介護に寄り添った家って?

こんにちは!
ドラマ大好き主婦、ヤマダです。

私には何度も繰り返し観てしまうドラマがあります。その中でも特に好きなふたつを先日サブスクで再度観ておりました。
ひとつは「獣になれない私たち」。日本テレビで2018年10月から12月にかけて放送された、新垣結衣さん、松田龍平さん主演の作品です。本当の自分とは違う自分を求められ苦しみながらも必死に歩く主人公のほか、各々の事情を抱えた登場人物が多数登場し、自分自身の姿もその中に見つけ、勇気をもらえるような、そんな熱い作品です。
もうひとつは「ゆりあ先生の赤い糸」。こちらはテレビ朝日にて2023年10月から12月に放送されたもので、刺繍教室を営む主人公、ゆりあ先生の夫が突然、くも膜下出血で倒れることから物語は始まります。それまで知らなかった夫の交友関係に衝撃を受けながらも、植物状態となった夫の介護にしっかりと立ち向かっていく、凛々しいゆりあ先生の姿がとても眩しく、観るたびに胸が熱くなります。主人公のゆりあ先生を演じた菅野美穂さんの演技がとにかく圧巻で……。
と、ついついたくさん語りたくなってしまうのですが、本題に戻しましょう。
このふたつのドラマには共通点があります。どちらにも「介護」について触れる部分があるところです。「ゆりあ先生の赤い糸」は言うに及ばず、介護が中心となった物語です。そして「獣になれない私たち」にも介護についてのエピソードがあります。新垣結衣さんが演じる晶の恋人、京谷の母、千春が夫を在宅介護しているのです。
まだ私には介護に対して実感がありません。しかし、ドラマを観ながら思ったのは、遠くない未来、私にも介護で悩む日がやってくるかもしれない、ということ。
私は今40代で、父も母も70代となりました。まだまだ健康で、生活に対し不自由を感じている様子はありませんし、同居等の話を持ち出しても「大丈夫だから」と言われるばかりです。両親からしたら私は結局子どもで、子どもに面倒をかけるほど自分達は老いているわけではない、ということのようです。
正直、難しいな、と感じてはいます。電車でもありますよね。お歳を召している方だと判断し、席を譲ろうとすると、「見た目よりしっかりしているので大丈夫です」と断られることとか。その経験を鑑み、「お歳だから」と気遣いをすることは、場合によっては相手を傷つけるものになってしまうのではないかと悩むこともしばしばです。実際、自分が両親と同じ年齢になったとき、「お歳だし無理しないで」と言われたら? 想像したら猛烈に悲しくなりました。ありがたいと思う可能性もないわけではないですけどね……。
とはいえ、確実に時間は過ぎていき、体は弱っていきます。両親も、私も。
介護も決して他人事ではなくなっていくのです。
実家に帰ったとき思います。ゆりあ先生や、千春さんのように在宅で介護をするとなったとき、この家は果たして介護に適した家なのかどうか。
そもそも介護に適した家、介護しやすい家というものはどんなものか。
住まいの記事を書いている今だからこそ、調べてみたい。
ということで、今日は、介護と住まいについて考えてみたいと思います。

介護



1. 介護者はどんな人が多いか

漠然と両親、そして義母の介護について考え始めたこのごろ。多分、この不安を抱えているのは私だけではないでしょうし、今このときも、介護に携わられている方も多いと思います。
実際のところ、在宅で介護をする場合、介護をしているのはどんな方なのか。
厚生労働省の調査結果を見て「やはり……」と思いました。
大前提、と申しますか、大部分がやはり同居されている親族なのですよね。
ざっと引用をさせていただきますね。これは2022年の調査結果を抜粋したものです。

要介護者との間柄
配偶者 25.7%
子 20.9%
子の配偶者 15.2%
父母 0.3%
その他親族 2.0%
別居の家族 9.8%
事業者 13.3%
その他 0.7%
不詳 12.1%
引用:厚生労働省 平成22年国民生活基礎調査の概況 主な介護者の状況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa10/4-3.html

