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実勢価格の調べ方を、路線価や公示価格との関係からわかりやすく解説

更新日2024-03-25 (月) 16:24:29

土地は、一物四価(場合によっては一物五価)といわれ、目的に応じて一つの土地に公的に算定された3つ(ないしは4つ)の価格と、実際に売買する価格1つが有ると言われます。
ここでは、一物四価に含まれる実勢価格を理解し求めるために、その他の一物四価の中の路線価、公示価、固定資産税評価額と、基準地価を含めた一物五価についてそれぞれどういうものなのか、どう調べるのか、また利用するのかを解説します。そのうえで実勢価格の調べ方について解説します。
不動産の相場や価格を知り、不動産査定等で有効に利用することで得をする場合が有りますからしっかり読んで理解しましょう。

★目 次★
【実勢価格の調べ方を、路線価や公示価格との関係からわかりやすく解説】




以下では、実勢価格を理解するうえで一番理解しなければいけない路線価について具体的に解説します。また、実勢価格の求め方を公示価、固定資産税評価額、基準地価と対比し解説します。

路線価とは

路線価とは相続、遺贈又は贈与により取得した土地という財産に係る相続税、及び贈与税の財産評価を行う場合に利用する価格を言います。
実際に取引された土地の価格(実勢価格)ではありませんが、ただし調べるときに活用することができます。
路線価は道路に付され、その道路に面している土地1平方メートル当たりの価格として表記されます。

相続税と路線価

相続税は、亡くなった人(被相続人)の所有財産に対して、亡くなった時の『時価』に『換算して課税』されます。
この「時価」とは、「被相続人が亡くなった時点のその財産の実勢価格」のことで、『換算して課税』とは、「財産を亡くなった時点で換金した金額に課税する」という考えです。
この場合、現金、預貯金、株、小切手などの菅さんは簡単ですよね。その時の時価は誰でも確認できるのですから。
しかし、不動産(土地、建物、借地権など)はそうそう換金できるものではないので大変です。
相続税の計算根拠となる価格は無くなった時点の時価ですから、亡くなった時点に売れる価格を割り出さないといけないわけです。しかし、実際は売るわけではないのでいくらで換金できたのかを調べなければいけません。
そこで、国税庁が考え付いたのが路線価です。
この路線価を作る事で、亡くなった時点の財産の土地の価格を誰でも簡単に計算できるようにしたのです。

路線価は2種類ある

路線価は、道路(不特定多数の者の通行ができる道路)に面した標準的な宅地1㎡あたりの土地の評価額で、相続などの算定(相続、遺贈又は贈与より取得した財産に係る相続税及び贈与税の算出)を行う場合に使用する「相続税路線価」と、固定資産税、都市計画税、不動産取得税、登録免許税の算出に用いられる「固定資産税路線価」の2種類があり、双方とも評価時点は毎年1月1日で、国税庁が毎年更新し年に一度(7月1日)発表しています。
つまり、1年間は通期で「同じ金額」を利用し、相続税等が計算されることになります。

2つの路線価

なぜ、7月1日に公示されるかですが、これは相続税の申告期限が大きく関係しています。

相続税の申告期限は、被相続人(亡くなって財産を残す人)が亡くなってから10カ月以内とされています。そのことから、ある年の1月1日に亡くなった人は、その年の10月31日までに申告しなければいけないことになります。
例えば2019年1月1日に亡くなった場合、2019年10月31日までに相続税申告をしなければいけないというわけです。

従って、最低でも3カ月前の7月に発表しないと申告期限に間に合わないと考えられているのです。

但し、路線価はおおよそ予測がたちます。
それは、路線価は毎年前年4月に発表される公示価格の8割(80%)程度を基準に決定されるからです。

路線価の発表方法は、路線価図という図面を作成し、道路(不特定多数の者の通行ができる道路)に面している土地の1㎡あたりの価格を千円単位で示されます。

路線価を知りたい時はどうする?

