のれんについて考えてみた!

みなさん、こんにちは!
モデルルーム巡り、および家具屋さん巡りが大好きな主婦、ヤマダです!

さて、今日のテーマはのれんです。
私はのれんが大好きです。といっても我が家では取り入れてはいません。というのものれんで大失敗したからです。
どんな失敗を、というと……これを話すのはお恥ずかしいのですが……。

若い時分の話です。当時、部屋の中、玄関と居室の間にのれんを下げていたのです。
その日はとても暑い日で、涼を求めて自宅から徒歩1分のコンビニでソフトクリームを買い、なめながら帰ってきたのです。(すみません、食べ歩きしてしまい……)で、家に帰って鍵を開けて部屋に入……。
そこでやらかしました。のれんをからげて入ったつもりが、暑さでぼーっとしてソフトクリームを持った手でのれんを上げてしまい……。
おおお!と思ったときはもう遅い!
お気に入りの藍染ののれんにソフトクリームがべったりと横面をくっつけておりました。

またある日にはこんなことがありました。
これもまあまあ若いころのお話です。
部屋の中で髪の毛を自分でカラーリングしていたときのこと。
突然、来客がありました。
カラーリングを自宅でされる方はご存知かもしれませんが、カラーリング剤は布地や家具などに付着するとなかなか厄介なしろものです。
そのため、汚れないよう、ケープをかぶったまさにテルテル坊主のような恰好で私は髪を染めていました。こんな格好では当然来客対応などできません!とはいえ、誰が来たのかは気になる……と思い、ひょい、と玄関すぐ近くのモニターインターフォンを覗いたのです。
しかしその動作がいけなかった!
そう、モニターインターフォンの近くにはあれがあったのです。居室と玄関を遮るために吊るされたのれんが!
おおお!と思ったときにはもう遅い!
ケープがのれんにこすれてしまい、カラーリングの薬剤がお気に入りののれんに。。。

以上のことから、のれんってあんまりよくないんじゃ……と思い始め、あまりのれんをかけなくなりました。(ってどれも私がちゃんと注意して使用すればいい話なのですけれども💦)

しかし、先日、とある温泉施設で紐のれんを目にしました。
紐のれんとは、よく見られる布でできたのれんと違い、複数のひもを横一列に垂らしたものです。で、その紐のれんを見たとき、ああ、やはりのれんって和の空気が色濃くてとても素敵だなあ、と。
また取り入れてみたいなあ、と。

そう考えているうちにむくむくとのれんに対しての興味が沸いてきました。
そもそものれんってなんで下げるようになったのか。
インテリアとしてどんなのれんがあるのか。

もしかしたら意外と知らない事実があるのかも……。
ということで本日はのれんについて考えてみたいと思います。

のれん



1. そもそものれんって?

さて、のれん。
私は平仮名で記載させていただいておりますが、漢字で書くと暖簾、ですよね。
漢字を分解すると、暖かい。簾(すだれ)。
まずは簾について考えてみることが暖簾を知る手掛かりになりそうな単語です。

簾とは。辞書を引くとこう記載されていました。

” (「簀垂(すだれ)」の意) 細くけずった竹や葦(あし)などを緯(よこいと)とし、間隔を置いて糸で編み連ねたもの。掛け垂らして、風を通しつつ室の内外をへだてたり、日光をさえぎったりするのに用いる。簾(す)。垂簾(たれす)。《季・夏》“
引用:精選版 日本国語大辞典「簾」の解説

もう一つ、こんな記載もありました。


この名は「簀垂(すだ)れ」からおこったとみる説と、住むところの巣(す)の出入口に垂れ下げて風雨湿気を避けたのでという説がある。細い茎の葦(あし)や竹を細かく割ってつくった「ひご」を簀のように糸で編んでつくった屏障(へいしょう)具。外部から見えないよう、また強い外光よけや室内の仕切りに用いるが、通風性がよく、涼しい気分になるので、普通夏季に戸口や窓などに掛ける。(以下略)“
引用:日本大百科全書(ニッポニカ)「簾」の解説
https://kotobank.jp/word/%E7%B0%BE-539391

