マンション売却と管理費、修繕積立金について

マンションを購入すると、毎月支払わなくてはならない費用があります。
「修繕積立金」と「管理費」です。
たまに自主管理のマンションが有り、管理費が掛からないマンションも見ることは有りますが、概ねマンションの場合、この「修繕積立金」と「管理費」はかかってきます。
これらの費用のうち、管理費は管理をスムーズに行うために使われ、修繕積立金は万が一に備えて積み立てておくものなので、すぐ使われるという事は有りません。

管理費と修繕積立金とは

マンションでは集合住宅特有の管理における費用を管理費で、また長期修繕計画により、ある一定の決まった時期などに修繕を行ってその資産を守っています。
では、マンションを売却することになった場合、これら積み立ててきた管理費、修繕積立金はどうなるのでしょうか。

ここでは、それら管理費と修繕積立金について、マンションを売却する際にはどういう扱いになるのか、売却時の返還はあるのかについて解説します。

マンションごとに違う管理費・修繕積立金

管理費は、マンション共用部分を維持・保全するために必要な経費を賄う目的で使われます。
具体的な例を挙げると清掃費用、給水ポンプ清掃費用、共用部分の電気、水道代、エレベーター保守定期点検費用、消防点検費用、火災保険料などがこれにあたります。
そして、それらを手配する管理会社に支払う管理委託手数料などもこの費用から賄われています。
以前、マンションの共有部で火災が発生しました。すぐ沈下したのですが、その後の補修工事はこの火災保険に入り、保険料を払っていることでほぼ全て保険金として支払われ解決したこともあります。

修繕積立金は、将来にわたって安全・安心・快適な生活が送れるように、定期あるいは必要に応じて実施するマンションの共用部分の計画的な修繕工事のために使われています。
具体的には、毎年の大なり小なりの補修などや、10年に一度などの大規模修繕工事を実施するための区分所有者全員で積み立てるお金であり、現在未来におけるマンション全体で行う外壁補修、バルコニーの防水、給排水設備機器の更新などを実施するためのお金となります。

中古マンションの場合、その費用額は築年、総戸数により大きく違います。また、管理しているマネジメント会社が名の知れた会社ほど管理委託手数料は高くなる傾向があります。

通常、管理会社は新築時のマンションデベロッパー(売主)の子会社や関係会社が受け持つことが多いです。

管理費、修繕積立金は月額数万円にもなる高額な費用なのですが、しかし、管理会社は管理費や修繕積立金のコストカットするためのアドバイスや施策はあまりしません。
管理会社に払う管理委託手数料も高額なのですが、その額を当たり前に支払っていると言う現状も有ります。
そのため、今、管理の現場で最も問題になりつつあるマンション管理です。しかし、その実情はなかなか把握されることは無く、多くのマンションでトラブルの種になりつつあります。
これを解決するため、私が取扱をした中古マンションでは、高額な管理委託手数料を見直すために、管理会社を変更した中古マンションもたくさんあります。

修繕積立金は当初安く抑えられている

マンションの中には、新築後1年目から5年目などの期間、修繕積立金を安く抑えているマンションがあります。
これ、一見するとマンション購入者の負担軽減になりメリットとなっているように思えますが、しかしいざ、所有者がマンションを売却しようとしたときに、この負担軽減処置が思いもしなかった大きな負担になる場合があるります。

具体的には、多くの長期修繕計画では、修繕積立金は建物の建築年数が経過するごとに、例えば新築後5年経過時点とか、10年経過時点とかで金額が上昇します。
マンションは建物が古くなるほど、維持管理に必要な金額も多くなるためこのようになっているのですが、新築購入当初の負担軽減によりこの負担額の上昇幅の大きさが、他のマンションよりも多くなり負担となっていることを消費者である購入者は知る故が有りません。

実は、この新築マンション購入当初の軽減処置は購入者のためのものではありません。

その実、売主デベロッパーの"売り安さ"を考えただけの金額設定になっていることなのです。
修繕積立金を新築当初低く抑えることで購入者の購入当初の毎月の費用負担を抑え、購入しやすいようにされているだけで、長期的に見れば本来必要な負担の先送りというデメリットなのです。
もうひとつ言えば、いざ、所有者がマンションを売ろうとした場合、この費用負担が大きくなっているために売るに売れない状況ともなる場合もあります。
本当にこの事実は多いのですが、誰も購入当初にそのことを考えていないということが有ります。

