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ローン特約(融資特約)と不動産売買契約

更新日2021-08-06 (金) 23:40:53 

現在、不動産購入する多くの方が住宅ローンを利用してマイホームを購入されています。
住宅ローンの金利が1%を下回る現在においては、住宅ローン控除利用も考えれば、利用しないと言う選択肢は無いのかもしれません。
しかし、住宅ローンが必ず組めるのであれば何も問題は無いのですが、そうではない現実があり、もし住宅ローンが組めない時には売買契約の進行上では問題となります。

そこで、ここではこの問題を解決するための「住宅ローン特約」についての解説します。



★目 次★【ローン特約(融資特約)と不動産売買契約】


ローン特約(融資特約)とは?

ローン特約(融資特約)とは、買主が融資の全部または一部について承認が得られなかった場合、買主が一方的に不利な状況に陥らないようにするため、期限内であればその売買契約を無条件で白紙解除したり、契約を白紙に戻すことができることを売主買主間で約定する事を言います。

ローン特約の意味

不動産売買では、期日までに代金を支払う約定をして契約を交わします。
しかし、その代金が支払えない場合は買主は売主様に対して、売買代金の10~20%程の違約金を支払うという契約内容にします。
売買代金全額を持ち合わせているのであれば、全く問題は無いかもしれませんが、ただ多くの方が高額の売買代金全額を現金で用意できる人はなかなかいないものです。

そこで不動産売買において、購入者が住宅ローンを利用して購入する場合、売買契約前に事前審査、売買契約後に本審査を申込みます。

これら審査がスムースに進めば特に問題はありませんが、残念ながら融資否決されたり、希望の借入額を減額されたりすることがあります。
もし否決された場合、代金全額を支払う約束はしたけれど支払えないので売主にも不利益になる事が有ります。

そのため、住宅ローンを利用する場合は、「ローン特約」、「融資利用の特約」と呼ばれる解約条項を付して契約するのが一般的になります。

コーラルでは「公益社団法人全日本不動産協会(略して全日)」に加盟しておりますので、売買契約書は全日が作成した標準ひな形の書類を使っています。

では、具体的にはどのような文言が契約書に記載されているか見ていきましょう。

住宅ローン特約条項と決める項目

第○○条 : 融資利用の特約(ローン条項)
1.買主は、売買代金に関して、表記融資金を利用するとき、本契約締結後すみやかにその融資の申込み手続をします。

2.表記融資承認取得期日までに、前項の融資の全部または一部の金額につき承認が得られないとき、または否認されたとき、買主は、売主に対し、表記契約解除期日までであれば、本契約を解除することができます。

3.前項により本契約が解除されたとき、売主は、買主に対し、受領済みの金員を無利息にてすみやかに返還します。

4.買主が第1項の規定による融資の申込み手続を行わず、または故意に融資の承認を妨げた場合は、第2項の規定による解除はできません。

という感じです。

約定する項目は、通常、以下の項目となります。

〇融資利用予定の金融機関
〇融資利用金額
〇融資承認期限日
〇契約解除期限日
〇予定の金利条件
〇融資特約を使う場合の解約方法の確認方法

などを売買契約書に明記して契約を行い、融資審査が通らなかった場合には、約定した期限内であれば契約の解除が可能となるのです。

噛み砕いて説明しますと、
買主さんは売買契約締結後に、契約書に記載されている融資利用額(ローン金額)の審査を速やかに行ってね。
審査した結果、融資希望金額が借りれなかった場合は、約定期日までであれば売買契約を白紙解除できますよ。
その際は、支払い済みの手付金は戻ってきますよ。
でも、あなた(買主)の都合でローンが否認されたり、すみやかにローンの申し込みを行わないで、約定期日までにローンの承認が下りなかった場合は白紙解除はできませんよ。

