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地面師に騙される可能性は誰にでもある!【地面師に騙されないために】

更新日2020-04-29 (水) 12:54:49 公開日:2020年4月21日

都心1等地の売買をめぐり、積水ハウスが55億円をだまし取られた事件で、地面師グループの主犯格とみられている被告に対し、先ごろ詐欺や偽造有印公文書行使などの罪に東京地裁は懲役12年(求刑・懲役15年)の判決を言い渡しました。
さて、この事件で話題になった地面師とはいったいどう者なのか?、またこれらから自身を守っるためにはどうしたらいいのかをここでは解説してみましょう。

★目次★地面師に騙される可能性は誰にでもある!【地面師に騙されないために】


まだ記憶に新しいかと思いますが、「積水ハウスが地面師グループに63億騙し取られる」「アパホテルが地面師グループに騙し取られる」というニュースが2017年に報じられました。

まず先に簡単に説明しておくと、地面師とは不動産売買を利用した詐欺師のことをいいます。

私ども中小企業では何十億円もする物件の売買に携わることはほとんどないので、このニュースが報じられたときは「こんな超一流企業でも詐欺にあうのか」と他人事のように見ておりました。

また、恥ずかしいことですが、この時はじめて「地面師」なるものが存在するのを知ったくらいです。

しかし調べてみると、地面師は戦後の混乱の中で所有者不明の土地を転売するスタイルから始まり、手口を巧妙に変えつつ今もなお活動を続けているのです。
また、これからは放置されている空き家や空き地がどんどんふえていくので、更なる地面師による詐欺被害が増えていくのではないかと伝えられています。

今後は数千万円の物件がターゲットになってきてもおかしくはありませんので、私は数十億の不動産を所有していないから、とか、そんな高額な不動産を購入することはないから、と他人事では済ませられません。

後ほど、地面師に狙われやすい物件について記しますので、もし該当する不動産を所有している方や、該当する不動産を購入しようとしている方は、他人事と考えずに注意してください。

狙われたら防げない?

昔見た映画でロバートレッドフォード、ポールニューマンが共演した「スティング」という名作がありました。

最近では長澤まさみさんなどが出演している「コンフィデンスマンJP」というドラマが映画化されています。

どちらも主人公は詐欺師ですが、これらの映画では仲間の仇を打つためや、悪人からお金を巻き上げるために、スクリーンのなかで颯爽と主人公である詐欺師が活躍しています。

私は地面師たちの活動を実際に目にしたことはありませんが、何十億も騙し取ろうとする地面師詐欺のような大掛かりな詐欺は、用意周到な準備を行い、まさに映画のスクリーンの中で演じられているようなことを実際に被害者の目の前で行っているのでしょう。
当然リハーサルや役割分担なども入念に行っている事だと思います。

霊感商法やオレオレ詐欺みたいな数打てばあたる的な詐欺には騙されない自信がありますが、周到な地面師の詐欺を行っている場面に当事者として立ち会った場合は、騙されないという自信はありません。
なぜなら地面師詐欺は用意周到に人生をかけて全力で騙しに来るのです。

万全の計画を立て、善人を装い(演じ)、他人から財産を奪うことに人生をかけている悪意のある地面師たちに対しては、狙われたら見破ることは困難なのかもしれません。

地面師の手口

まず、地面師は一人で行動する事はなく、複数の人数でグループを組んで詐欺を働きます。

所有者に成りすます役目を行う者、 売買に必要な書類を偽造する役目を行う者、土地を探す役目、買い手を探す役目を担う者などです。 

地面師は他人の土地を自分または自分の関係者の名義に変えて、それを知らない第三者に売却するなどしてお金を手に入れます。
場合によっては、真の所有者を装って(演じて)売却するのです。

地面師は買主を信用させるために様々な手法を用うのです。

狙わけらたら、まさかと思う手段、真の所有者が所有しているはずの書類をも精巧に偽造してしまいますので見破ることは困難なのです。

まさに積水ハウスの事件では、真の不動産所有者に成りすまして、所有権移転に必要な書類を積水ハウスに提示して63億円を騙し取っているのです。
書いてしまうとなんで見抜けなかったのかと感じますが、それほど精巧な偽造書類と巧妙な準備があったのでしょう。

偽造されたらヤバイ、売主の書類

知り合いの司法書士に聞いてみました。

登記に必要な売主の書類が偽造された場合、見抜けるの?

