害、特に火災による家消失や人命が損なわれます。
火災が起こっても、道路の狭さから、また火災現場まで消防車が侵入できず、消防活動に支障をきたしたのです。
その結果、昭和55年に建物建築する場合の道路要件が改正され厳しくされました。

この改正により、それまでに建てられていた建物も、そのまま利用は許されつつも、再建築する場合は改訂された内容(要件)をクリアしなければ建築できない事となり、このことがこれら再建築不可物件を生んでしまう要因となってしまったのです。

因みに、再建築不可物件のうち建築基準法改正前から建っていて、その後法改正により建てられなくなった建物、竣工時は適法に建てられてい建物で、法改正等によって、現在の法律に適合しなくなってしまった建築物のことを、‷既存不適格建築物‷と呼び、改正後に法律違反により建てられた建物とを区別しています。

現在では、この既存不適格建築物の再建築不可物件を、相続する際に利用価値の低さから、また税金負担の面倒さから売却を考える方が多くなってきています。

◎ここがポイント
再建築不可物件の多くは、昭和55年の建築基準法改正前では適格、改正後は不適格扱いになった建物が建っている土地で、建物をそのままリフォームなどを施し住むのは違法ではない。
この場合の建物を既存不適格建築物と言って、違法な建築物と一線を化している。


日本は広い、道路要件が適用されない場所もある

先ごろ、私は、京都市の一戸建てを売却仲介しましたが、この京都府など歴史ある都市では、狭い路地も多く残っています。

これら歴史ある都市の場合や、田園風景が残る田舎など都市計画区域が定められていない区域(都市計画区域外)には、そもそも接道義務がなかったり、自治体独自のルールが適用されるケースもあったり、また道路ではなく近隣公園などと接していて開放感が有る場合、建物再建築が許可される場所も有ります。

ゆえに、建築許可が出るかどうかについては、自治体毎の取り決めもあるので、再建築不可物件に該当するか否かの最終的な判断は、自治体の担当部署で確認しましょう。

再建築不可物件の売却は難しい、その理由は?

再建築不可物件の売却は、一般的な再建築が可能な物件と比べると格段に難しい現実があります。
理由は、不動産を買い求める人の多くが、再建築できる物件を基本条件として考えているからです。

再建築できない物件など、利用価値が極端に少ない、または無いと考えられてしまうのです。

また、もし買いたいと思っても、まず金融機関の融資は難しく、現金購入しか資金用立てが出来ないのです。
今、多くの人が、不動産購入時にローンを利用し買われます。そのローンが利用できないことは大きなリスクとなり、大きなデメリットです。

また、再建築不可物件の殆どが1980年(昭和55年)以前建築の建物で、木造の場合、既に建物耐用年数を超えとても古いにもかかわらず建て替えができないため、その古い建物をリフォームして住む以外、解体して更地にするしか方法がないのです。
これは鉄筋コンクリート造などの堅固な建物でも、同様なのです。

また、更地の場合でも、建物を建築ができないため、更地で考えられる用途以外の利用しかなく、購入したとしてもその後の転売も難しくなってしまいます。
このように、再建築不可物件は購入メリットよりデメリットしかなく、売却が難しくしてしまう要因となっています。

ただ、だからと言って絶対に売れないかと言うと、そうではありません。
買ってくれる人は限定される場合も有りますが、近隣相場よりも大幅な価格ダウンを目論めば売れる場合も有るのです。

再建築不可物件の価格

再建築不可物件でも必ず価格が有ります。

固定資産税上の価格

まずは、土地には一部例外を除き必ず固定資産税が掛かります。また日本の国土上に建物が建っている以上、建物にも固定資産税は必ずかかり、土地、建物とも固定資産税評価額が設定されています。

相続税・贈与税上の価格

日本の国土上に再建築不可物件を所有している場合でも、相続時に必ず相続税計算をする必要が出てきます。
この場合の土地は、原則として宅地、田、畑、山林などの地目ごとに評価し、土地の評価方法には、路線価方式と倍率方式があり、建物の評価方法は固定資産税評価額で割り出します。

売る場合の価格

再建築不可物件を親族間でも、また第三者へ売る場合でも無料(タダ)であげる場合も有るかもしれませんが(この場合は、貰った人にみなし贈与税がかかる場合が有ります)、多くの場合、近隣相場で価格を出すことになります。
ただ、再建築不可物件の価格相場は、多くの場合、再建築可能な不動産相場の半額以下、時には相場の2割、3割も当たり前な場合も有ります。
再建築不可物件を売る時の相場を知りたい時は、不動産鑑定士に価格を出してもらい、相場価格の参考にしてもいいかもしれません。

再建築不可物件・5つの売却方法

もう一度確認しておきますが、再建築不可物件は法で売却を制限されてはいません。売ろうと思えば売ることは可能なのです。
ただ、買ってくれる人は極端に少なく、不動産会社に査定依頼しても査定価格は極端に低くなる場合が多く、また売れても二束三文にしかならない場合も有り、期待した売却価格では売れないでしょう。

