人口減!不動産価格暴落!その根拠は?元データで確認しよう!

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「これからの日本は、少子高齢化などの影響もあり、不動産価格は、どんどん値下がりしていく」というような話があります。

ここでは、「人口が減るから不動産価格が下がるという主張を聞く前に、一度、元データを確認してみよう!」ということをテーマにお話しします。

ここでお話するのは「人口数と不動産は、まったく関係ない」ということではありません。
「人口が減る=不動産価格が下がる」という意見が間違っているという話でもありません。

なぜ、元データを確認した方が良いのかと言うと、世の中には、いろいろな意見がでていますので、その意見は、「いったいどんなデータが根拠になっているのか」、あるいはデータをそのまま見た時に、「皆さん自身がどう思うのか」と言うことが非常に大事になってくるからです。

出来るなら、一度、元データを見て、“どうゆうふうに考えるべきか”ということを、皆さんに知っていただきたいと思います。

元データって?どこからもってくるの?

「元データを確認すると言っても、どこで何を見れば良いのかわからない・・」という方もいらっしゃると思いますので、元データについて代表的な2つをご紹介します。

元データとして、さまざまな統計がネット上で確認できます。

▶総務省の統計局(e―Stat)

ひとつめは、総務省統計局(e―Stat)です。

✿政府統計の総合窓口(e―Stat)とは
各府省等が公表する統計データを一つにまとめ、統計データを検索したり、地図上に表示できるなど、統計を利用する上で、たくさんの便利な機能を備えた政府統計のポータルサイトです。

こちらでいろいろな統計データ(公的なデータ)がExcel形式でダウンロードできます。
世帯数・人口の推移などもこちらで確認できます。

▶国土交通省(住宅経済関連データ)

国土交通省の方でも、さまざまな住宅経済関連データ(データというよりちょっとまとまったもの)をExcelで確認することができます。
国土交通省 平成29年度住宅経済関連データ

それでは、実際に、いくつかの元データを組み合わせながら、3パターンのグラフを作成しましたので見てみましょう。

人口と地価(全国)の比較

「全国の人口と地価はどうゆうふうに関わっているのか」というところを見てみましょう。

▶日本の人口

③人口

1982年から2018年の人口の動きをグラフにしてみました。

このグラフは、「e―Stat 住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数調査」のデータをもとに作成しています。

年次をクリックすることで人口や世帯数が確認できます。

人口については、「いったい何年がピークだったのか?」と聞かれる方がいらっしゃいます。

グラフを見ると、2012年(平成24年)から2013年(平成25年)にかけて、人口が170万人ほど急激に増えています。
「ではこの時がピークなのか?」となりますが、これは、実際に人口が増えたわけではなく、集計方法が変わったことによる数値増となっています。
簡単に説明すると、この期間内に、住民基本台帳制度が整ったことにより、日本に住む外国人の人口が加わり、集計方法が変更されました。

それでは、「実際のピークはいつなのか?」と言うと、数だけで見た場合、2014年の1億2,844万人が一番多くなります。
それから一定の速度で人口減が起きています。

人口数は、たくさん情報がありますので、「自分でわざわざ確認しなくても・・」と思われるかもしれませんが、こうして実際に確認されてみると、何か新たな考えや発見があるかもしれません。

▶人口と住宅地の地価

人口の推移を確認しましたが、次は、人口が不動産の価格とどんな関連があるのかを確認するために、人口と住宅地の地価について比較してみましょう。

④人口と地価推移
地価設定→1982年を100とした場合の価格比率

このグラフは、先ほど作成したグラフに、国土交通省サイトのデータを組み合わせて作成しています。
国土交通省:平成29年度住宅経済関連データ
→<3>建築費及び地価の現状→3.地価の推移→(1)地価変動の推移 地価水準の推移 (ここをクリックするとExcelで確認可能)

皆さんご存知の通り、1991年のバブル期がピークとなり急激に上がっています。
その後地価は、ずっと下がってきて、2008年のリーマンショック前に少しだけ上がりますが、一時的なもののように見えます。

また、2000年前後には、ITバブルもありましたが、それらが、関連(リンク)しているのかというと、このグラフを見る限りでは、考えにくいように感じます。

ただここで言っている地価というのは「公示価格」になります。

✿公示価格とは
地価公示法にもとづいて土地鑑定委員会が公表する土地の価格です。

この公示価格は政策的な要素が入っていますので、タイムラグもあります。
そういった点では、どこまで制度が高いのかと言うところはありますが、公にされているデータで、こうして人口と照合してみる限りでは、「人口が減るから不動産が暴落する」という意見とは反対で、人口の推移と地価はあまり連動していないように見受けられます。