売主の必要書類は権利証・実印・印鑑証明書・本人確認資料(運転免許証等)の4つです。

「権利証」

権利証については、印鑑証明書のような透かしがあるわけでは無いので、精巧に偽造されてしまうと見抜くことは難しい。

さらに、権利証ではなく登記識別情報通知だった場合は、原本がなくても記載されているパスワードが分かればいいので、偽造されるされないよりは、パスワードを他人に知られることが危険。

また、権利証が無かったとしても、本人確認情報により登記が通る場合もあります。
本人確認情報は司法書士が所有者と面談して書類を作成しますが、偽物に免許証などの本人確認書類を偽造されると、真の所有者であるか見抜けない可能性もある。特に経験の浅い司法書士だと騙される可能性も高い。

本人確認についての法改正

本人確認情報:2005年の不動産登記法の改正で生まれた、権利証を紛失した際の保全制度です。
この制度は、資格者代理人、つまり弁護士や司法書士が所有者の本人確認情報を作成して法務局に提出することで、権利証がなくても権利証があるときと同様の手続きで登記ができるというものです。
本人が権利証を紛失していても所有権移転などの登記がスムーズにできるようになった反面、地面師が本人になりすますために利用するケースが増えています。

「印鑑証明書・実印」

印鑑証明書・実印は権利証のような代替手段はありませんので、真の所有者が保管している実印と役所から発行される印鑑証明書が必要となります。

印鑑証明書は発行から3か月以内のものが有効となりますので、印鑑証明書を偽造されるのは難しそうです。

ただ、本人になりすまして、印鑑登録をし直すということは精巧な偽造免許証があればできてしまう可能性があります。
そうすれば、いつでも役所から発行する印鑑証明書を取得することが可能となります。

「本人確認資料」

積水ハウスの事件では、偽物は本人確認資料としてパスポートを提示したとのことです。

これも精巧に偽造されてしまうと、真贋の判別は難しいといえるでしょう。

【自分の不動産が勝手にとられないためには】

冒頭でお話したように地面師は人生をかけて全力で騙してきます。

すべての書類を完璧に偽造されてしまったら防ぐ手立てはないかもしませんが、基本的には権利証・印鑑証明書・実印などを紛失したり、盗難にあったりしなければ勝手に名義が変わっているということはありません。

しかし、紛失や盗難にあった場合は、名義を変えられてしまう恐れがあります。
その場合は、法務局に対して不動産登記防止申出をすることができます。

この申し出により、対象不動産に何らかの登記申請がなされた場合には申請を受けた法務局から「登記申請が出されましたけど大丈夫?」とお尋ねがくることになり、不正な登記を防止することができます。
ただ、この申し出の有効期間は3か月しかありません。3か月後に再度申し出をするか、その間に印鑑登録をやり直すことで、不正登記を防止することが大切です。

また、登記識別情報通知書を紛失または盗難にあった場合は、登記識別情報の失効手続きを行うこともできます。これにより、登記識別情報通知書に記載されているパスワードは無効になりますので、不正登記を防止することができます。ただし、一度執行手続きを行うと再発行はされませんのでご注意ください。

地面師(偽物)から不動産を買ってしまった場合

もし、真の所有者に成りすました地面師から不動産を購入してしまい所有権の移転までされた場合はどうなるのでしょう。

この場合は、真の所有者から登記名義をもとに戻すように請求された場合は、原則として断ることができません(真の所有者にも落ち度がある場合には真の所有者の請求が認められない場合もあります)。