上記の数字をご覧いただくとわかる通り、介護をするのは圧倒的に配偶者なのですよね。連れ合いの面倒を見るのは夫、妻、ということなのか。この調査では性別ごと、そして年代ごとでも統計を取っていて、総合的に見ると、配偶者、特に妻が夫の介護をしている割合が大きいと感じられました。また、60〜70代の要介護者を介護するのもまた、60〜70代というように、近い年代同士で介護され、介護し、の関係ができているのも驚きました。
しかし……そうですよね。配偶者の介護を、となれば、それは同年代になりやすいですよね。
なお、要介護者の年齢がもう少し上がってくると今度は子どもが親の介護をする割合が増えることもこの調査では記されていました。配偶者から子へ。介護の現場は常に流動している、とこの調査によって改めて知ることができました。

介護2

では、その流動する介護において、介護がしやすい家とはどんな家になるのか。
次章で調べてみたいと思います。



2. 介護に寄り添ってくれる間取りを

介護に寄り添った家とはどんなものか考えたとき、ふたつの視点が必要だなあと感じます。
ひとつは介護される側が快適に過ごせるように考える視点。
もうひとつは、介護をする側に無理がないよう、介護側で考える視点。
どちらもがそろっていてこそ、介護に寄り添った家といえますよね。
では、介護される側にとって過ごしやすい家とはどんなことに配慮された家なのでしょうか。

きちんと意志を伝えられる状態であるのか、そうではないのかによっても違うかもしれませんが、介護をされる側はとても不安が多いと聞きます。それはそうですよね……。自分の心身を誰かの手にゆだねることに不安を覚えない人などいないと思いますもの。
だからこそ、介護をされる方は介護者に「自分のことをわかっていてほしい」「ちゃんと見ていてほしい」と感じているそう。
その視点から、介護される方に寄り添った家とは、コミュニケーションが取りやすい間取りの家であるとされています。
声を出してすぐ届く距離に、誰かがいてくれること。仮に声が出せずとも、自分の異変にいち早く気づいてもらえる環境であること。
そうしてみてみると、先に上げたふたつのドラマにおいてもその辺りを考慮した位置に介護される方は寝かされていたな、と思い出しました。ゆりあ先生の自宅では居間の一角にベッドを置いて介護をしていましたし、獣になれない私たちの千春さんの家でもリビングと続きになった部屋に介護用ベッドが置かれていました。
コミュニケーションとは双方があってこそ、と考えると、お互いの存在をしっかり感じられる場所に介護される方のベッドを置くことは、介護される方、する方、両方にとって利点が多いと感じますね。

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また、日当たりがよく、空気の入れ換えが積極的にできる部屋、というのも、介護される側に寄り添った家といわれているようです。当たり前にも感じるけれど、この部分に意識を置くことって大事ですよね。介護をされる方は外出されることも少なくなります。そうなるともっとも長い時間を過ごすのは自宅ということになりますから、日当たり、空気の入れ換えがしっかりできる開かれた部屋であることは、介護される方の快適な生活を守るために不可欠と感じます。過ごしやすさという観点から、窓の外の景色を楽しんで見られる、テレビを寝ころんだままでも見られるというように、体に負荷をかけず、部屋の中で楽しく過ごせる家具の配置を考えることも大事なよう。
実際に自分自身が介護を受ける立場になったとしたら、と考えて寝室で横になってみました。我が家の寝室は眠ること以外を想定して作ってはいなかったせいか、眠る以外の楽しみをベッドに横になった状態で見つけようとすると、いろいろと不都合が多かったです。たとえば、テレビを見たいと思っても、横になった状態で見られるような位置にテレビはないし、寝ころんだまま窓の外を見るということを考えてベッドを置いていないから、窓枠が邪魔で外も見えない。我が家の寝室って驚くほどできることが少ないなあと思いました。
楽しみに重きを置いて考える一方で気になったのは、ベッドの高さですね。寝ころんだ状態でベッドの下を見ると、床が遠く見え、恐ろしかったのです。
調べてみると、介護ベッドの高さは40㎝が一般的とのこと。立ち上がるとき、車椅子へと乗り移るときなど、床に足がしっかりついた状態で移動できるようにするためには、それ以上になると危険になるからのよう。ただ、介護をする側からすると40㎝は少々低過ぎるそうなので、高さ調節ができる介護ベッドがよさそうですが。

