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相続した“空き家”売却。売主が住んでいなくても減税可能?
不動産会社への仲介手数料の特例措置を利用して売却する方法とは⁉
更新日2021-05-06 (木) 23:15:40 公開日2016年8月29日
ここでは、「空き家を相続した人が、その家に住んでいなくても3.000万円の特別控除を受けることは可能なのか?」という質問をお受けしたので、空き家の売却時の税金控除と、近ごろ特例処置された空き家売却時の仲介手数料について解説しようと思います。
まず結論から言うと、相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等を、令和5年12月31日までの間に売って、一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除することができます。
これを、被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例といいます。
また、空き家売却においては、不動産会社へ売却を依頼した場合の仲介手数料の特例処置も追加され、一昔前よりは売りやすくなったのではないかとも言われています。
★目 次★
空き家の現状
現在、空き家対策の一環として、令和5年12月31日までに譲渡すること、また“一定の条件を満たした場合”という条件付きではありますが、空き家を相続された人の譲渡所得(所得金額)から3.000万円を控除します!という「空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3000万円の特別控除)」が施行されています。
この特例、一旦期限を迎えましたが、ただ今後も空き家を相続するというケースは増えていくと予測され、また、地方には売りたくても買い手が見つからない空き家や低廉な不動産がありあまっています。
それゆえに、期限も延長されました。
実際、人口が減少しつつも、コロナ禍であっても都心への人口集中が止まらないため、地方には住む人がいなくなって放置されている空き家が山のように存在しています。
2013年時点のデータでも日本の空き家は820万戸あり、空き家率は13.5%で、現在では既に1,000万戸を超えている可能性が高く、既に空き家率は30%台になるという勢いなのです。
つい過日も、空き家に犬が数十匹飼われ、そのまま放置されていたところを近くの住人が見つけ、自治体へ通報し保護したというニュースを見ましたが、空き家は色んなトラブルの温床になってたりするのです。
それゆえ空き家は犯罪防止・自然災害対策・近隣トラブル防止のためにも数を減らしていくべきで、空き家を求めている人へ所有権を移転し有効活用することを検討しなくてはいけません。
そのための施策のひとつが、この空き家売却時の譲渡所得の3000万円の特別控除、もう一つが不動産売却時の売主に係る仲介手数料の特例処置なのです。
空き家売却時の譲渡所得の3000万円の特別控除という制度の内容を具体的に言うと『“一定の条件を満たしている場合”に限り、建物や土地を売った金額から、取得税、諸経費等を引き、残った利益から3.000万円を引いて課税する』というものです。
一定の条件とは?!
相続した家屋の要件
■相続日から起算して3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
■相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていたものであること
■昭和56年5月31日以前に建築された家屋(区分所有建築物を除く)であること
■相続の時から譲渡の時まで、事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていないこと
譲渡する際の要件
■譲渡価格が1億円以下
■家屋を譲渡する場合、現行の耐震基準に適合するもの
一部ではありますが、このような条件が付されています。
更地にするという条件があるが、更地も該当するのか?
この制度導入の検討自体が、「いま問題になっている“空き家”をいかに減らしていくか」ということを目的としているため、空き家を取り壊して更地にした場合もこの制度を適用することができます。
この制度の良いところ
この制度の良いところは、
相続された本人(家を売却したい人)が、その家に住んでいなくても3.000万円の控除が受けられるということです。
以前の制度(現行の制度)で「自己居住用財産を譲渡した場合の3000万円特別控除」であれば相続された本人(家を売却したい人)が、その家に住んでいなければ3.000万円の控除は受けられません。
相続を受けた時、多く見られるパターン
親御さん等から相続した家というのは、相続された人がその家に住んでいないというパターンがたくさんあります。
たとえば、親御さんが遠くにいらして、ご自身は違う場所に住んでいるという場合です。
その状態で、親御さんが亡くなり、その家を相続することになったけれども、ご自身は別のところで生活しているので、今後も、相続した家に住む予定はないということになります。
このパターンが、空き家が多くなっている原因の1つです。
また、このようなパターンにあてはまる場合、現行の制度であれば、その家を売却する際、控除を受けることができないということになります。
実際の案件例
いま、お話した多くみられるパターンで過去実際に相談を受けた案件をご紹介します。
①事例
『相談者』
両親が亡くなったので、両親が住んでいた家を売りたいと考えているが、何か控除などはないですか?