でも売れないことは無いので、ここでは、再建築不可物件を売却する場合の売却方法を5つご紹介します。

隣地所有者に売る

日本には、「隣の土地は借金してでも買え」といった昔の言葉があるよう、隣接する隣地オーナーが買ってくれる場合があります。
まずは、売却しようと思ったら、隣地所有者にご挨拶しましょう。
そのとき、個人間売買の話が出る可能性が有ります。
実は、再建築不可物件を売却する場合に限らず、隣接する隣地オーナーが買ってくれる場合が最も高く購入してくれるケースが多いのです。

隣地を利用し建築可能にする

隣地の一部分を購入すること、または隣地を賃貸借することで、再建築許可物件となる可能性があります。
再建築不可物件でも、接道義務を満たせば再建築可能となる事から、隣地を利用することで接道義務を満たせばかなり売却しやすくなります。

不動産買取業者に売る

古い再建築不可物件を買う人はなかなかいません。それは、日本人が新築好きだったり、買う時にローンを利用する人多いからでもあります。
ただ、そんな古い再建築不可物件でも買う者はいます。不動産の買取業者です。
不動産買取業者では、古い再建築不可物件をただ同然で買い、下記に紹介する方法で第三者へ売却するか、もしくはリフォームして賃貸するのです。

不動産投資として考える人へ売る

上記でも解説しましたが、不動産業者の中には再建築不可物件を不動産投資用として購入する者がいます。
居住用の不動産は、取引事例比較法で価格が決まるのが一般的ですが、不動産投資で不動産を買う場合は、投資利回りで不動産価格が決まるケースが多く、期待できる賃料収入などの収益をもとに算定する「収益還元価格」が使われるので、居住用で考える人より少々高く売れる場合が有ります。

リフォーム・リノベーションして売る

よく、再建築不可な一戸建てをリノベーションして販売している不動産会社が有ります。
「えっ、そんなの知らないわ!」と言う人は多いと思いますが、その実、多くの人がリノベーション済再建築不可物件の広告を目にしているのです。
その広告、よく電柱などに貼ってあります。

電柱に貼っている「家・売ります!・格安」などの広告を見たことが有ると思うのです。
そう、これこそ紛れもなくリノベーション済再建築不可物件の広告なのです。

このようにリノベーションやリフォームによって建物再生すれば、再建築不可物件でも売りやすくなります。
ただ、近隣相場より格安な価格にはなりますが。

再建築不可物件に住まうにあたっての注意点

地震

再建築不可物件に住まうにあたっての注意点は、もし大規模地震が来て建物が倒壊しても、また建物が老朽化や火災などで焼失して無くなってしまったとしても、新たに建築することが認められていない位です。
ただ、このことが売買に大きな影響を及ぼしているのも事実ですが。

ただ、先にも解説しましたが、再建築不可物件は「再建築」ができないだけで、既存建物については、接道義務違反だからと言って直ちに罰則が科されるわけでもなく、建築基準法に基づく「建築確認申請」が不要なレベルの改修、リフォーム、リノベーションも自由に行えます。

建築確認申請が不要なレベルとは、既存建物が2階建なのを3階建に増築したり、主要構造部を大きく変更したり変更したりする工事をしない工事レベルで、建築確認申請が必要な、新築や大規模改造は基本的に許されないのです。
ゆえに、基本、建物をリノベーションしたりリフォームしたりするときに大規模改修にさえ注意すれば、住まうにあたっての注意べき点は無いと言えるでしょう。

ただ、日本は地震国家と言われるくらい、また台風も多く災害が多い土地です。
それゆえ、災害で建物倒壊しても再建築が出来ない再建築不可物件は災害に弱い不動産となり、売買には不向きなのです。

まとめ

ここでは再建築不可物件について、その生まれた背景と、売却できるのか、また注意すべき点を解説しました。

再建築不可物件の多くは、建築基準法改正により生まれた既存不適格建築物が建っている土地が多いですが、しかし、再建築出来ないと、売却は可能ですがその土地の価値は二束三文になりかねないのです。

二束三文で売りたくない場合は、売却するときによく考え、建物をリノベーションして売ったり、売る先までもよく検討すべきなのです。

ただ、再建築不可物件ゆえに売れないと言うことは無く、売りたい時は、まずは不動産一括査定サイトで売却査定や買取査定をして、その結果、査定額が出てきた不動産会社に売却相談されることをおすすめします。



井上朝陽

解説者
井上朝陽 宅地建物取引士・結い円滑支援アドバイザー・住宅ローンアドバイザー
専修大学商学部卒業後コーラル株式会社入社。渋谷青山店勤務後本店マーケティング&セールス部チームへ配属。また不動産売買はすでに300件以上を経験。現在、難しい不動産売買の専門チーム所属で多くの悩める人の売買解決に奔走中です。