財産評価基準書・路線価図①

路線価は、各地の国税局や税務署にて毎年8月初旬頃に冊子【財産評価基準書】として備え付けられ、無料で調べることが可能です。
また各地の主要図書館でも閲覧できるようになっていますので、比較的容易に調べることができます。
最近では、インターネットの普及で国税庁のホームページでも閲覧可能となっており、こちらでも簡単に確認することができます。

路線価の実際の調べ方

路線価の見方について解説しましょう。
路線価は、路線価図のある地域はこの地図で簡単に確認することができます。

それでは、路線価図の見方と路線価について解説します。
例として、コーラル本店(東京都江東区亀戸5丁目5番地5)の土地 で説明します。
国税庁のホームページから、2018年分(平成30年)の路線価図を見てみましょう。

路線価図(平成30年)亀戸
(出典:財産評価基準書路線価図・評価倍率表)

更に下図はコーラル亀戸本店を切り抜き拡大しています。
コーラル本店の土地が面する道路は、【420C】と路線価があります。
これは、路線価1㎡あたり42万円で、借地権割合が70%ということを表しています。
説明すると、1㎡あたり42万円のうち70%が借地権の価格、つまり土地を借りている人(土地賃借人)の権利部分で、残りの30%が土地を貸している人(土地賃貸人)の権利部分の価格となります。


路線価図(平成30年)①

まず、路線価図の左上部にある「路線価図の例」を確認します。
ここに、様々な記号や表記が記載されています。これらの記号の持つ意味を理解することが重要です。「路線価図の年分と該当ページ」「地区種別の記号」「借地割合の記号」という大きく分けて3つのグループで構成されています。

1つ目の「路線価図の年分と該当ページ」は、一番左にある数字です(下図参照)。「30 30007 」とある場合、路線価図の年分と該当ページ番号を表します。
つまり、この場合「平成30年分の、30007ページ番号の路線価図」ということになります。


路線価図(平成30年)②各図解説明

2つ目はそれぞれの地区や借地権の割合を示す記号と数字です。
地区の種類は7つあり、亀戸の明治通りや亀戸駅周辺のビル群は、楕円形の中に路線価がかいてあるため、高度商業地区と分かります。
通常1人の人や法人が自用地として使用する場合は、路線価をそのまま掛けて計算します。借地権使用の場合は、借地権割合で計算し、各路線価の右隣に表示しているA〜Gまでの記号に対応する借地権の割合を示したものとなります。

路線価図(平成30年)③配置図

3つ目が、地図の向きと隣接するページ番号を表します。
また、当地を管轄する税務署がどこなのかが記載されています。
右端にも再度「30 30007 」とあり、路線価図の年分と該当ページを表します。

路線価を使った土地の相続税評価額の出し方

路線価図から路線価を読み取ったら、土地の相続税評価額を概算してみましょう。

相続税評価額の計算式

土地の評価額=1平方メートルあたりの評価額×宅地面積

※1平方メートルあたりの評価額=路線価×奥行価格補正率


※実際の土地の相続税評価額の計算では、土地が間口の広狭や奥行の長短など様々な形状が有り、個々の土地評価は単純に路線価に面積を乗じて求めるのではなく、間口、奥行、地形、権利形態(所有権、借地権等)などに応じた補正(画地調整率)を施して求めます。

路線価の使い方と相続税評価額

私たちが、「路線価で・・・・・。」と言う場合、一般的にこの場合の路線価は相続路線価のことを指していることが多いです。

日本では、土地や建物など不動産を相続する時に相続税という課税が有り、土地を相続する場合の算定でこの路線価(相続路線価)が使用されています。
具体的には、調べようとする土地の路線価図にある1㎡あたりの価格(千円単位)に、土地の面積を掛けることで土地の価値が決定できます。
このとき算出した価格を『相続税評価額』と言います。
路線価方式による計算方法ですが、その土地の形によって計算方法が多少変わってきます。

