日本で大きくなりつつある空き家問題、その影響は?

人口が減少に向かっているとはいえ、住宅のニーズは変わらず存在します。

しかし、新築住宅が供給され続ける一方で、空き家が増加しているのです。
皆さんがお住まいの地域でもすでに空き家が目立ってきてはいませんか。

空き家がどれくらい増えているのか、またその背景を見ていくとともに、空き家増加で起こっている、またはこれから起こるであろう問題について考察していきます。


空き家は10年で1.2倍に増加

平成25年住宅・土地統計調査結果をもとに空き家の増加について見ていきます。

まずは下図をご覧ください。

『空き家等の住宅に関する主な指標の集計結果について』

この図は総務省統計局が発表している『空き家等の住宅に関する主な指標の集計結果について』からの引用データになります。

参照:総務省統計局『空き家等の住宅に関する主な指標の集計結果について』データ


総住宅数6062万戸のうち、居住世帯のある住宅は5210万戸で総住宅数の85.9%を占め、空き家などの居住世帯のない住宅は853万戸で総住宅数の14.1%となっています。

そのうち建築中の住宅などを除いた空き家は820万戸で総住宅数の13.5%を占めています。

住宅の7~8戸に1戸が空き家となっているのです。

昭和38年以降のデータをみると、昭和38年に52万戸で総住宅数の2.5%であった空き家は、50年間戸数でも総住宅数に占める割合でも一貫して増加し続けています。

平成10年には、総住宅数に占める割合(空き家率)が11.5%と10%を超えました。

平成15年には空き家は659万戸で総住宅数の12.2%でした。

10年間で数にして161万戸増加(平成25年の空き家:820万戸)し、増加率は24.2%となっています。

また20年前の平成5年と比べてみると、空き家は448万戸(総住宅数の9.8%)から372万戸増加し、増加率は83.0%となっています。
急激に空き家が増加していることが見てとれます。

また、平成30年の調査でもさらに増加することが予想されます。

まさに右肩上がりに日本の空き家は増加し続けているのです。

空き家増加についてさらに詳しく見ていきます。

総住宅数と総世帯数の推移を比較してみると,平成25年には1世帯当たり住宅数は1.16戸となっています。

平成20 年と比べると空き家は5年間で63万戸増加しており、建て方別にその内訳をみると、一戸建の空き家が50万戸で増加した空き家の79.0%を占めており、長屋建が4万戸(6.2%)、共同住宅が9万戸(14.2%)と、一戸建の空き家が大きく増加しています。

また、建て方別、空き家の種類別に増減数の内訳をみると、一戸建の空き家は、増加した50 万戸のうち、49万戸が「その他の住宅」となっています。

建て方別、空き家の種類別に増減数

※空き家のタイプは、この調査では賃貸のために空き家になっている「賃貸用の住宅」、売却のために空き家になっている「売却用の住宅」、別荘やたまに寝泊まりしている人がいる「二次的住宅」、そして、それ以外の「その他の住宅」の4種類に分けられています。
「その他の住宅」は、例えば転勤・入院などのため居住世帯が長期にわたって不在の住宅や、建て替えなどのために取り壊すことになっている住宅のほか、空き家の区分の判断が困難な住宅などを含んでします。
賃貸用でも売却用でもないことから、所有者による維持管理がされていない場合が多く、将来的に周辺環境に悪影響を及ぼす可能性があります。

空き家増加の背景

それでは、空き家が増加し続けているのはなぜなのでしょうか。

一つ大きな要因として、日本の人口減少が挙げられます。


空き家にしておく理由(複数回答)


参照:国土交通省データ

日本の人口は2008年の1億2,808万人をピークに減少に向かっています。これには1980年代から始まった少子化の影響が大きいといって良いでしょう。
また、世帯数についても近々ピークを迎え、減少に転じるとの予想も出ています。

しかし、現在でも都市部では高層マンションが次々に建てられ、郊外では宅地開発が続いています。

人口減少社会なのに住宅を供給し続けた結果、空き家の増加につながったといえます。

それでは、具体的にどのような事情でそれぞれの空き家は居住者を失ったのでしょうか。

よくある例として、高齢の親が一人で生活できなくなり子どもと同居する、施設に入る、または死去するなどして自宅に住まなくなった場合に、すでに離れた場所で生活している子ども家族が親の自宅に住まないということが挙げられます。