ご回答
相続を受けた人が、その家に住んでいれば、3.000万円の控除が受けられるのですが、このご相談者は、別のところに住んでいらっしゃって、今後も相続した家に住む予定はないとのことでしたので、その状況で控除を受けることは不可能です。
『相談者』
そこを何とか住んでいるということにして控除を受けることはできないですか?
ご回答
そんなお話しもでましたが、この控除については、税務署もけっこう厳しくチェックしておりますので、そうそう簡単に認められるものではありません。
『相談者』
どうすれば、居住者用の3.000万円控除を受けられますか?
ご回答
まずは、住民票を移した上で、実際にそこに住んでいるという証拠が必要になります。
『相談者』
証拠とは何が必要ですか?どんな確認をされるのですか?
ご回答
たとえば、公共料金の領収書があるか、郵便物がちゃんと届いているか等を確認する場合があります。
あるいは、かなり細かいことですが、近隣住民の方に聞き取り調査をおこなう可能性もあります。
税務署は、そんなところまでチェックをしているようです。
そのような厳しいチェックもありますので、“脱税っぽい”ことはしない方がいいと思います。
そのようなご相談内容でした。
とは、言っても、やはり3.000万円の控除が受けられないのは相続された人にとっては、とても厳しいことです。
【そのような方にとって、この「相続した空き家を譲渡した場合の3000万円特別控除」は朗報です!!】
この制度に改定された場合、収める税金(所得税)が具体的にどのくらい減るのか?!
まずは、現在の場合をご説明します。
①相続した家を、5.000万円で売った場合、売値5.000万円の5%(250万円)が取得費として売値から引かれます。
取得税がなぜ5%なのかについては、のちほどご説明いたします。
②次に、仲介手数用、測量費用、解体費用などの諸費用が売値から引かれます。
ここでは、諸費用をざっくり200万円と仮定します。
③売値(5.000万円)-取得費(250万円)-諸費用(200万円)で残り4.550万円
になります。
④5年以上の所有期間の場合4.550万円の約20%(910万円)の所得税等がかかってきます。
相続の場合、相続される前からの期間を引き継ぐため、だいたい5年以上の所有期間となります。
⑤現在の場合、この所得税(910万円)を翌年の確定申告で支払うという流れになります。
それでは、今回の空き家対策3.000万円の控除が使えた場合をご説明します。
①相続した家を、5.000万円で売った場合、売値5.000万円の5%(250万円)が取得費として売値から引かれます。
②次に、仲介手数用、測量費用、解体費用などの諸費用が売値から引かれます。
ここでは、諸費用をざっくり200万円と仮定します。
③売値(5.000万円)-取得費(250万円)-諸費用(200万円)で残り4.550万円になります。
ここまでは現在の場合と同じです。
④ここで、4.550万円から3.000万円が控除されますので残り1.550万円になります。
⑤5年以上の所有期間の場合1.550万円の約20%(310万円)の所得税等がかかってきます。
「5年以上」の理由については上記と同じです。
⑤控除が使える場合、この所得税(310万円)を翌年の確定申告で支払うという流れになり、現在と比較すると、翌年の確定申告で収める所得税等が、600万円減る!!ということになります。
そもそも所得税ってどんな税金?
所得税は、個人の所得に対してかかる国税です。
国税は社会保障費や公共事業、インフラといった国のサービスなどに使われています。
所得税は税率の決定において「累進課税」という仕組みになっていますので、これにより所得が増えると税率も上がっていくことになります。
取得税はなぜ5%なのか?
先ほどお話しした取得税5%についてご説明します。
買った時の値段がわからない場合、一律5%で計算するということに法律で決められています。
なぜなら、ずっと昔に先祖が買った土地や建物は、書類等も残っていないことが多いため値段がわからないということがたくさんあります。
明治時代やもっと遡ると江戸時代から、相続、相続・・が続いている場合などがこれに該当します。
『家を譲渡された⇒その家にご自身は住むことはない⇒売却したい⇒金額がわからない』という場合に、取得税として5%が適用されます。
空き家を売却する場合、仲介手数料が特例で認められた!