路線価と道路

路線価は、ある程度の公共性が認められる私道にも付されるており、具体例を挙げると次のようなものがあります。

(イ)公道であるか、私道であるか否かは問われません。
(ロ)必ずしも道路法上や建築基準法上の道路であるか否かも問われません。
(ハ)車両の通行の可否も問われません。

なお、路線価が定められていない地域の土地も有り、これら地域の土地を評価する場合には倍率方式で算出した価格を土地の価値としています。

倍率方式での算出法

倍率方式は、路線価が定められていない地域の評価方法です。倍率方式における土地の価額は、その土地の固定資産税評価額(都税事務所、市区役所又は町村役場で確認してください。)に一定の倍率を乗じて計算します。

●具体的な計算法

「固定資産税評価額×倍率」

路線価 倍率地域

固定資産税評価額(各市役所、町役場が固定資産税をかけるために計算した土地の価額」に、一定の倍率を乗じて計算するだけなのです。

そして、地域と地目を調べます。
もし、この土地が「宅地」であれば、「上記以外の地域」にあることになりますから、赤丸の「1.1倍」で計算します。
この土地の固定資産税評価額が500万円であれば、「500万円×1.1倍=550万円」 となるわけです。
倍率さえ間違わなければ、計算自体は、とても簡単です。
ただ、地方には地方独特の落とし穴があります。その間違えやすい落とし穴とは地方独特の「基準年度」の考え方と採用の仕方があります。

基準年度とは、固定資産税は、3年に1回、役所が金額を改定します。(言い換えれば、3年に1回しか見直さないということです)
ですが、地方の役所によっては、固定資産税評価額を毎年変えているところがあるんです。
必ず倍率方式での算出法するときには、基準年度の固定資産税評価証明書を役所から取り寄せ利用するようにしましょう。

なお、全国の3年分の路線価図及び評価倍率表は、国税庁ホームページで閲覧できます。

上記で説明してきたように、路線価は相続や贈与時の土地価格を算出する指標に利用しています。ただこの路線価がそのまま売買価格になることはほぼありません。
親子間や兄弟姉妹間、夫婦間など親族間売買時には、この路線価が最低売買価格の基準と説明されている不動産会社が有りますが、実はその考え方はとても危険なのです。実際、親族間売買をするときの物件価格は路線価ではなく、実勢価格に近い価格で行う必要があります。
そこで以下では実際に親族間を含めた不動産売買する時に用いる実勢価格について、他の公示価などの価格と比較しながら解説します。

実勢価格VS路線価、公示価格、固定資産税評価額

日本の土地に有る異なる4つ(5つと言う場合もある)の価格(評価)、これを「一物四価」や「一物五価」と呼んでいて路線価、実勢価格、公示価格、固定資産税評価額が有り、基準地価を合わせ5つという場合も有ります。
下記図に比較したように5つの土地価格は、それぞれ利用される目的が異なっているので、用途により使い分ける事になっているのです。

一物五価

実勢価格と路線価、公示価格、時価の関係、その差とは


比較1

このうち路線価と関わりが深いのは国土交通省管轄の【公示価格】、都道府県知事管轄の【基準地価】です。また固定資産税評価額も路線価と深くかかわりがあります。
実勢価格は、私たちが通常不動産を売買するときに最も利用する価格です。
それでは、それぞれの違いを詳しく見てみましょう。

実勢価格と路線価、公示価格、その関係

では、路線価と実勢価格、時価の関係はどうなっているのでしょう。
関係を理解して頂く為にもそれぞれの価格をまずは解説しましょう。

実勢価格

実勢価格とは、売却価格と購入価格が折り合った価格、言い換えれば売り手と買い手の間で需要と供給が釣り合い実際に市場で取り引きされる価格です。
実勢価格とは、実際に取引される価格のことで、売り出し価格ではなく、実際に取引が終了した価格をいいます。