という内容になります。

コーラルが加盟している「全日」以外にも「公益財団法人全国宅地建物取引業協会(略して全宅)」や大手不動産会社が加盟している「一般社団法人不動産流通経営協会(略してFRK)」など、不動産会社が加盟している協会がありますが、いずれの協会が作成している売買契約書にも同様な文言が記載されています。

ローン特約2つのケース

ローン特約には2つのケースが有ります。
ひとつは、承認が下りるまでに特約期間が過ぎた場合には、そのまま自動的に契約が白紙になる場合と、もうひとつは、承認されない事を売主に通知しないと契約が白紙にならない場合です。

前者なら自動で契約解除になるので特に大きな心配はありません。しかし後者の場合、審査結果を売主に通知しないと白紙解除にならないので、手付解除か最悪違約になります。
多くの不動産売買では、承認されない事を売主に通知しないと契約が白紙にならない場合での特約を行うことが多いので、特約の内容の確認は担しっかり把握しておいた方が良いです。

住宅ローンの事前審査と本審査

そもそも、売買契約締結の前に「住宅ローンの事前審査」を行い、事前審査の承認を得てから売買契約を締結するのが一般的な流れとなりますが、事前審査の承認を得ているのに売買契約締結後の「住宅ローンの本申込」で否決されるケースはあるのでしょうか?

答えは「あります」です。

【住宅ローン事前審査が承認され、本審査で否決されちゃった】ケース

1.重要事項説明書に違令な事項(建蔽率オーバー、容積率オーバー)などの記載がある、再建築できないなどの記載がある。等で担保評価がでずに希望金額が借りられない。


2.持病や過去の病歴により団体信用生命保険に加入ができない。


3.買主がローンを組んで車を買ってしまった、クレジットで高額な商品を購入してしまった、転職してしまった。


という場合は、事前審査の承認が得られていても、本審査で否決や減額されてしまう可能性があります。

1の担保評価につきましては、不動産仲介業者が事前審査の段階で「ちょっと難のなる物件なんだけど」と銀行に相談していれば、それを踏まえての事前審査の回答が得られます。

2の団体信用生命保険も、不動産仲介業者が事前審査の段階でちゃんと買主さんにヒアリングして、心配な内容であれば先に団体信用生命保険加入の審査を行うことができます。

よって、1・2は仲介業者がしっかりケアしておけば、事前に回避できる内容ですが、3の個人信用情報に関する部分は買主さんの方で「これから何千万円も借りる大事な審査がある」と十分に自覚していないといけません。
事前審査が承認されたからと安心して、車のローンを組んでしまったり、安易に給料が増える良い条件の会社からヘッドハンティングされたので転職した、といった場合は銀行も審査し直しとなり、本申し込みで承認がひっくり返る可能性が大いにあります。

3のケースでローンが否決されてしまった場合は、「故意に融資の承認を妨げた場合」とみなされて、融資利用の特約による白紙解除ができなくなり、手付放棄による解除もしくは違約による解除となり買主さんにペナルティが発生しますので十分にご注意ください。

融資審査を疎かに考えた行いは厳禁です!

実は、コーラルは毎月数十件の不動産売買契約を行っており、購入者の住宅ローン審査も多くのケースで介在しておりますが、過去には融資審査を疎かに考えた行いの結果大きなトラブルになりそうなことが有ったので、ここで報告しておきましょう。

そのトラブルになりそうな事とは、買主が金融機関に対し住宅ローンの申込をしなかったのに、ローン特約を行使し売買契約を白紙解除しようとした行為です。
このケースは、ローン特約による白紙解除は認められなかったのですが。

ローン特約付き不動産売買契約では、ローンの承認を受けるために申込をして、手続きが遅れることのないようにしなくてはいけないという買主の義務が有ります。
これは、ほとんどのケースで売買契約書に約定されているものです。

しかし、この時の買主は、金融機関から審査に必要な書類を約定期限まで提出せず、また融資審査進捗状況を要求されたにもかかわらず、その報告もせず、金融機関から融資否決されたと嘯いて、ローン特約による白紙解除を申し出てきたのです。

