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サブリースを詳細解説?具体的なトラブル事例から見る問題点と解決法

更新日2020-04-27 (月) 23:02:20 公開日2020年4月27日

サブリースとは

不動産を借りて、借りた不動産を違う人に貸すこと。いわゆる転貸借のことです。
一般的にはアパートなど一棟丸ごとを一括で借り上げて、これを一戸単位で入居者に転貸することですが、最近ではワンルームマンションでもサブリース契約している物件が増えてきました。

サブリースの仕組み

まず、登場人物を整理しましょう。
A:賃貸人:不動産所有者を所有している所有者(大家さん・オーナーさん)
B:サブリース会社:大家さんから不動産を借りる賃貸人であり、入居者に貸す賃借(転借)人でもある
C:賃借人:不動産を借りて実際に入居する人

「仕組み」

A大家さん ←保証賃料 Bサブリース会社
      賃貸借契約
Bサブリース会社 ←賃料 C賃借人
        転貸借契約

この様に、サブリース会社Bは大家さんAから借りた不動産を入居者Cに転貸するのですが、サブリース会社が保証賃料を大家さんAに払い、入居者は賃料をサブリース会社に払います。
一般的には賃料の満室時想定賃料の80%~90%が保証賃料となります。
保証賃料は賃借人の有無にかかわらずサブリース会社から大家さんに支払われますので、大家さんは空室による賃料収入の減少リスクを抑えられるとともに、賃貸運営による煩わしさからも解放されるというメリットがあります。
またサブリース会社は賃料と保証賃料の差額で利益を得ることができます。

一括借り上げとサブリースの違い

一括借り上げとサブリースはほぼ同等の意味で使われることの多い用語です。包括的には一括借り上げとサブリースのことを一括りにサブリース契約と読んでいます。
しかし厳密には意味合いが全く違います。この二つの言葉の意味を正確に理解しておかないと、アパート経営でサブリース会社(不動産会社)と契約した時に双方の認識違いによるトラブルや、想定外の費用を請求されるなどのトラブルが生じる場合があります。
以下に二つの用語の違いについて解説していきます。

「一括借り上げ」の本来の意味

一括借り上げとは、サブリース会社(不動産会社や管理会社)が大家さんの所有しているマンションやアパートなどを一棟丸ごと一括で借りることです。大家さんからすると自身で所有しているマンションやアパートをサブリース会社(不動産会社や管理会社)に預ける形になります。

「サブリース」の本来の意味

サブリースとは、サブリース会社(不動産会社や管理会社)が一括借り上げしたアパートやマンションなどの賃貸物件を大家さんに代わって第三者(入居者)に貸すことです。「又貸し」「転貸」とも呼ばれています。
サブリース会社から第三者に貸すサブリースに対して、大家さんから管理会社が一括して借り上げることをマスターリースと呼ばれることもあります。

簡単に整理すると、
・大家さんから一括で借り上げること = 一括借り上げ(マスターリース)
・サブリース会社が入居者に転貸すること = サブリース

サブリース以外のサービス(管理委託、滞納補償)について

「管理委託」とは
アパート経営の一部を不動産会社に委託することをいいます。入居者の募集から集金、物件の清掃維持管理、苦情処理まで幅広く管理会社に委託することもできますし、部分的に委託して残りは大家さん自身で行うこともできます。

サブリースとの大きな違いは

・契約相手が入居者
・家賃保証がない
・家賃の額が自分で決められる
・入居者が変わるたびに契約書を取り交わす必要がある
など、サブリースと比べると大家さんの手間が増える形態となります。
その分、管理委託費用としては家賃の3~7%程度となりますので、大家さんの手元に入ってくるお金はサブリースよりは多くなります。

「滞納補償」とは

滞納保証は賃貸物件を委託した管理会社が、集金代行業務のオプションとして行うことが多いシステムで、万が一入居者が決められた期日までに家賃の支払いを行わなかった場合に管理会社が立て替えて大家さんに家賃を支払うというものです。
サブリースの場合は空室となっても「保証賃料が」大家さんに支払われますが、「滞納保証」は空室時の家賃を保証したものではなく、あくまでも賃貸借契約中の滞納家賃を保証したものです。