介護4

では、介護をする側にとって住みやすい家とはどんな家なのか。
住む、という観点でいうなら、日当たりが良い、空気の入れ換えがしやすいに関しては、介護される側、する側、どちらにとっても大切かと思います。ただ実際に窓を開け閉めするのは介護をする側になりやすいですから、介護する方の体形を考慮して窓を開け閉めしやすい家具配置を意識する必要があるといわれています。
そしてコミュニケーションにおいてもしかり。介護をされる方からの信号、合図をしっかりキャッチできる位置に自分がいられるような間取りであることが大事だそう。そのためには第一に見通しが良い間取りであること、第二に家事動線に無駄がなく、短時間での行き来がしやすいよう考えられた間取りであることが重要なよう。
キッチン、風呂、ランドリースペース、トイレなど日常的な家事で立ち寄る場所と、要介護者の居室を行き来する動線が意識されていることで、タイムラグをなくすこともできますし、介護をする側、される側、双方にとって体力的にも精神的にも負担が軽くなるためです。
特にどの部屋からでもアプローチがしやすい動線、回遊動線を取り入れた間取りは介護に適しているといわれています。確かに直線的な間取りよりも回遊動線を意識した間取りならば、突き当りで切り返して戻るといった動作が必要なく、前進だけで部屋を巡れますものね。また、家族と廊下で鉢合わせして渋滞、ということもありませんから、車椅子での移動も楽々できそうです。
そして、介護をする側にとって忘れてはならないのは、介護をする人だって自分の時間は大切、ということ。
介護関係なく、誰かとずっと一緒というのは、わりと息が詰まりますよね。私も夫と24時間一緒にいろといわれると、少々息苦しくなります。(やばい、すでに定年後が不安になってきた……) 介護となればますますそうかもしれません。息抜きのためにも適度に距離を取れる場所は必要。ということで、介護に寄り添った住まいには介護をする方が息抜きもできるような、自分部屋もちゃんと作っておくことが重要なようです。部屋を作る場合、近すぎず遠すぎないことを意識すべきとのこと。というのも、近すぎるとどうしても介護のことが気になってリラックスに繋がらないからだとか。
まだ私は介護が身近な場所に迫ってきてはいません。しかしたとえば、家族が病気になったとき、看病をしながら思うことはあります。誰かのことを気に掛けながら過ごすというのは非常に気を張ることだな、と。看病と介護をいっしょくたに考えることはできないけれど、少なくとも私は、家族が病で長く寝込んだとき、隙間時間でした読書に随分救われた記憶があります。自分のことだけを考えられる時間が少しでも持てると、気持ちは随分軽くなるのですよね。



3. 終わりに〜状況は変わっていくから〜

どんな住まいだと介護がしやすく、されやすくなるのか考えてきたけれど、調べていてもうひとつ、見えてきたのは、「変化」でした。
介護があってもなくても、人生には変化がありますよね。家族が増えたり、家から離れていったり。同居したり。
介護の仕方についても現状がそのまま継続するということはないといいます。
家族での在宅介護ではなく、専門のヘルパーさんにお願いする形にシフトするかもしれない。
家族が新たに同居して、介護できる人員が増えるかもしれない。
あるいは、在宅ではなく、介護施設での介護に切り替えることもあるかもしれない。
そうした状況の変化が「介護」というステージにもあると思います。
ですから、それぞれのステージで使いやすい家、あるいは変化をさせやすい間取りというのも住まいを選ぶ場合、大切なようです。
たとえば、見通しの良い間取りがよいと前章で書かせていただきましたが、壁をぶち抜くなどの工事は大掛かりで大変。けれど家を選ぶ際、最初からなるべく間仕切りの少ない住まいを選んでいたら? あるいは、引き戸中心かつ、段差のない、車椅子でも生活しやすそうな住まいを選択していたら? いざ介護に直面してもリフォームの程度は少なくなり、コストも抑えられますよね。

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基準をどこに置くかはすごく難しいけれど、ある意味、介護という視点で家を選ぶことで、将来的に楽になるということもあるのではないか、と今回の記事を書きながら思いました。
千里眼ではないし、人生何が起きるのか見通すことはできないけれど、備えておくことに損はないのかもしれない。
すでに実家がある状態の私は、介護がもし始まれば、少なくともバリアフリーや手すりなど、安全面を考えたリフォームをせざるを得ないと思います。しかしこれから住まいを選ばれる方はぜひ、介護という状況も想像しつつ、住まい選びをしてもらえたらな、と思いました。
ということで! 最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!
今後も暮らし方を通した住居選びなど、住まいに関する疑問を調べていきたいと思っておりますのでどうぞよろしくお願いいたします。






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