売主が納得できる理由の説明が出来ないコーラルでは、買主側の不動産会社経由で融資審査を申し込んだと言う金融機関へ、融資否決の確認をしました。
その結果、分かったことが、審査に必要な書類を約定期限まで提出していなかったのです。

買主にその旨確認したら、売買契約は締結したものの、その後、買いたくなくなったとの事で、何とか解除したいと思っていたので、このローン特約による白紙解除を思いついたようです。

このように買主の故意による行為などで、著しく遅れて融資承認期限日までに承認が間に合わない場合は、ローン特約が認められない事になります。

売買契約は神聖なものです。
ローン特約による白紙解除は、買主が申込をしっかり行ったにもかかわらず、ローン審査に通らなかった場合のみに行使できる特約だと考えておきましょう。
売買当事者は身勝手な解釈運用をしてはいけないのです。

なお、ローン特約ではない契約解除は、手付金の没収や、売主が履行に着手した段階では相応の違約金が発生します。

いい加減な不動産会社も注意すべし!

住宅ローンの審査は、時としてとても時間を要する場合が有ります。特にネット専用銀行の審査はとても時間がかかる場合が有ります。
ゆえに、場合によっては審査結果がローン特約の期限に間に合わない場合もあります。
そんなとき、ローン特約の期限延長を求められる場合が有ります。

売主としても売買契約が白紙解除になると、また買主を探すために時間と手間を掛けないといけないので、審査結果がもう少しで出そうな状況であれば、期限延長には柔軟に対応した方が良いでしょう。

ローン特約の延長を行う場合は別紙『覚書』という書面を交わすようになりますが、そのままズルズルになってしまうのは良くないので、延長期限は1~2週間ぐらいに留めておくのが一般的です。

また買主が融資の審査を申込んでいる銀行に問い合わせれば、あと何日ぐらいでローン審査の結果が出そうか分かるはずなので、その状況を確認した上で、延長期間を決めても良いでしょう。

ここで気を付けたいことが有るとすれば、不動産会社やその社員の中には、ローン特約について理解していない者が居ることです。

以前、地域では大手と言われる不動産会社の紹介でマンション売買契約を締結した時の話ですが、その会社の担当者が住宅ローンの手続きを疎かにして、終いには審査結果がローン特約の期限に間に合わないケースが発生した売買が有りました。

買主は、その不動産会社の担当者に住宅ローンの申し込みを確認していたらしいのですが、この担当者はずるずると申し込みをしないでいたのです。
売主に事情を説明し、理解を頂いたうえで『覚書』を交わし、延長期限を1週間先に設定し直しましたが、この担当者は悪いと思っていなかったのです。
このことをその不動産会社の所長に説明すると、その社員はやっと事の重大さに気づき青ざめて謝罪してきた位です。

ローン特約で白紙解除の場合の仲介手数料の取り扱い

ローン特約による白紙解約の場合には、仲介手数料を支払う必要はありません。
よって、不動産売買時に仲介手数料の半金などを不動産会社に支払っている人は、不動産会社から支払った分の仲介手数料は全額返金されます。

なおローン特約ではない契約解除は、仲介手数料も支払いが発生します。

ローン特約(融資利用の特約)・まとめ

ローン特約(融資利用の特約)は、審査した結果、その承認が下りなかった場合は契約が白紙解除になるという、買主が保護される特約です。

ただしローンの承認が取れなければ、どんな場合でも契約解除ができるというわけではありません。
買主が故意に融資承認が取れない行為を行った場合は、このローン特約(融資利用の特約)が有っても白紙解除にならない場合も有る事を十分に理解しておきましょう。

なお売主も、ローン特約については事前に知識をつけておき、万が一買主のローンが通らなかったときにどのような対処が必要になるのか仲介する不動産業者と相談しておくのが良いでしょう。