空き家を売買取引する際、通常、不動産会社へその売却依頼すると思いますが、この不動産会社へ支払う仲介手数料が特例で少々増額処置されるようになりました。
空き家売却時の仲介手数料
通常、不動産を売却する場合、仲介手数料の上限は売却された物件価格によって以下のように計算方法が決まっていました。
空き家も当然不動産ですので、仲介手数料はこの上限額が適用されてきました。
取引価格 仲介手数料の上限(消費税別)
200万円以下 取引価格の5%
200万円超・400万円以下 取引価格の4%+2万円
400万円超 取引価格の3%+6万円
今までも売買価格400万円の場合は、手数料は4%+2万円で18万円でした。しかし、この18万円は400万円の場合であり、売買価格に応じて一定額を受け取れるよう規定されており、例えば300万円の物件の取引だと、仲介手数料は14万円です。
ただ、2018年1月1日より、手数料とは別に現状調査、現地調査に必要な費用を盛り込めるようにし、宅地・建物の物件価格が100万円でも200万円でも、400万円以下の場合は「低廉な空き家等」として、売主から調査費込みで最大18万円を受け取ることができるように特例処置されるようになったのです。
低価格の空き家等を売却する際の仲介手数料
400万円以下の空き家等の売却では、従来の仲介手数料の他に、調査費用などの必要経費を上乗せできるようになったのです。
ただし注意点があり、上乗せできるのは売主のみで、買主は従来通りの上限額請求しかできません。
なお、仲介手数料+調査費用等の特例での上限は以下の通りです。
取引価格 従来の仲介手数料+調査費用の上限(税別)
200万円以下 18万円
200万円超・400万円以下 18万円
400万円超 取引価格の3%+6万円(変更なし)
空き家売却は増えるのか
低価格の空き家を売却する際の仲介手数料が18万円に引き上げられたことで、より多くの不動産会社が空き家の取引に積極的になる可能性はあると思います。
ただ、18万円では思うように売却活動は出来ず、また赤字は解消できない、という声も多く聞かれます。
ゆえに多くの不動産会社が媒介契約取得に消極的な状況は変わらないのです。
コーラルにご相談いただく地方の空き家売却では、売却価格が400万円以下の場合が多く、それゆえ売却を頼める不動産会社が見つからないのでコーラルに依頼できませんかと言う方が多くおられました。
ただ、今でもコーラルはこの取組が少々ハードルが高く、自治体が運営する空き家バンクをご紹介することしかできません。
空き家バンクは登録が無料であったり、自治体の方たちが案内を行ってくださるといったメリットがあるからです。
ただこの場合、自治体ホームページなどでの物件紹介に限られるなど、空き家の売却がなかなか進まないというケースが多くあります。
要は、空き家流通の根本原因が解決できていなく、空き家は売買しずらい現状が有るにも関わらず、その対策として不動産売買時の仲介手数料を少々いじっても解決できない処処問題が有るのです。
空き家売却の根本原因が解消されていない!
解決できない処処問題とはどんなことでしょう。
〇所有者にとっては負担が増える!
〇媒介契約のみで不動産会社が空き家の管理も引き受けるということ
〇古くなった空き家は雨漏りや水道トラブルなども多く、そのたびに現地へ行き対応しなければならない
〇売却から契約までに時間がかかり、何回も現地案内をしないといけない
〇少々の手数料増額では、不動産会社の経費が赤字になる
これらの全てが解決できていないのです。
このような理由から、『低廉な空家等の売買取引における媒介報酬額の特例』ができたとしても、不動産業者がやる気になって流通性が上がるとは考えられません。また売主も費用負担が増えるわけですし、売却できるとも限らないわけですから、相続するよりも放棄した方が良いという人も多くなるでしょう。
これでは、空き家の解消、解決には何らならないとも言えるのです。
まとめ
空き家の売却について解説してきましたが、益益増える空き家の解決にはまだまだハードルが高いと言う事も同時にわかっていただけたと存じます。
相続による不動産売却はこれからもどんどん増えていくと思います。ゆえに地方の空き家の売却も増えるでしょう。
ただ、今回の「相続した空き家を譲渡した場合の特例」を受けるためには、
①適用期間の要件
②相続した家屋の要件
③譲渡の際の要件
を満たさなければなりません。
この3要件の内、①の適用期間の要件は注意しなければなりません。
せっかくの制度ですが、「相続した実家をどうしようか」と考えている内に適用期日が経過してしまうと、こちらの制度は使えません。
また、空き家を売却したいと考えても不動産会社へ支払う報酬(仲介手数料)もバカになりません。
これではまだまだ空き家は増え続けていくのではないでしょうか。
ただ、超高齢化社会の昨今、相続も身近なものとなってきました。
相続した空家を売却するのであれば使える制度は最大限使っていきたいものです。