実勢価格 ≠ 売出価格

売り手は高く売りたい思惑が有り、買い手は安く買いたい希望があります。この両者のバランスが取れた金額こそが、本当の意味の「時価」なのです。
先にも解説しましたが、相続時に実際売買しないわけですから、時価を求めるのは大変難しいので路線価というものが導入されています。

地価公示(公示価格)

地価公示とは、地価公示法に基づいて、国土交通省土地鑑定委員会が、適正な地価の形成に寄与するために、毎年1月1日時点における標準地の正常な価格を3月に公示(令和2年地価公示では、26,000地点で実施)するもので、社会・経済活動についての制度インフラとなっています。

主な役割としては、

・一般の土地の取引に対して指標を与えること
・不動産鑑定の規準となること
・公共事業用地の取得価格算定の規準となること
・土地の相続評価および固定資産税評価についての基準となること
・国土利用計画法による土地の価格審査の規準となること  等

となっています。

なお地価公示(公示価格)は、一般の土地取引(売買)の指標とされ発表されるもので、実勢価格に最も近い価格とされます。
この公示価格の約80%を目安に定められる相続税路線価、更にその公示価格の約70%が固定資産税評価額と言われており、実際の売買における実勢価格を推測する際に役立つ指標なのです。

相続税路線価 = 公示価格 × 80%



また、路線価から公示価格を推測することも可能です。

公示価格 = 相続税路線価 ÷ 80%

路線価は道路ごとに付された土地単価(1平米当たり)と書きましたが、路線価の土地単価は実勢価格(時価)と同じ水準ではありません。

この差を利用して相続税対策が行われます。

例えば、下図にコーラル本店のある東京都江東区亀戸五丁目5番11号の2018年分(平成30年)の路線価図が有りますが、コーラル本店の在る第一ビルの底地(土地)の路線価は1㎡あたり42万とあります。
ですが、この土地のみ買いたい人がいて「土地については1㎡あたり42万出すので売って欲しい」という人がいたとしても、実際の取引は成立しないでしょう。
土地を売るかどうかは、その土地の所有者の自由なのです。
尚、つい最近この第一ビル(土地、建物)が売買されたのですが、おおよそ土地価格(実勢価格)はこの路線価よりもずっと高い価格だったようです。

因みに、被相続人が住んでいた土地や事業をしていた土地について、一定の要件を満たす場合には、80%又は50%まで評価額を減額してあげますよという小規模宅地等の特例という制度があります。この特例を利用できれば最大80%OFFになるので、相続税額の差はとても大きいのです。

この特例が使えるかどうかで、相続税が何千万も変わり、路線価と時価、実勢価格の関係、その差を利用することができるかどうかで大きな減税効果が期待できることになるのです。

実勢価格と路線価と公示価格、固定資産税評価額と、その求め方

つまり、その土地の路線価を80%で割り戻したり、固定資産税評価額を70%で割り戻したりすることで、その土地の公示価格を算出することが出来るということになります。
なお、上記の考え方から、路線価は固定資産税評価額の1.1倍(80%÷70%)程度であり、路線価の設定されていない市街化区域外の宅地については、固定資産税評価額☓1.1倍とすることがあります。

路線価実勢価格の目安=路線価 × 面積 ÷ 0.8 × 1.1
固定資産税評価額実勢価格の目安=固定資産税評価額 ÷ 0.7 × 1.1
公示地価(または基準地価)実勢価格の目安=公示地価(または基準地価)× 面積 × 1.1


路線価が無い土地を正確に出すときは、倍率方式で評価することになり、この場合、固定資産税評価額を基にした倍率方式で土地の相続税評価額を計算します。

さて、以上、路線価についてさらっと説明してきましたが、以下ではもっと具体的に路線価についての調べ方や使い方、相続税評価額の求め方、接道していない土地、路線価が乗っていない土地の相続税評価額の求め方や公示価格、実勢価格、地価、土地価格などとの違いについてもわかりやすく解説していきます。

実勢価格、また路線価と深く関係する親族間での不動産売買!