ふむ!湿気や暑さが厳しい日本ならではの調度という感じですね。通気性がよく目隠しにもなる。
この簾については古く万葉集の時代から存在したようです。
簾は通気性を重視して空気が通りやすいように作られているけれど、のれんは布。空気の通り道も減りますし、暖かい簾、と書かれたのも納得です。

ではでは、肝心の暖簾=のれんについてはいつから存在していたのか。
調べてみたところ、 平安時代の末期の絵巻『信貴山縁起絵巻』にのれんの中でも半のれん、と呼ばれる通常ののれんの半分の丈ののれんが描かれています。書物へののれんの初登場です。
のれんの使用目的としては、日よけや目隠しのために下げられていたようですが、その後時代を経て、江戸時代になってくるとのれんはそれ以外の使われ方をするようになります。
広告としての使われ方です。現在でもお店の入り口にのれんがかかっておりますが、屋号を描く、お客様にメッセージを送る、といった使い方がされるようになってきました。とはいえ、目隠し、日よけの役割がなくなったかというとそういうわけでもなく、家庭内でも目隠し、間仕切りなどの目的で取り入れられるようになっていき、現在までその文化は受け継がれることとなりました。

いや!調べてみると実に面白いですね!

なお、先ほど歴史のお話でも出てきましたが、半のれん、のように一口にのれんといってものれんには多くの種類があります。

たとえば、のれんの丈に着目してみると……。

のれん
丈が113cmくらいのもの。これが一番一般的なもののようです。
確かに私がイメージするのも標準サイズののれんかも。家庭に取り入れやすい長さかもしれませんね。

半のれん
のれんの約半分の丈のものです。お店の入り口にかかっているものはこのタイプが多いです。なぜ半分の長さなのか、というと、短ければ短いほど、店の中も覗きやすくなりますよね。入口からぱっと店の雰囲気を感じてもらえるため、短い丈のものを使うようです。
確かにあんまり長いのれんだと店内の様子がわからないし、めくってみるのも勇気がいる気がします。

水引のれん
半のれんよりなお丈が短く、40cm程度の丈のものを軒先いっぱいにかけておくタイプで、他ののれんと違って、店舗にて使用される場合、かけっぱなしにしておくようです。お店の印として使われているよう。

のれん2

長のれん
標準タイプののれんよりまだ長く、1m60mくらいの長さのもので、出入り口をすっぽり覆ってしまうくらいのものです。我が家の入り口にもしもこのタイプを掛けたら足元しか見えなくなりますね。目隠しとして使いたい場合、ちょうどいいなあなんて思います。
そういえば、温泉施設の入り口にかかっているのも中が簡単に覗けないこのタイプが多いですよね。

また、布以外で作られたのれんもあります。

縄のれん(紐のれん)
これは冒頭でお話したのですが、縄や紐を複数横に連ねて垂らし、目隠しにするタイプののれんですね。温泉施設で見たとき、なんて和っぽい!と思ったものです。
ちなみにこの縄のれんは布よりも昔からあったそう。虫よけになるイラクサを使った縄のれんだったとか。なるほどなあ、と唸らされました。

のれん3

珠のれん
ビーズなどを連ねて作られた紐を垂らしたのれん。
思い出してみると実家にもこれあった気がします!なんのためにあるん?と疑問もあったのですが、まああれがあることで部屋の間仕切りにはなっていたなあと。あとなんか、あの珠のれんをさらり、とかきわけて部屋に入る感じ、なんとなく雅だなあなんて感じたりもしていました(笑)

のれん4

ちなみにのれんといえば、食べ物屋さんののれんは汚れていれば汚れているほど繁盛している証拠とか昔は言われていたよう。
これは食事をして出てきたお客様がのれんで汚れた手をちょっと拭いて出て行く、という慣習があったからのようなのです。
今は衛生面のこともありますしこうした慣習はなくなっていると思いますが、そう考えてみるとのれんは汚れてなんぼというところもあるのかもしれませんね。



2. 現代家屋にのれんは似合うのか?