また、不動産取引に不動産仲介業者や司法書士が入っている場合には、不動産取引のプロなのに、詐欺を見抜けなかったとして損害賠償を不動産仲介会社・司法書士に請求することもできますが、こちらもかなりの落ち度(一見して明らかな偽造を見過ごした棟)が無い限り全額の損害賠償を負わせるのは難しいと思われます。

また、発覚したことには地面師も逃げているので結果として騙されて泣き寝入りになる可能性があります。

地面師に騙されない為には

地面師は詐欺のプロですが、映画のように全てを完璧に計画通りに進めていくのは難しいはずです。

過去の地面師事件において、「そういえばあの時なんか怪しかったな、不自然だったな」と詐欺被害者のコメントとして発せられています。

具体的には

・売主が契約を急いでいる
・売主側の登場人物が多い
・物件価格が相場に対して安すぎる(あまりにも話がおいしい)
・購入したからすぐ転売している
・短期間で所有権が点々と移転している
・不自然な話が多い


また、地面師が狙う物件は

・更地の土地
・空家がある土地
・抵当権のついていない土地
・高額な土地
・所有者が遠方に住んでいる

など人が住んでいない土地です。
人が住んでいるとバレてしまう可能性がありますので、基本的に地面師が狙るのは空家か更地です。
また、抵当権が設定されていると金融機関も関係してきますので、地面師は抵当権のついていない土地を狙ってきます。

所有者の心得

これからは少子高齢化に伴う空家・空地の増加と所有者不明の土地が増えていくことが予想されます。

もし相続などで空家・空地を所得した場合は、早期に相続登記を行うことも重要となってきます。
相続した空地を放置しないということです。

地面師は制度の隙間を狙って仕掛けてきますから、この隙間を素早く埋める作業で被害を防げる可能性が高まります。

また、近所の住人や地元の不動産会社と仲良くなっておく、地元不動産会社に協力してもらい「○○不動産管理地」などの看板を立てる、定期的に物件を見に行く、なども有効な手段です。

万全を期すのであれば、数カ月に一回は不動産登記簿を取得する、印鑑登録も数年ごとに見直すなども有効です。

購入者の心得

積水ハウスでさえ騙されてしまうような地面師による巧妙な詐欺は、狙われてしまうと回避することは難しいというのが現状です。

先ほどお伝えした「地面師が狙う物件」に該当する時には、これでもかというほど疑ってかかるしかありません。

また、信頼できる不動産業者を介して購入することと、信頼できる不動産業者から紹介された司法書士に登記を依頼することはいうまでもありません。
もし、なんか違うなと思ったら躊躇わず、幾重にも確認すべしなのです。

まとめ

2019年に起こった地面師による積水ハウスへの詐欺行為。
これは人の置かれた状況を上手く利用し行われました。

さて、2020年。年始からのコロナショックによる混乱に乗じて、地面師たちも人の置かれた混乱の状況を上手く利用し詐欺行為を行う可能性が高まっています。

また、今、日本では所有者不明の土地が九州全土に匹敵し、また2040年には北海道の面積に迫る見通しとなっています。また今後、大量の土地相続が見込まれてもいます。

これら利用価値が無い土地が多くある半面、利用価値の高い土地も更地のままや古屋が立っている状態で傍らから見たら放置されているようにも見える場合も有ります。

地面師は利用価値のない土地には興味を持ちませんが、利用価値の高い土地を狙ってその所有者と偽り、その土地を魅力的に思っている者へ偽りの売買を持ち掛け金銭を騙し取るのです。

これかも日本では、多くの不動産売買が行われるでしょう。また親から相続することとなる土地が有るかもしれません。

譲渡を受けたら即登記し、何重にもチェックできるようにしておくことが地面師から身を守ることとなるのは言うまでもありません。

詐欺師グループが狙う対象は実に様々です。人の油断を狙って騙してきます。
相続した空き地、空き家でもやはり大きな取引で大金が動きます。
私は大丈夫だろうと油断せず、何重にも注意し慎重になりすぎる位でいいのです。