土地売買における契約不適合責任について
先日、土地の売買契約書の内容について売主様から
「地中埋設物に関しての売主責任について、免責に出来ないのでしょうか?」
という質問を受けました。
土地の売買は建物の売買に比べると、引き渡したあとに不具合があるということは少ないのです。
ただ建物と違い地中(地面の下)部分は、表面上見ただけではわからないので何が埋まっているかは掘ってみないとわからないわけです。
そのため、土地の売買において、引き渡したあとに撤去が必要なものが地中からもし出てきて建物建築の支障をきたす場合、一定期間その撤去費用は売主に請求出来るという取り決めにするのが一般的です。
『地中埋設物についての契約不適合責任』と言われるものです。
契約上この責任を免責とすることは出来るのですが、今回はこの契約不適合責任の主旨を説明して、一定期間内は責任を負うという内容で売主様には納得していただきました。
それは何故か?
免責にすることは簡単ですが、もし地中から大きな岩盤が出てきて、買主の建築工事をする際、撤去する必要があり、○十万円費用がかかることになった場合の買主の気持ちはどうでしょう?
最初から埋まっていることを知っていたのではないか?
費用負担するにしても全てを自分が負担するのは納得がいかない。せめて半分は売主に負担してほしいとなるのが人情でしょう。
人は最初から想定していたことは、納得しますが、想定していないことや予測困難なことが起こると、自分に非がないことに関してはなかなか、認められないものです。
要するにトラブルになる可能性が出てきます。
売主側も、そんなものが埋まっていることを知らなかったのであれば、売主側にも非はありません。
つまりどちらのせいでもないことなのです。
じゃあどうするか?
それであれば所有者である売主に負担してもらおうという所有者責任をとるのが適当だろうという考え方です。
また売主が、もしかすると埋まっていることを事前に知っていたかも知れない可能性も考慮すると、買主責任にするよりも売主責任にしたほうが買主保護と公平性の観点からみて収まりが良いからです。
地中埋設物に限らず、自然由来の土壌汚染や埋蔵文化財(遺跡)が出た場合の費用負担責任は特約がない限り売主にあることからも土地取引においても所有者責任があることは明らかです。
しかし、他業者の契約書をみると契約不適合責任を免責とする取引が多く見受けられます。
ただしこれは特約自体が有効でも、訴訟になったら売主が責任を負うという結果になる可能性も多いにあります。
ここが瑕疵担保責任と民法改正後の契約不適合責任の大きな違いです。
前者は法定責任であるのに対して、後者は契約責任(債務不履行責任)だということです。これは細かく契約書に特約条件として定める必要があるということです。
契約の内容に適合しない場合は、売主は責任を問われるということになります。
『契約不適合責任は免責とする』という一括りに全て免責にする特約も散見されますが、これは、一切の債務不履行責任を負わないと言っていることと同じです。
これ程、買主の心情を無視した内容があるでしょうか?
『瑕疵担保責任』という特定の責任を免責にするのとは全く意味合いが違うということです。
本来の主旨としては
・○○についての契約不適合責任は負わない。
・○○については契約不適合ではないことを確認する。
というように対象を特定して責任の有無を明らかにすべきです。
買主の購入目的や購入動機によって同じ契約書でも買主に適合するかしないかは個別に異なるので、買主に合わせてトラブルになる可能性を事前に摘み取る契約書を作成していくことが大切だと思います。