実際のところ、自宅にのれんをかけるとしたらどののれんがいいのか。
それを考えるためにはなんのためにのれんをかけるか、という用途に大きく左右されますよね。
のれんの歴史をみると広告の意味合いでの発展が目覚ましく、家庭内で使うときどんなメリットがあるのかがちょっとぼんやりしているようにも感じます。

ということで、家庭内で使う場合、のれんにはどんなメリットがあるのかを整理してみたいと思います。

① 目隠しになる
② 間仕切りになる
③ インテリアとして使える

この辺りでしょうか。
間仕切りや、目隠しを考えるのであれば、部屋の中があんまりしっかり見えちゃうのもなんですよね。そう考えたら、店舗でよく使われる半のれんや、水引のれんは対象外になるように思います。
とすると、きちんと間仕切りとしても目隠しとしても機能する、通常タイプののれんや、長のれんがベストとなります。

我が家にのれんをかける際、どこがよいかシミュレーションしてみました。

・リビングと玄関の境
我が家の玄関ドアは真ん中にガラスが入ったタイプのものになります。こうなっていると玄関はとても明るく、湿っぽさも感じられません。
が、反面、夏場は少し光量が多く感じてしまう、という難点もあります。そんなとき、のれんをリビングと玄関の間にかけると随分空気が変わるんですよね。リビングのドアを開け放っていたとしても、のれんによって光が遮られることで、くっきりと外と内を分けられる、とでもいいましょうか。
古来、のれんには注連縄のような意味合いもあるそうなので、この感覚は正しいのかもしれません。

・脱衣場の前
のれんのメリットとして目隠し、というものがあります。その機能を最大限に家庭内で活かすのであればここ以上に適所はないように思います。
実際、のれんってよくできているんですよね。
目線の高さは布で遮られ、隠れる。しかし、足元は開いているから中に誰かがいるかどうかはわかる。
家族同士であってもお風呂やトイレは気遣いが必要な場所。
のれんが一枚あることでそうした家族間の配慮がしやすくなることを考えると、やはりのれんってすごいな!と唸らされます。
余談ですが、夫の実家には脱衣場の前にのれんがありまして。あののれんのおかげで私は随分助けられました。というのも、主人の兄、私にとって義理の兄が朝風呂派で。私はそれを知らなくて気づかぬままに脱衣場のドアを開いてしまったことがあって……。あのときのれんがなかったら、お義兄さんに随分な失礼を働いてしまうところでした。私がちゃんとノックしろよ、という話ではあるのですが……。

のれん5

なお、インテリアとしても使える、と書かせていただいておりますが、のれんを用いることでお部屋の空気をコントロールすることも可能です。
以前、アクセントクロス(室内の一部分の壁の色を変えて部屋にアクセントを与えるクロス、壁紙のこと)についてお話した際も書かせていただきましたが、のれんにおいても同じ効果が期待できます。
なんといっても目線の先に飛び込んでくるものでもあり、面積も大きいですからね。
のれんというと和柄なイメージが強いですが、調べてみると北欧風の柄のものや、ガーリーな花柄など、実にさまざまな種類が売られています。
クロスを貼りかえるとなるとなかなかの重労働、かつ、金額もちょっと張りますが、のれんであれば安価なものも多いです。
一人暮らしでお部屋を自分好みにしたい!という方にとってのれんは力強い味方になるのではないでしょうか。

のれん6



3. 終わりに

先日、「ラストレター」という映画を拝見しました。
岩井俊二監督の映画でとても素敵で……と映画の細かい説明は省きますが、名作なのでぜひぜひ観ていただきたい!
さて、話題をのれんに戻しましょう。
この映画の中で、珠のれんが下げられたおうちの様子が映っています。
玄関前に伸びた廊下の先にある台所の前にその珠のれんは下げられています。それをからから、と音を立ててかき分け、松たか子さんが顔を覗かせるのです。
いや、もう実になんていうかエモかった!松たか子さんの演技が素晴らしいのはもちろんんですが、あの珠のれんがあることで、昭和レトロな家の様子がより引き立ち、また、内と外を明確に分ける境のようなものとして、立派に扉の役割を果たしていて。
のれんの底力を感じられた瞬間でした。

扉ほどがっつり閉ざすことはない。けれど、そこに確かに仕切りを感じさせる。曖昧な、優しいインテリア。
それは、柔らかい距離感で他者と接する日本人の気質が反映された素敵な調度といっていいかもしれませんね。

ということで、本日はのれんについてお話いたしました。
この記事によりのれんへ関心を持っていただけたら、この上なく嬉しいです♪






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