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マンション購入など不動産売買と手付金の目的、相場等を解説

更新日2021-09-18 (土) 07:23:49  

マンションや一戸建てなど不動産を購入する際は、その多くが「手付金」を買主から売主へ支払うこととなります。
この手付金、何のために支払うお金なのかはっきり理解している人はどれくらいいるでしょう⁉
ここでは、不動産売買時の手付金の目的、手付金の相場、支払いのタイミングや、安全安心な不動産売買にする為の手付金とはどういうものなのか、不動産会社の取り扱い方などを宅地建物取引業法『以下(宅建業法)とする』を踏まえ解説したいと思います。


★目 次★【不動産売買と手付金】マンション購入時などの手付金の目的、相場、支払いのタイミングを解説


手付金の目的

『約束事の一方的なキャンセルに対するペナルティという側面が有る!』

不動産売買契約とは、買主と売主双方が協議の下しっかりと決めた事を履行する約束の締結です。
その約束とは、売主の場合、買主に不動産を売り渡すという事であり、そのために不動産広告は一旦ストップしたりします。また、居住中のマイホームなどでは売主は引越しもする必要が出てきます。
ゆえに売主は、同時に複数の売買契約を結ぶというわけにはいきません。

買主の場合には、決まった時に売買代金全額を支払う事を約する事になります。
しかも、売主買主は契約不適合責任も売主買主で約束します。

しかし、買主のやむを得ない事情から契約を守らずに一方的に破棄せざるを得ないこともあります。売主の場合でも一方的に破棄せざるを得ないことも有るでしょう。
ただ、売買契約後に無条件でキャンセル可能だと、キャンセルの度に売買場面をやり直すことになってしまいます。
ゆえに売買契約時に支払う手付金には、「商談をキャンセルした場合のペナルティ」という意味合いを持たせているのです。
売主買主が一方的に不公平な取引とならないように、「売買契約締結後にキャンセルするとペナルティが有るよ」というルールを定めているのです。

手付金の種類

手付金は、厳密には3種類あります。
日本の不動産売買契約(実際の取引)では、解約手付として授受することが多いです。

解約手付

売主と買主の間で締結した契約を、後で解除することができる性質の手付を言います。
買主は支払済の手付金を放棄することで、また売主は手付金を買主に倍にして返す(預かった手付金を返却+手付金と同額の金額を支払う)ことで売買契約を解除することができます。

違約手付

買主と売主のいずれかに債務不履行(契約違反)があった場合に、損害賠償とは別に違約金として手付金を没収されます。
買主に債務不履行があった場合は支払った手付金の全額が没収されます。
売主に債務不履行があった場合は手付金の倍(預かった手付金を返却+手付金と同額の金額を支払う)を支払わなければいけません。

証約手付

買主が売主に対象不動産を購入する意思があることを示すために支払うお金を言い、不動産売買契約が成立したことを証明するための手付金です。

以上、不動産の売買契約を締結するときに、買主様は売主様に手付金をお支払いするのが一般的となりますが、ではいつ払うのかを見て見ましょう。

手付金はいつ払う⁉

手付金を支払うのは、売買契約時ですが、売買契約時でも最後のタイミングで払います。
一般的に売買契約時には、不動産会社による重要事項説明や売買契約の説明と質疑応答、その後各書面に署名・押印します。
この署名・押印の後、手付金の授受が行われます。
この手付金は売買契約と同時に払う必要が有るので、現金または銀行振込で支払う必要がありますから、買主はあらかじめ手付金を用意しておく必要があります。

住宅ローンと手付金の関係(手付金無でも住宅ローン借入は可能か⁉)

結論を言えば、手付金0円で住宅ローンの借入はできます。
ただ、買主の属性(収入、ご勤務先の状況、ローン返済の事故歴など)により借り入れできるかどうかは判断されます。

稀に、金融機関からの融資を受けずに現金で購入する方もおり、その場合は売買契約締結と売買代金の全額支払いを同時に行うケースもあります。このケースでは一度に売買代金の全額を支払ってしまうので、「手付金」の支払いは生じません。

しかし、現実的には不動産売買時に、不動産を購入される方の多くが金融機関の融資を受けますので、一般的には手付金を支払って売買契約を締結し、金融機関の融資を受けて残代金を支払うことになります。

通常、手付金は現金(もしくは振り込み)で売買契約締結時に支払われます。
また、売買契約が問題なく履行された場合、手付金は残代金の支払いの際に、物件購入代金の一部に充当されるケースが一般的です。