親子間や兄弟姉妹間など親族間で不動産売買するときに必ず設定する売買価格。この売買価格は時価(実勢価格)が基準と言われ、実際に市場で売買が行われている取引価格とされています。
親子間だからとか、兄弟姉妹間だからと何でもいいだろうと思い、とても低い価格で売買すると後程後悔することになります。

親族間売買時の路線価、実勢価格の使い方と税務署の対応

親族間売買時に取引価格を求めるには、「よく路線価で良いですよね⁉」とか、「実勢価格にしないといけないと言いますが実際はどうなんでしょう?」とかの質問を受けます。

実勢価格は路線価が分かれば「路線価による土地評価額 ÷ 0.8 × 1.1(または1.2)」で求めることができます。
ただしこれはあくまで参考値であり、実際には、計算した額と比べて大きく乖離する可能性もあります。

実は、親族間売買時の売買価格設定において「この価格で良いですよ!」っていう絶対価格は無いのです。
基準として有るのは、親族間売買で著しく低い価額で売買すると売主から買主へ『贈与』が有ったとみなされ=『みなし贈与』として贈与税が課税されることが解っているだけなのです。
税金課税をする国税庁では「著しく低い価額」であるかどうかは、個々の具体的事案に基づき判定としており、これに関して明確な基準が設けられているわけではありません。
国税庁HP「著しく低い価格で財産を譲り受けたとき」より一部分を抜粋

路線価とかけ離れた価格での取引(譲渡)には、なにか売買の裏に問題があり隠そうとしているのではないかと勘繰られ、特に贈与を隠そうとしての取引(譲渡)ではないかと勘繰られ、『みなし贈与』を疑い、これらの取引は税務署が調査するということです。

実際、税務署がみなし贈与が有ったとみなし贈与税を掛けた売買取引(譲渡)もあり、この場合には多くの場合訴訟となったりしますが、裁判所は路線価を取引における適正価格を判断するための材料になるとして判例を出しています。

時価に関するひとつの目安として、東京地方裁判所の判例(平成19年8月23日付)で時価のおよそ80%の親族間売買価格は著しく低い価格での売買(低額譲渡)ではないと判断され、みなし贈与税は発生しないという裁断を裁判所が下しており、この判例を基に親族間の不動産売買は適正価格である時価を決めることとなるという判例です。

◎裁判判例:東京地判平成19年8月23日(行ウ)第562号
「著しく低い価額」とは経済合理性のないことが明らかな価額であり、取引の実情を勘案し、社会通念に従い判断すべきものである
相続税評価額が時価の80%程度の水準であり、譲渡価額が相続税評価額同程度かそれ以上であれば、「著しく低い価額」での譲渡とは言えない
「著しく低い価額」での譲渡でなければ、時価との差額について贈与税課税はされない
「著しく低い価額」に当たるかどうかの判定において、実質的に贈与を受けたか否かという基準が妥当なものとは解されない



土地や建物の取引価格は、土地の形状や前面道路の幅員、接道間口や方位、隣地環境や建物仕様、築年数によって変わるため、適正価格の決定は下記のような公的価格や計算式を参考にして算出することになります。
なお、実際の税申告時には『譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)】を用いています。

さて、私たちの実際の土地取引において、この路線価を気にした取引をしているかと言うと疑問が残ります。
実は、査定時、確かに路線価を全く気にしないかと言えば嘘になりますが、多くの売買のケースでは公示価格や路線価を気にしながら、取引事例比較法を用い割り出しているのです。
更に、実際の売買される価格は市場の需給に合わせて日々変動するものでもあります。