サブリースのメリット・デメリット

ここではサブリースにおけるメリット・デメリットを詳細にお伝えしておきます。

メリット

・空室リスクが回避できる

最大のメリットは「空室リスク」を回避できることでしょう。空室となると見込んでいた賃料収入が得られずにアパートローンの返済もおぼつかなくなりますが、サブリースでは入居者の有無にかかわらず毎月保証賃料がサブリース会社から入ってきますので、安定したアパート経営ができます。

・管理業務の煩わしさが無い

サブリース会社に一括して貸してしまうので、契約は「大家さんーサブリース会社」となります。実際に入居する方との契約責任はサブリース会社が負いますので、大家さんにとっては入居者が入れ替わるごとの契約や更新契約、入居者からの苦情などの煩わしい作業から解放されます。

・確定申告に係る収支管理が簡素化される

賃貸経営における収入は不動産所得にあたりますので、確定申告が必要となります。
サブリースを利用すると、入居に関する管理業務はサブリース会社が行いますので、大家さんは入居者の入退去にかかる費用などの計上が不要となり、確定申告に係る収支管理が簡素化されます。

デメリット

・賃料収入が最大化できない

物件の入居状況がよくても、自己管理ではないので大家さんの収入は保証賃料以上にはあがりません。

・入居者を選ぶことができない
サブリースを利用するとサブリース会社が入居者募集を行いますので、大家さんが入居者を選ぶことができません。
サブリース会社は入居者の有無にかかわらず大家さんに保証賃料を支払わなければなりませんので、空室で家賃収入がなければ不足分をサブリース会社が負担しなければなりません。その為、サブリース会社によっては入居審査のハードルを低く設定してでも入居者をつけようとする可能性があります。その結果、好ましくない入居者が入居してしまうことも考えられます。

他にも以下のようなデメリットがありますが、6.サブリースの問題点で取り上げていきます。

・家賃収入が減額するリスク
・サブリースは大家さんからは簡単に解約できない
・サブリース会社の倒産リスク

サブリースの問題点

一見すると安定した賃料収入が得られて、リスクのない投資・事業のような印象を受けますが、サブリースにはいくつもの問題点があります。
大きな要因として借地借家法が関係してきます。借地借家法では、家を借りる方を「契約弱者(弱い立場)」とみなしております。対して家を貸す大家さんは「契約強者(強い立場)」ととらえており、立場の弱い方の保護(味方)をしましょうとしております。
どういうことかと言いますと、大家さんの一方的な都合で「来月で退去してね」「来月から家賃上げるよ、それが嫌ならでてってね」という横暴に対して、貸してもらっている側(立場の弱い方)を保護する意味合いが強いのです。よって、定期借家契約のように最初から期限が決められている場合を除いては、大家さんから「来月で出ていって」「契約の更新はしないよ」と言われても、賃借人が住み続けることを希望すれば大家さんは正当な事由がない限り拒めないのです。あくまでも弱い立場の方の味方なのです。
では、不動産の取引のプロであるサブリース業者は契約強者なのでしょうか?全く知識もなく「相続税の節税対策になります」「安定収入が得られます」と業者の口車に乗せられて建物を建ててしまった大家さんは契約弱者なのでしょうか?
通常の感覚では、情報もノウハウもあるサブリース業者は強者で、全くの素人である大家さんは弱者となり、弱者である大家さんがトラブルが生じた際に保護されるべきだと思います。しかし、サブリース業者との契約でも借地借家法が適用され、家を貸してあげる大家さんが契約強者となり、家を借りるサブリース業者が契約弱者として保護されるのです。なんとも腑に落ちない感じですが、これがさまざまなトラブルの要因となっております。
また消費者契約法という法律があります。「事業者」と「消費者」間の契約事において、知識のない弱者である消費者を保護するためのものです。
サブリースにおいて「消費者」というと、個人である大家さんが該当しそうですが、アパート経営は事業として捉えられていますので、大家さんは消費者ではありません。残念ながら大家さんは消費者契約法での保護も受けられないのです。