もし、仮に修繕積立金を抑えたまま数年経過した場合、築後12~13年目に行う第一回目の大規模修繕工事は賄うことはできても、それ以降の大規模修工事費用は資金不足となる可能性があります。

事実、この現実に直面している中古マンションはとても多いんです。

もし、買おうと思っている中古マンションが有ったら、不動産会社に購入検討しているマンションの【重要事項調査報告書】と【長期修繕計画書】を請求し、確認してみてください。

重要事項調査報告書とは、管理会社が該当マンションの状況を法令の決まりによりまとめたもので、マンション管理組合の管理形態や委託先、管理費、修繕積立金、さらに売主が管理費や修繕積立金を滞納している場合はその滞納額に関する項目があります。

ここでの注意点は、直近数年の間に管理費や修繕積立金の値上げを予定しているか、他には管理費や修繕積立金の滞納額の有無とその額が有るかどうかは必ず確認すべきです。

売主の場合、これらを不動産業者に全部任せ、全く把握されていない方がよくあられますが、これはとても危険です。

この管理費、修繕積立金の変更や、滞納と言う事実のために、マンションが成約しないと言うことも有るのですから。
しかし不動産屋はこの事実をあまり言いたがりません。
デべロッパ―系列の仲介不動産業者の場合には、特にその傾向が有ります。

なぜ、教えないのか?

それは、担当者に聞いてみてください。
答えられないかもしれませんが、あなたは新築マンションを買うとき、将来、管理費、修繕積立金が高額になることを知っていたら買わなかったでしょう。とは言えないものです。
購入時は重要事項説明でこの管理費、修繕積立金の変更の予定は説明されます。しかし、購入者は、重要事項説明の内容のあまりの多さに将来の管理費、修繕積立金の変更までは意識が向いていないことが多いんです。

また、新築マンション購入時に管理費、修繕積立金が高かったら買わないかもしれませんよね。その為、新築時は管理費額、修繕積立金額を低く抑えて魅力的にしているわけです。

画像の説明

それに気付かないあなたに、目先の利益だけを見せて「カモがネギしょっていたんですよ」と言えないからです。

話を戻しますが、長期修繕計画書には10年、20年先の収支バランスが記載されていますから、この書面を取って管理についての内容を具体的に知る事をすべきです。

毎月、マンションに住まう場合に掛かるコストは住宅ローンで借りた金額の返済金だけではありません。
管理費や修繕積立金も必ず支払わなければならないものなのです。
もしこの費用を支払わなかった場合は、競売にかけられてしまうことも有るのです。
えっ、ホントに?って思われるかもしれませんが、実は管理費や修繕積立金を滞納したばかりに管理組合から競売に掛けられるか、その前に売主が任意売却で売却しているマンションは多いんです。

マンション購入の場合、目先の住宅ローン毎月返済額に意識が行くことは仕方ありません。
誰でもそうなるのですから。
しかし、毎月掛かる費用は、その住宅ローンばかりではないのです。
マンションの管理・維持・補修にはこの管理費や修繕積立金は欠かせないものです。
この各費用も必ず掛かるものです。
この費用を積み立てていることで、マンションは資産性を維持しているとも言えるのですから、マンションの資産性を保つためには最重要な費用なのです。
しかし、反対に、この費用を滞納すると、マンションから追い出される可能性もあるという事は理解しなければならないでしょう。

修繕積立基金とは

また、新築マンションの購入で、もう一つ覚えておきたいのが「修繕積立基金」です。

この「修繕積立基金」なる費用は、最近の新築マンションに多く採用されています。
この費用の名目は、新築マンションの購入時に、毎月の修繕積立金の額を抑えるため、最初にまとまった額の修繕積立基金を集めるようになったのです。

修繕積立基金や修繕積立金は、マンションの長期修繕計画に基づいて決められます。
その金額は、エリア、物件の規模、建物構造、住戸の広さなどによって異なるのですが、『平成25年度マンション総合調査結果(国交省)』によれば、修繕積立基金の平均額は25万2,000円となっています。

ではどうしてこの「修繕積立基金」なる費用が登場したのか?