更に路線価は既に触れましたが、公示地価を基準として決められ相続税路線価はおおむね公示地価の8割、固定資産税路線価はおおむね公示地価の7割とされています。

この路線価の基準となる公示地価は毎年1月1日時点の地価で、翌年にならなければ更新されません。
ところが、土地の実勢価格は常に変わっています。
年初は公示地価が実勢価格に近くても、年の途中で実勢価格に影響を与える出来事が起こると大きく変化することもあるのです。
アベノミクス時など1年間で10%ほど上昇することもあったほどです。

従って、路線価によって取引価格をしなければいけないと規定されているわけではありません。
土地の価格は極端にいえば、売主と買主が納得すれば、価格はいくらでもかまわないのです。
但し、この点をすべて考慮し自由に任せることは税務署には絶対看過出来ないのです。
売主と買主が納得しさえすれば、土地の価格を自由に設定でき、また取引(譲渡)も自由となると、土地を極端に安く売ったり高く買ったりすることも可能で、税率の高い贈与税を回避して財産を事実上の贈与することが可能になったり、譲渡所得税を回避することも可能だからです
この自由なる取引(譲渡)を看過した場合、たとえば親が所有している実勢価格5000万円相当の土地を子供に1000万円で売った場合、売買なので贈与税はかかりません。
こんな売買取引を税務署は見過ごすことができるはずが無いのです。

「みなし贈与」と路線価、実勢価格

では、どうやって実際にみなし贈与とされない売買価格を求めるか見てみましょう。

多くの場合、土地の価格は実勢価格(一般的な個人間で実際に取引される価格)を想定し割り出すことになります。
通常、土地価格は、取引事例比較法とやはり公示価格や路線価を用います。
直近1年間の近隣で取引された事例を、いろいろな角度から比較検討します。
そのうえで公示価格や路線価を用いて多角的角度から割り出します。
このとき注意すべきは、土地の所在によって実勢価格(一般的な個人間で実際に取引される価格)は、公示価格や路線価以上の値段になっている場合も有ったり、否、それら以下の価格になっている場合もあるということです。

例えば地方の空き家が目立つ土地などは、実勢価格が路線価を大きく下回っていることが大多数です。

実際の取引価格にはさまざまな要因が絡んでくる

実際の取引価格はケース・バイ・ケースという面が強いのですが、あまりにも路線価からかけ離れた値段、例えば路線価より低い価格がついた土地は、なにか裏があると考え税務署が徹底調査すると考えた方がいいでしょう。
特に、親族間の不動産売買は目を付けられ、おおよそ問題にならないケースの取引でも何かないかと審査されると思って良いのです。

土地価格や税金のお役立ちサイト

以下では、『一物四価』とも『一物五価』ともいわれる土地価格の調査について役立つサイトをご紹介しましょう。

不動産価格を調べるときにお勧めのサイト

土地総合情報システム(国土交通省)
  
   http://www.land.mlit.go.jp/webland/

不動産の過去の取引価格情報が調査できます。
地価公示・都道府県地価調査の価格を検索できます。


路線価図・評価倍率表(国税庁)
   
   http://www.rosenka.nta.go.jp/

不動産の相続時にはとても必要になる路線価が確認できます。


一般財団法人資産評価システム研究センターが運営する「全国地価マップ」では、簡単に路線価を調べることができます。

各県地価マップ(資産評価システム研究センター )
  
   http://www.chikamap.jp/

固定資産税路線価、相続税路線価、地価公示・地価調査の情報が地図上で参照できます。非常に使いやすく便利なサイトです。


税金や申告の手続きを調べるときにお勧めのサイト

国税庁ホームページ
   
   http://www.nta.go.jp/

取得税・譲渡所得・相続税などの税について調べる場合に使用します。確定申告・各種申請手続き・納税手続き方法も掲載されています。
タックスアンサーにはたくさんの事例掲載がされているので参考にしています。


路線価と深く関係する空き家の相続は早めに売却を!