世帯数と住宅地地価(全国)の比較

不動産は結局1住戸あたりとなりますので、比較するのであれば、「人口ではなく世帯数ではないか?」と考える方もいらっしゃると思います。

そこで、ここでは、世帯数と住宅地の地価(公示価格)を照らし合わせてみます。

⑤世帯と地価

世帯数は、さきほど人口数を確認したデータ「e―Stat 住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数調査」で確認できます。

先ほど人口を確認した時、2014年くらいをピークに下がっていましたが、世帯数はそのようなことはなく、ずっと増え続けています。
人口は減っているのに世帯数は増えている・・・
これはなぜかと言うと、1世帯当たりの人数が減っているからです。

このグラフは過去30年以上の比較になりますが、そこから見ても、世帯数と住宅地の地価との増減に何らかの関連があるようには思えません。

世帯数とマンション価格(東京)の比較

「あまりにも全国という広い範囲で見すぎでは?そもそも地価そのものではなく、住宅そのものの値段と比較するべきではないか?」と考えられる方もいらっしゃると思います。

最後は、東京の世帯数と首都圏のマンション価格で比較してみます。

⑥世帯数(東京都)とマンション価格

マンション価格は
国土交通省:平成29年度住宅経済関連データ
→<3>建築費及び地価の現状→1.住宅建設に関するコストのが概況→(1)首都圏のマンション価格、住宅地価格、住宅建設工事費、消費者物価指数の累積変動率の推移→Excelで確認可能

これも当然バブルの時期にマンションの価格が非常に高くなっています。
その後は、急激に下がり上がり下がりを繰り返している状況のように見えます。
このグラフを見ても、世帯数とマンション価格がリンクしているか、関連性があるか。という点では、なかなか微妙な感じがします。

強引に解釈すれば、「バブルの時期を除けば、基本的に世帯数の増加にあわせてマンション価格が上がっいると言えなくはない」かもしれません。
しかし、バブルの期間は、14年強程ありますし、その後も、本当に関連があるのかと考えると、「ある」と言い切れる感じではないように思います。

自分で確認して考えてみることが大切です

今回、元データを確認しようというお話をしました。
元データを確認するということについて、どういうふうに考えるかは、人それぞれ違う解釈があると思います。

もちろん、データを確認してみた結果で「人口と不動産はまったく関係ない」と言うつもりは全くありません。
ある程度の相関関係、または何らかの影響を与えているところはあるとは思います。
ただ、その一方で、少なくとも、過去30年強のデータを見る限り、人口だけで不動産の価格が決まっているわけではないと言う考えもあります。

人の意見や数字を聞いただけで理解するのではなく、一度でも元データを見ていると、世間で主張されている意見が「本当に正しいのか?それってどうなのだろう?」という疑問を考える良いきっかけにもなります。

パソコン

確かに、元データを集計してグラフにするというのは、面倒なことではありますが、ものすごく時間がかかるかと言うと、Excelまたは表計算ソフト等をお持ちであれば、そこにダウンロードして、コピーペーストでグラフにするだけとなりますので、数時間単位で出来ると思います。

また、何と何のデータを比較すれば良いのかというセンス的な部分は問われるところではありますが、大事なことは、自分で、「これとこれは関係があるのでは?」と思うものを比較してみることです。

もし、このような元データを見ることもなく、世の中でいろんな意見を主張されている方がいらっしゃったら、いったどういった根拠でそのような話をされているのかということになります。

また、不動産の価格については、いろいろな意見があります。
その意見が、政策的なものだったり、ポジショントーク(自分の会社、自分の仕事に有利な方向に持って行くトーク)だったりする場合もあります。
人の立場や意見で変わってくるところがありますので、非常にバイアスがかかっているというところが残念なところです。

✿バイアスとは
理的な思考ができずに,自分の利害や希望に沿った方向に考えが歪められたり直感や先入観,願望が論理的な思考を妨げる現象を言います。

もちろん、いろいろな意見を聞くのは良いことですが、元データで実際の内容を照らし合わせることで、ある程度冷静に考えることもできるのではないでしょうか。

統計データは見るポイントやどんなデータを見るかによっても、多くの気づきを得る事が出来ます。
また、元データを自分で管理しておくと、何か考える際に比較やチェックがすぐできます。
誰でもダウンロードできるデータですので、興味がある方は、ぜひチェックしてみてください。