それは、これも実は売主デベロッパーの"売り安さ"を考えただけのものなのです。
新築マンション購入時はほぼ購入代金とその費用を住宅ローンと購入時費用のローン(諸費用ローン)で全額賄うことができたりしますから、費用が高額になることが目立つことは無いままスムーズに売買が進むように出来ているのです。

修繕積立金や管理費は返還される?

マンションを購入してから数年しかたっていない場合は、まだ大規模修繕工事は行われていないでしょう。
新築時から今に至るまで、月々経費発生している管理費はともかく、まだ使われていない修繕積立金は、マンションを売却した際に戻ってくるものだと思っている方もいらっしゃるようです。

しかし、修繕積立金も管理費も、修繕積立基金も売却時に返還されることはありません。

これは管理規約(区分所有法に基づいて定められたマンション毎の取り決め事)にはっきりと明記されています。

マンションの管理費や修繕積立金は、管理組合の安定的な維持・運営のために不可欠な重要財産なのです。

そのため、管理組合の権利である管理費や修繕積立金の徴収と債権は厳重に守られていて、所有していたマンションを売却するとき、すでに支払った分の修繕積立金の返還請求は出来ないこととなっているのです。

言い換えれば、分譲マンションの区分所有者から支払われた修繕積立金や修繕積立基金、管理費は区分所有者にとっての「債務」となり、管理組合にとっての『債権』となり、帰属先は管理組合に移ります。
つまり、区分所有者が管理組合に支払った段階で、これらの費用は管理組合の所有財産となり、区分所有者のものではなくなります。従って、返還請求は出来ないということです。

修繕積立金の返還が規約に記載されている場合を除いて、買主は売主が積立てた権利も含めて、物件を購入できるのです。

修繕積立金や管理費を滞納したまま売却できるか?

事実は出来ます。
しかし、現実は競売でもない限り誰も修繕積立金や管理費を滞納したままのマンションを買う人はいません。

では、もし、売主が修繕積立金や管理費を滞納していて、それを知らずにマンションを購入してしまった場合はどうなるのでしょうか?
区分所有法では「滞納した債務は次の所有者に継承される」と定められています。つまり、滞納された修繕積立金や管理費は、買主に支払う義務が生じるということです。

実は、競売にかけられたマンションの場合、修繕積立金・管理費の支払いが滞っている確率も高いので、注意が必要です。

先にも書きましたが、修繕積立金や管理費の滞納を原因として中古マンションが競売に付されている場合があります。

越後湯沢のリゾートマンションなどが、破格値で売却中や競売になっていることが有るのですが、これらはどれもが多額の修繕積立金や管理費の滞納が有ると言う現状がそうさせているのです。

越後湯沢のリゾートマンションを破格で購入しても、その実多額の修繕積立金や管理費を購入者は収めなければならなくなります。

だから、リゾートマンションは表面上とても破格なのです。

このようなことは、ほんとに稀ではありますが、購入するときには、引き継ぐべき債務があるかどうか、必ず確認するようにしましょう。
また、「えっ、修繕積立金や管理費を滞納したまま売却できるの!
だったらそのまま売却すれば良いじゃん!」と、表面ばかりに意思が集中しても、現実は売却活動など出来ないものです。
もし滞納したまま売却した場合、その滞納を必ず報告することを売買時の重要事項説明で義務付けているので、早々に買主にわかってしまいます。
その結果、想わぬ低い価格へと売買交渉されてしまうのが落ちとなります。

もし、マンション売却時、修繕積立金や管理費を滞納していた場合、不動産業者へどうすれば良いか相談すべきです。
不動産業者は解決の方法を教えてくれるはずですから。

最後に

以上、区分所有マンションにおける管理費、修繕積立金、修繕積立基金についてご説明してきました。
マンション売却時こそ管理費、修繕積立金、修繕積立基金の取り扱い方法や返還の有無を把握しておくことは、とても重要なことで有り、また新たな所有者とのトラブルを防ぐためにも、上記を確実に押さえておくことがとても大切です。