これを実務で行う場合、売買契約書で「手付金は、残代金支払のときに売買代金の一部に充当するものとし、残代金の支払いの際に物件購入代金の一部に充当します。」として執り行っています。

住宅ローン特約有る場合の手付金取り扱い

買主がマンションなど不動産を買う場合、その多くの方が住宅ローンを利用する場合が有ります。
この住宅ローン審査は売買契約前の事前審査(仮審査)と、売買契約後の本審査に分かれて行われます。
ゆえに通常、不動産売買契約では、「売買契約締結後、買主が住宅ローン審査(本審査)に落ちてしまった場合は売買契約を白紙解除とし、手付金は買主に返還する」という特約を設定するのが一般的となっています。
これを住宅ローン特約と言いますが、この特約がついている場合、売買契約の締結後であっても手付金は戻ってきます。

手付金の制限

では、売買契約締結する際に買主様から売主様へ支払う「手付金」についての決まりごとはあるのでしょうか?
解説していきましょう。

売主が宅建業者の場合の手付金の制限

売主が宅建業者である場合は、手付金の額についていくつか制限があります。
まずは手付金の上限金額が売買価格(物件価格)の20%までとなっています。

また、
・未完成物件の場合は売買代金の5%以下かつ1000万円以下
・完成物件の場合は売買代金の10%以下かつ1000万円以下
の場合は、手付金の保全措置を講じずに手付金を受領することができます。

ちょっと分かりにくいので簡単に言うと、
・未完成物件で手付金6%とか1001万円
・完成物件で手付金11%とか1001万円
を売主(宅建業者)が受領するには、手付の保全措置を講じてからでないと受領できない。ということになります。

売主が個人の場合の手付金の制限

『宅建業者以外の売主の場合、売買価格(物件価格)の5~10%程度が相場』

中古マンションや中古住宅などは、売主が個人の場合が多いですが、この売買契約では特に手付金についての定めはありません。
故に売主買主の話し合いで調整されますが、ただ多くの場合、売買価格(物件価格)の5~10%程度が相場となっています。


以上のように、売主が宅建業者の場合は手付金の上限金額について制限を受けますが、下限金額については言及されておりません。
売主が個人の場合は手付金の上限額も下限額も一切制限がありません。

手付金は売買価格の何割が妥当⁉

『手付金の金額は売主と買主の交渉で決められる!』

昨今の傾向を見ていますと5%程度の手付金が主流となっておりますが、
「必ずしも5%程度としなければならない」
ということではありませんので、5000万円の売買価格に対して、手付金100万円でも売買契約を締結することもあります。

土日に物件を内覧して、
購入申し込みを提出して、
ローンに事前審査の承認がおりたら、
「じゃ、次の日曜日に契約しましょう」
という流れとなった場合に、
・定期預金を解約しないと手付金5%用意できない
・有価証券を現金化しないと手付金5%用意できない
ということもありますので、
「じゃ、手付金100万円でOKですよ」と売主・買主間で合意すれば「必ずしも5%程度」ではないということです。

手付金10万円ってどうなの?

売主・買主間で合意すれば手付金10万円でも売買契約を締結することは可能です。
ただ、低額の手付金は売主が嫌がるので
「よっぽど売れ残っている物件で手付金10万円でもしょうがない、契約しちゃおう」ということでもない限り、売主は契約を受けてくれないと思います。
仮に低額の手付金で売主が契約を受けてくれた場合でも、「手付解除期日」が極端に短くすることが想定されます。

手付金について、実務上の売買契約内容

『売買契約締結した後に買主が一方的に契約を反故した場合、手付金は戻ってこない!』

売買契約とは、 売主が「不動産」を買主に移転して、買主がその代金を支払う契約となります。(民法555条)ゆえに一旦売買契約を締結した後に買主がキャンセルをした場合は、契約違反の責任を取る必要があり、支払った手付金は買主に没収され返ってきません。
また、売主がキャンセルをした場合にも、契約違反の責任を取る必要があり、手付金は買主に返還された上で更に別途約定で決められた額(通常は手付金と同額)を支払うこととなってきます。