路線価は、相続に深く関係することがにご理解いただけたと思いますが、もし親から家や土地を相続し、空き家や利用していなかったら早めの売却をおススメしています。
それは時限立法で減税が可能だからです。

相続した家と土地 一定期間に売れば税負担が減らせます。
現在、空き家対策の一環として、平成31年(令和元年)12月31日までに譲渡(売却)すること、“一定の条件を満たした場合”という条件付きではありますが、空き家を相続された人の譲渡所得(所得金額)から3.000万円を控除します!という「空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円の特別控除)」が施行されています。
相続したけど住んでいなかったり、住む予定も無い家や利用予定もない土地なら売りましょう!
思い出に浸っていても税金だけが掛かり、しかも月日が経つと共にどんどん売れずらくなっています。

続きは ☛ 相続した家と土地 一定期間に売却すれば税負担が減らせる。 へ


路線価の今、未来

国税庁より発表された2018年路線価では、三大都市圏はもちろん地方中核都市でも上昇率の幅が大きくなっています。

全国平均で3年連続上昇、ますます進む不動産価格の二極化

2018年の路線価は、全国平均路線価は対前年比0.7%の上昇となり、5年連続の上昇です。
ここ3年の全国平均路線価の対前年比率をみると、今年が最も高い上昇率となっています。

東京都は、昨年の3.2%を上回る4.0%の上昇率、その他の隣接県でも神奈川県(0.6%)、千葉県(0.7%)、埼玉県(0.7%)というように上昇が続いております。
また、大阪府(1.4%)、愛知県(1.5%)といった大都市も依然上昇傾向にあり、大阪府は5年連続、愛知県は6年連続で前年より上昇しました。

都道府県別での上昇率を上位3位まででみると、沖縄県が5.0%と最も高く、以下、東京都の4.0%、宮城県の3.7%の順で、全国では18都道府県が上昇した一方で、石川県が下落に転じるとともに29県で下落となっています。

個別の土地で見ると、今年も地点別の最高路線価は、東京都中央区銀座5丁目の「鳩居堂」前が4,432万円(1㎡当たり)で33年連続のトップとなりました。
過去最高だったバブル直後(1992年)の3,650万円を昨年超えたばかりですが、今年も引き続き過去最高価格を更新しています。
路線価など地価の上昇は都市の商業地ばかりがクローズアップされますが、京都宇治市の六地蔵奈良町のように、三大都市圏に関しては、こちらもインバウンド効果の影響が大きい郊外の商業地・住宅地にも波及しています。

訪日外国人の増加によるインバウンド効果が最も高かった地域の地価の上昇が目立っているのです。
しかし、インバウンド効果の期待できない地域の地価は下がり続けています。
この数年、地価の二極化が叫ばれていますが、路線価も同じ傾向に有り、不動産価格の二極化はますます進んでいます。

路線価上昇の要因と今後の動向

この4年間の路線価上昇をはじめとする地価上昇の大きな要因の一つが、インバウンド需要の増加、つまり訪日外国人の増加です。
京都では、オフィスビルをホテルにコンバージョンする例もあり、インバウンドによりホテルの絶対数が不足しています。
これから以降は訪日外国人の増加以外にも、東京オリンピック・パラリンピック、リニア中央新幹線整備開通、大阪万博開催など、地価を押し上げる要因となる大きなイベントも控えています。
インバウンド需要により、商業施設の再開発や、ホテルの再開発が盛んに行われています。その影響をもろに被っているのが都心部のマンション価格です。
都心部のマンション価格が、ホテル需要による地価の上昇に拍車をかけ、大きな変化を余儀なくされているのです。
立地の良い土地は旺盛なホテル需要により仕入れが難しくなり、こうした土地に好んで建てられてきたタワーマンションなどの価格が高騰し、買い手の手が届かない価格状況にもなっています。