親が高齢になる頃には、子どもは仕事や家族との生活で、離れた生活拠点を持っているケースも多いでしょう。

持ち家の取得方法は「新築(建て替えを除く)」が 100 万戸と最も多く、平成 21 年~25年に建築された持ち家全体の41.6%、次いで「新築の住宅を購入」が75万戸で31.0%、これらを合わせると72.6%にもなるのです。他には「建て替え」が49万戸で20.5%、「中古住宅を購入」が7万戸で3.0%,「相続・贈与」が4万戸で1.9%などとなっています。

家計主が65歳以上の持ち家は半数が「建て替え」による取得となっています。

これらも数十年前に新築で取得したものである可能性が高いとも考えられます。

対して30代~40代を中心とした世代では、「新築」及び「新築の住宅を購入」の割合が高く、25~34歳ではこれらを合わせると90.2%にもなっています。

以上より、日本人の強い新築住宅志向がはっきりと見てとれます。

新築住宅はデザインが今風で、設備も最新、耐用年数も長いなど魅力的であることはわかります。

さらに新築住宅中心とした所得税、贈与税などの減税措置、金利優遇などの措置も新築を選ぶ後押しとなってきたでしょう。

日本人の新築住宅好きの強さからか、中古住宅はリノベーションやリフォーム、あるいは取り壊して更地にしないとなかなか売れません。

例えば元の所有者がリノベーションやリフォームを施すと、その分売却時の売値に上乗せすることになりますが、それでもそのままの中古住宅よりも売りやすいといわれています。

不動産・建設業界は、人口減少にもかかわらず変わらず住宅を供給し続けています。新築の住宅を建てて売るのが、これらの業界にとって最も手っ取り早い利益を出す方法だからでしょう。

空き家増加の影響

空き家が増加するとどのような問題が起こるのでしょうか。

人が住まないと、どうしても建物および土地の管理がいきとどかなくなります。

庭木や雑草が伸び放題で放置されていたり、ごみの不法投棄に被害に遭いやすくなったりします。

また、害虫の発生や野良犬・野良猫の侵入が増えたり、不審者の出入りがしやすくなったりと様々な問題が考えられます。

皆さんのご近所にもこのような状態の空き家は存在しませんか。

これらは、空き家だけの問題にとどまらず、近隣の世帯の迷惑に直結してしまうものです。

地域全体の雰囲気の悪化や、治安が悪くなりやすい傾向も否めません。

また、空き部屋率が高い賃貸マンションは賃料相場の下落が起こるでしょう。

空き部屋が多い分譲マンションや戸建ての地域では、不動産価値の低下といった影響も出てくるでしょう。

家を売却しようと思っても、思うような値段で売れないという不利益を被る可能性もあります。

建物を取り壊すにもお金がかかるし、売りたくても売れない、固定資産税や管理費がかかるばかり、といったにっちもさっちもいかない状況にもなりかねません。

そうしたことから生じる二次的な問題としては、子どもによる相続放棄も考えられます。

空き家が増加すると地域全体に悪影響を及ぼし、近隣の住宅の不動産価値にまで作用するのです。

まとめ

日本で大きな問題になりつつある空き家の増加と、その背景、またそれにより生じる問題について取り上げました。

日本の人口減少と日本人の強い新築住宅志向などにより、空き家は増加してきており、これからその流れが加速していくことも考えられます。

地域、また国全体としてこの問題に正面から向き合っていくことが必要となるでしょう。

その第一歩として、まずは一人でも多くの日本人が空き家問題に関心を持つことが大事だといえるのではないでしょうか。


リンク

現在、空き家対策の一環として、平成28年4月1日から平成31年12月31日までに譲渡すること、また“一定の条件を満たした場合”という条件付きではありますが、空き家を相続された人の譲渡所得(所得金額)から3.000万円を控除します!という「空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3000万円の特別控除)」が施行されています。

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