悪質な任意売却業者にはご注意を!
まずは、最近よくある事例をご紹介しましょう。
あるお客様(売却希望者)が、不動産売却の相談を、とある「任意売却なんちゃら協会」という所に相談されました。
その「任意売却・・なんちゃら協会」でかなり現実離れした提案を受けたので、本当にそんなことして大丈夫なの?
と弊社コーラルに相談に来た次第です。
どのような内容だったかというと、
まずこのお客様は
「住宅ローンの返済が厳しくなってきたので不動産(自宅)を売却したい」
「他にもクレジットカードのキャッシングや消費者金融からの借り入れがある」
「でも住む家は失いたくない」
「できれば息子(まだ20代、社会人2年目)に売って、自分はローンから解放されたい」
「住宅ローンの残債が3000万円くらい残っている」
「キャッシングなどの残債が300万円くらい残っている」
という内容のお客様でした。
私どもコーラルであれば、まず親子間での売買ができる可能性を徹底的に模索して、それに向け最善を尽くしますが、
この「任意売却なんちゃら協会」からは、
①親子間売買は住宅ローンの融資ができない。
②そもそも息子の年収が少ないので、ローンを組めない
③不動産担保ローンであれば、不動産の評価で1500万円くらいなら息子が借りられる
④早めに任意売却になるように住宅ローンの返済をストップする
ということを勧められ、
実際に任意売却が開始されたら
⑤当初の売出価格は2500万円くらいになるだろう(※任意売却の販売価格は債権者である金融機関や保証会社主導で決まります)
⑥売却開始後、債権者に対しては2500万円ではなかなか購入者が見つからないので、なんちゃら協会が債権者に価格を下げるように交渉していく
⑦債権者と交渉して息子が不動産担保ローンを組める1500万円まで価格交渉する
⑧2500万円とかで買いたい人が現れても、その人には売らないようにする
⑨1500万円で債権者が了承したら息子が不動産担保ローンを組んで、父親から買い取る
⑩父親はその後、自己破産して返しきれなかった住宅ローンの残債やキャッシングの残債をチャラにできる
⑪自宅は息子名義になるけど、父や息子と一緒にそこに住み続けることができる。父親は自己破産したけど、債務は一切なくなる
というスキームを提案されたとのことです。
知識もなく、お金に余裕もなく、切羽詰まってしまっている父親は、
「借金もチャラになって自宅にも住み続けられて、本当にありがたい。自己破産はこの際致し方ない」と物事の判断能力が低下しているようす。
一方、この話を不信がりコーラルに相談に来たしっかり者の息子さんは
「親父の役に立てるならどうにかしたい。自分がローンを組めるなら不動産担保ローンでも何でも組んで父親の家を守りたい」と。
「ただ、本当にこのスキームで進めて行っていいのか」と質問されました。
私は、「このスキームは問題だらけ」と息子さんには回答しましたが、
具体的には、
「そもそも2500万円で売りに出したものを1000万円も金額を下げるように債権者に交渉しても、債権者は応じない」
「2500万円で購入したい人が現れても、その人には売らないようにすると言っているけど、任意売却は債権者主導の売却となるので、そんなことはできない」
「仮に1500万円で息子が買えたとして、不動産担保ローンの金利はとっても高いので、返済が難しい。一時は息子のものになるけど、息子も返済ができなくなり手放さなければならなくなる可能性が高い」
と色々な問題点があります。
しかも、最も危険なところは、
「息子に買わせるために意図的に価格を下げる」ことです。
債権者が応じないと思いますが、万が一1500万円まで意図的に価格を下げてしまった場合、債権者は本来回収できたはずの債権が減少してしまうことになります。
2500万円回収できたところ、1500万円しか回収できなくなってしまうのです。
当初の住宅ローンの残債が3000万円残っていますので、1500万円で売却した場合、本来は返しきれなかったお金1500万円が残ります。
この1500万円は債権者と相談して月々返済できる範囲内で返し続けなければなりません。
しかし、「任意売却なんちゃら協会」は自己破産でこの1500万円をチャラにするという提案をしているのです。
結局のところ、父親として最終的には自己破産を選択するので、いくらで売れても関係ない。
ということになってしまうのです。
逆に息子が購入できるのであれば安ければ安いほど良いとまで考えるのです。
さー皆さん。この話、「なんて美味しい話なんだろう」「なんて都合の良い話なんだろう」「すごい裏技だな」など、感心されるでしょうか。
このような話がまかり通ってしまえば、一番割を食うのはお金を回収しきれなかった債権者です。
よって、このような姑息な手段はまかり通りはずがありません。
私は任意売却と言う言葉が無い時代から、既に2000件以上の任意売却をお手伝いしてきましたが、こんな手法は債権者に見破られてしまうのです。
自己破産というのは権利として行える行為です。
ただし、自己破産したからと言ってなんでもかんでも全ての負債がチャラになるわけではありません。
自己破産の申し立てを行い、その後裁判所で調べ、債務免責(借金を返さないくても良いよと言う判断)を得て初めて借金は返さなくていいようになるのです。
特に今回のケースでは裁判所が調べたり、破産管財物件となり破産管財人が調べたら「免責不許可事由」に該当し、自己破産しても1500万円の負債がチャラにはならない可能性が高いのです。
「免責不許可事由」の中に
「あえて債権者に損をさせるような行為を行った場合(財産の秘匿、破壊、不当に安い価格での処分など)」という項目があります。
正に今回の取引では、2500万円で売れたかもしれない物件を1500万円で意図的に売ろうとしているので、チャラにはできない事由に該当するのです。
今回はひとつの事例を上げましたが、
この手の「なんちゃら協会」に相談している方からの相談がコーラルでは増えています。
実は
「全日本任意売却‥‥なんちゃら…協会」とか
「東京都任意売却支援‥‥なんちゃら…」とか
「全国住宅ローン救済‥‥任意売却‥なんちゃら…」
とか似たような名前の団体がいくつもあるのですが、ほとんどが「一般社団法人」の団体となっております。
実は一般社団法人は株式会社と同じで簡単に作れてしまう組織なのです。
「一般社団法人」とか「全国」とか「東京都」とか「協会」などのワードは「なんか公的な機関で、助けてくれるのかな」という印象を受けるのでしょうか。
この手の団体は、通常の不動産売買ではなく任意売却に特化している業者なので、本来通常売却や他の最善策があったとしても、力業で自分たちの土俵である「任意売却」に持ち込もうとします。任意売却をする為の団体なのですから。
今のこの手の団体は、任意売却で儲けれるから組織化したのです。
まず、良い話には裏があるのです!
任意売却自体はそもそも不動産取引・不動産売買の中の一つの方法・選択肢でありますので、任意売却全てを否定するつもりはありません。
また、これらの「なんちゃら協会」が全て悪質な行為を行っているという訳ではないと思いますが、あまりにもハズレ業者が多いような気がします。
もし、「住宅ローンの返済が厳しくて売却したい」「金融機関から任意売却を勧められた」という方がいましたら、私どもコーラルでも相談に乗れますし、三井のリハウスさんや住友不動産販売さんなどの大手不動産仲介会社でも相談に乗ってくれます。
くれぐれも「一般社団法人」とか「全国」とか「東京都」とか「協会」など、社会性・慈善性・公共性が有るだろう的な惑わせ団体に惑わされないようにしてください。
これら一般社団法人にほぼ社会性など無いのですから!
本当に「一般社団法人任意売却支援なんちゃら」とか「全国住宅ローン救済なんちゃら」という所に相談して、話がグチャグチャになってからコーラルに相談しに来る方がとっても多いですから。