では、実際、売買契約で用いる契約内容、文章を見て見ましょう。
宅建業者が、売買契約書の条項で用いる文面は以下のようになっています。

「用語解説:手付解除(売買契約書より抜粋)」※売主が個人の場合
契約書第○○条:手付解除
1.売主、買主は本契約を表記手付解除期日までであれば、その相手方の本契約の履行着手の有無にかかわらず、互いに書面により通知して、解除することができます。
2.売主が前項により本契約を解除するときは、売主は。買主に対し、手付金等受領済みの金員および手付金と同額の金員を現実に提供しなければなりません。買主が前項により本契約を解除するときは、買主は、売主に対し、支払い済みの手付金の返還請求を放棄します。

先に述べた、「低額の手付金は売主が嫌がる」理由は、
契約書の条文に記載されている通り、売主・買主間で合意した手付解除期日までであれば、買主は手付を放棄して契約を解除できるからです。
売主としては、10万円の手付金より100万円の手付金のほうが、「手付解除されにくい」と考えますし、
仮に手付解除されてしまっても「100万円はいってくるなら、まあいいか」と考えるからです。

手付金0円ってどうなの?

繰り返しとなりますが、売主・買主が合意すれば手付金0円での契約は可能です。ただ買主のメリットがほぼ無くなってしまう事を覚悟しなければならないでしょう。

実は、「手付金0円で受けてしまって売主側はリスク高いなー」と感じられるかもしれませんが、買主にとってもとってもリスクの高い契約となるのを理解しなければいけないのです。

手付金0円ということは、手付金を支払っていないので、前項で述べた「手付解除」をすることが出来なくなってしまいます。
手付金を1万円でも10万円でも支払っていれば、手付解除期日までであれば買主は1万円もしくは10万円を放棄して契約を解除できますが、手付金0円で契約して、万が一契約を解除したいといった場合は「違約(契約違反)による解除」が適用されることが想定されます。
違約金は一般的には売買価格の10%もしくは20%としていますので、「やっぱ買うのやーめた」といった場合に、かなり高額な違約金を用意しないと契約を解除することができないのです。

まとめ

不動産売買時の手付金を纏めると以下のようになります。

・売主が宅建業者の場合は手付金の上限金額について制限がある

・売主が個人の場合は手付金の上限額に制限はない

・売主が宅建業者であろうと、個人であろうと、手付金の下限金額に制限はないので双方が合意すれば手付金0円での売買契約も可能

・低額の手付金は契約解除されやすい(しやすい)ので、売主は嫌がる

・手付金0円の場合は、手付放棄による解除ができないので、売買契約を解除したいときは違約による契約解除が適用される可能性があり、違約金が発生する

となります。

ただ、実際は第三者間(赤の他人同士)の売買契約において手付金0円で契約したいと申し出る買主は今まで一度もいませんでしたので、現実的にはかなりレアなケースといえると思います。

コーラルでは一般的な第三者同士の売買(赤の他人同士の売買)以外にも親族間や身内間の売買契約を多く扱っています。
第三者間売買では「手付金0円」という話はほとんど出てきません(私、実際にやったことありません)が、親族間だと、たまに「手付金0円」で契約したいと仰る方がいらっしゃいます。
その方には今回記載した以外の理由で「手付金は払った方がいいですよ」とお伝えしております。その理由について以下では「親族間売買で手付金0円ってどうなの?」で解説しておきたいと思います。

特記: 【親族間売買】における手付金0円というケースについての解説

親族間売買は「親と子」「兄と弟」「兄と義弟(妹の旦那さん)」「叔父と甥」など、色々なケースがあります。

このような身内同士での売買では「えっ?契約の時手付金払うの?」とか、「親族間なんで手付金なしで、住宅ローン融資実行の時に一括でいいよ」などの意見や要望を耳にします。

その際に私は「親族間といえ契約事なのでちゃんとやっておきましょう」と提案しておりますが、実は親族間売買ほど一般的な契約に則って執り行っておいた方がよい理由があります。

私たちがお取り扱いしている親族間売買では、売主・買主間で売買代金が合意されているケースが大半です。
売買代金の傾向を見てみますと、市場価格(相場)より高い金額で売買するというケースは稀で、ほとんどが市場価格より安い金額で売買を行っております。
ここで問題となってくるのが「低廉譲渡によるみなし贈与」です。
著しく低い金額で売買すると、「贈与なんじゃないの?」と税務署から目を付けられてしまうこともあります。ここで更に「手付金0円って普通の契約じゃないよね?」と一般的な売買契約より目立った取引になると、税務署の追及が一層厳しくなる可能性があります。

要は、税務署からあらぬ疑いを受けないように、一般的な売買契約と同等の内容で契約したほうが目立たないですよ。ということです。