日本政府は今、インバウンド需要を更に加速させようとしています。
その結果、ここ数年の路線価などの地価上昇は否めません。

しかし、その後はどうでしょう?
上がったものは必ず下がります。
これからの日本に差し迫る社会構造の変化、世界の情勢変化による不動産への影響は、上昇一辺倒な状況にはなく、多くの不安定な要素を多く忍ばせているのです。
路線価は、毎年前年4月に発表される公示価格の8割程度を基準に決定されるのですから、土地下落が始まったときにこのタイムラグが、如何に悪影響となるかを考えいるべきでしょう。

路線価は、相続税・贈与税の土地評価の算定基準なので、将来の相続税納税額に直結することから今後の動向に注意が必要です。

実勢価格の調べ方、路線価や公示価格との関係・まとめ

実勢価格の求め方を路線価、公示価格などから調べる方法を解説した上えで、実勢価格の使い方をわかりやすく解説してきました。
日本の土地事情(一物五価)の中で路線価は相続税など税金に直結、また実勢価格は実際の売買に直結していると言えるでしょう。
路線価は一戸建て売却時や土地売却時の売却査定には向かない価格で、実際の物件の売買時は実勢価格=時価が使われるという事が言えます。

相続税評価額の求め方は、基本的には価格を出したい土地の路線価を国税庁ホームページや民間のデータベースから調べ、その路線価に面積をかけるだけで、土地の価格を求めることができます。
ただ、路線価が有る土地ばかりではなく、路線価が無い土地も有り、その場合の相続税評価額の求め方は固定資産税評価額を基に計算することが必要になります。

実勢価格と路線価を利用し計算した相続税評価額の差額分について、相続税を節税する効果が期待できることも解説しましたが、相続開始直前に不動産購入した人が税務調査で相続税評価額での申告を否認され追徴課税になったケースがあるので注意したいものです。

ここでは、実勢価格の求め方、利用の仕方を路線価や公示価格と対比し解説してきましたが、土地売却時、一戸建て売却時の査定時には、路線価はほぼ利用していないので、もし実勢価格が知りたい場合は、一括査定サイトや直接不動産会社へ査定依頼されることをお勧めします。

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相続した不動産をどうしますか!?

相続した財産の中で一番多いものが不動産です。あなたは、この相続した不動産をどうしますか?もうすぐ、地方の不動産は売りたくても売れない時代が来ます。 待った無しな状況にある地方の不動産。地方の不動産と言ってもあなたのご実家も該当しています。ただ同然でも買い手がいない状況になる前に手を打ちましょう。

相続による不動産売却は必ず相続登記が必要です。

日本では、相続財産の約50%が土地や建物の不動産です。その不動産の所有者が亡くなり(この場合の亡き所有者を被相続人と言います。)相続が開始されると、相続人(相続する人)に不動産の所有権は移転するのが通例です。 通例というのは、異例もあり、それはもしかすると相続人全員が相続放棄することも考えられることもあるからです。この場合、所有権は裁判所の管轄で売却されることになります。
通常、相続が発生した場合、相続する不動産を相続人自身の名義に変えるには、「相続登記」の手続きをしなければなりません。

相続不動産の売却

不動産を相続により取得したけど、誰も住む人がいない。最近このようなケースをよく見聞きします。
今、コーラルでは、相続不動産の売却サポートに力を入れております。 不動産をどのように売却すればよいかわからないという方がいらっしゃれば、コーラルが全力でサポートさせて頂きます。

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相続は人生においてそう何度もあることではないので、いざその場面になると一体何をどうしたら良いのかさっぱりわからないで思案に余る場面が多くあります。 「相続」にあたっては、遺産の分割や相続税の申告・納税など、さまざまな手続きが必要となる。相続人だけで処理するのは難しい。 事実、多くの人がいろいろな専門家に相談したり、サポートを受けたりしながら行っています。 た