以上を踏まえてこれからアパート経営を考えている方は以下の問題点をよく理解してから取り組んでいきましょう。

・家賃収入が減額するリスク

「30年一括借り上げ」「長期安定収入」などのうたい文句。数十年にわたり一定の賃料を保証しているようですが、保証賃料の減額請求をされる場合があります。
これは借地借家法で「賃料減額請求を排除する契約は無効」とされているからです。当初の契約で「家賃35年保証」「10年更新契約」などとサブリース会社と契約していても、サブリース会社は法的には守必要はなく、いつでも減額請求を行うことができるのです。

・大家さんからはサブリース契約を解除することは困難

サブリース会社は借地借家法で保護されている賃借人(弱い立場の人)なので、大家さんからサブリース会社に「もうおたくには貸さないよ、契約解除ね」といっても、サブリース会社が応じなければ契約を解除することができません。

・サブリース会社から契約解除されるリスク

大家さんが賃料の減額に応じない場合には、サブリース会社から契約を解除される可能性があります。大家さんから契約を解除することは困難ですが、サブリース会社からの契約解除は比較的容易い。

サブリース会社は月々の賃料収入と保証賃料支出の差額で利益を出すが、近年賃料差額での利益が減少傾向にある。そのため、サブリース用に建てる建築物(アパート)の建築費用で利益を上げる為、サブリース用の建物の建築費は相場と比較すると割高傾向になる。

サブリース物件を売却しようとした場合、当初の建物価格が高い為、購入価格と売却価格で大きな損失が生じる可能性がある。

サブリース物件を売却しようとした場合、購入者がつきにくい。

サブリース業者の傾向として、当初建物の建築で利益を上げようと考えがちで、大家さんの安定収入は二の次としている。そのため、地方の使われていない土地などの地主さんに強引な営業をかける。結果として、入居率の低い物件を所有するはめになってします。

建物が竣工して引渡された当初の2~3か月は家賃収入が不安定な事から、賃借人募集期間とされ、この期間内は大家さんに対して保証賃料が支払われない場合場ある。

サブリース会社が倒産した場合、サブリース契約は反故になる。大家さんは賃借人と直接契約していないので、賃借人と契約しなおす必要がある。

ワンルームマンションの場合、不動産投資の知識が少ない20~30代に対して、「元手・保証金不要」「年収300万円で大家になれる」などのメリットを強調し、投資物件には使えないフラット35などを不正契約させる事例も生じている。

以上のような問題点が指摘されております。

最近では「かぼちゃの馬車」事件や「レオパレス21の1000棟以上の違法建築」など、サブリースにかかわる大きな社会問題も報じられています。
いずれにしても、甘い言葉にのってしまった投資家や地主さんなどが大きな損害を受け、「夢の安定収入」から一転して「自己破産」まで追い込まれるケースもあります。

「かぼちゃの馬車」事件概要

株式会社スマートデイズが行っていたサブリース事業で、女性専用シェアハウスを30年間定額の賃料を保証するとうたって、シェアハウスの販売とサブリース事業を展開していました。
ところが、実際のシェアハウス入居率は低く、オーナに支払う保証賃料より実質の家賃が下回っており、廉価なシェアハウスを高額で販売して得た利益で保証家賃を補填して自転車操業を行っていました。
次第に資金繰りが悪化し、シェアハウスの新築・販売ができなくなりオーナーへの保証賃料を払えなくなりスマートデイズは破綻。オーナーは保証賃料の入金がなくなり、多額のアパートローンと入居率の低いシェアハウスが手元に残ることになってしまったのです。
しかも、多くのオーナーがスルガ銀行からメチャクチャな融資を高金利で受けていたことも判明しており、スルガ銀行が行政処分を受ける事態まで発展しました。

7.まとめ

「土地の有効活用」「相続税対策」「老後の安定収入」は確かに魅力的な文言です。また「30年一括借り上げ」など、なんて美味しい話だと思いうかもしれません。しかし実際には30年間同じ家賃が支払われ続けることはまずありません。たとえ「30年間、一切賃料の見直しは行わない」と契約書に記載があっても、借主(サブリース会社)に不利益なものであるとして借地借家法で無効になるおそれもあります。
アパート経営は、不動産投資という意味合いもあります。誰も損をするために投資する気はないと思います。しかし、投資には必ずリスクが付きものです。甘い言葉だけを鵜呑みにしていては取り返しのつかないことになりますので、「よく調べる」「よく考える」「いろいろな人の意見を聞く」ということが重要となってきます。