期限の利益の喪失と任意売却との関係

「期限の利益」って聞きなれない言葉ですね。

ただ、この言葉、私たちの生活に欠かせない決め事なのをご存知でしょうか?
結構知らないまま、この「期限の利益」について、私たちは生活シーンで契約条項の中で締結していたりします。

えっ、いつ?って思った方もおられることでしょう。
ご存知ないことも仕方ありません。ほぼ知らないままこの条項がある契約を締結しているのですから。

では、いったいいつどこでこの条項の入った契約を締結しているのでしょう?

必ず入っている「期限の利益条項」は住宅ローンやオートローンなど

あなたは、マンションや一戸建て住宅を購入するとき、銀行から住宅ローンを借りることが有りますね。
今、史上最低の住宅ローン金利を背景にほぼ100%の購入者が、銀行から住宅ローンを借入れします。
この住宅ローンを借りる場合に銀行など金融機関と交わす契約を金銭消費貸借契約といいますが、この中に必ず「期限の利益条項」は入っています。
また、クルマを買う場合のオートローンにもこの必ず「期限の利益条項」は入っています。
マンションや戸建て住宅などやクルマなどを買う場合、必ず入っている条項の1つがこの「期限の利益条項」なのです。
知らず知らずの間に、私たちはこの条項を利用していることになるわけです。

期限の利益で私たちは守られている!

住宅ローンを延滞しても、すぐに金融機関から一括返済を求められたり、自宅が競売になることはありません。
何故でしょう?

これは、この「期限の利益」で私たちが守られているからに他なりません。
実は、金融機関など債権者が競売などの法的権利を行使するには、債務が「期限の利益」を喪失していなければならないからです。

「期限の利益」とは、ある一定の期限を決めることで、債権債務に係る当事者が受ける利益のことを言い、契約書の一条項として必ずあります。
つまり、契約書上で規定された一定の期限が来るまでは、借入金等の債務に関する返済は猶予され行わなくてもいいという債務者側の利益のことであり、一方で、決められた一定の期間を過ぎた場合には借入金等の債権は回収ことができるという債権者側の権利も担保しています。

期限の利益があることで守られている具体的な例

もし、「期限の利益」の条項がないと金融機関から2000万円借りたら、取り決められた月の返済のみの滞納だけで、早急に2000万円の返済請求がされてしまいます。
ですが、「期限の利益」があることで、ある決められた一定期間は分割での返済が可能になります。

しかし、「期限の利益」の喪失期日の日が過ぎているのにお金を返さず滞納してしまうと、期限の利益の喪失することになります。

民法における期限の利益喪失

民法では、137条で期限の利益喪失を定めています。

民法 第137条(期限の利益の喪失)
次に掲げる場合には、債務者は、期限の利益を主張することができない。
1.債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。
2.債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき。
3.債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき。


 

具体的に金融機関はどう決めている

金融機関などの使用する金銭消費貸借契約書を見ると,以下のような条項があります。

第○条

甲又は乙は,以下の各号に規定する事由に該当した場合には,相手方に対する一切の債務について当然に期限の利益を失い,直ちに債務を弁済しなければならない。

(1)…、
(2)…

この条項は,「期限の利益喪失条項」と呼ばれる条項であり、契約書の終わりのほうに何気なく入っていることが多い条項です。

通常(1)…には、
 ・契約内容に違反した
 ・契約内容が偽りだった
 ・分割金の返済を6カ月以上怠ったとき
 ・破産などの申立てをしたとき
 ・抵当物件税金などの差押があったとき

など入りますが、ローンの返済が困難であると判断される各事由などが入っています。

ただ、ここでもっとも重要なことは、毎月の住宅ローンの支払いがきちんと行われていれば、期限の利益を受けることができるわけですが、もしこの毎月の住宅ローンの支払いが出来なくなった場合でも、この期限の利益は一定の期間の中でのみ利益として享受できることなので債務者に有利と言えるのです。

しかし、住宅ローンの支払いが滞るようになった場合、滞納後において、銀行などの金融機関からは督促や催告が届くようになります。
この間に住宅ローンの支払いを通常に戻せれば何ら問題はないのですが、しかしこれを無視し続ければ、必然的に債務者側は期限の利益を喪失してしまうこととなります。

その結果、金融機関など債権者は、債務者に対して借入金の一括返済を求めるようになります。

それと同時に、金融機関は、金銭消費貸借契約締結時に合わせて債務者が契約した保証会社との保証委託契約に則り、保証会社に代位弁済の手続きを請求します。
保証会社は残ったローンを金融機関に決まった金額(通常は残金全額)を肩代わりします。
このようにして金融機関は保証会社から借入金の一括弁済を受けることになります。
これを代位弁済と言います。

代位弁済の結果残るもの

代位弁済をした保証会社は、弁済金請求を債務者にしてきます。代位弁済で債権を金融機関から譲受けたのですから当然な行為なわけです。
言い換えれば、担保権者が金融機関から保証会社へ移行しただけです。
ということで、住宅ローンを借り入れた金融機関ではなく担保権者である保証会社が一括返済を求めてきますが、しかしそれが不可能ならば裁判所に抵当物件の競売を求め、代位弁済金額全額を回収することをします。

期限の利益の喪失前には任意売却は難しいケースがほとんど!

銀行が保証会社に代位弁済を求めるのは、期限の利益の喪失後ですから、ローンの延滞が6カ月以上(3カ月の場合もある。)経過してからになります。

そこで延滞も4カ月近くなると、「このままでは期限の利益を失い、残債は一括返済になります。」というお知らせになってくるのです。

保証会社が入らない住宅ローンもありますが、この場合、銀行は返済に柔軟に対応してくれるのでは、と期待する人がいますが、現実は全くそうではありません。

期限の利益の喪失前では金融機関はなかなか任意売却を認めてくれません。債務額全額を返済するのであれば別ですが、しかし、全額返済できない売却は保証会社と金融機関との契約上(債務者の期限の利益の喪失により金融機関が保証会社から債権額の代位弁済を受ける契約)とても難しいことなのです。
その結果、任意売却も競売も保証会社に移行した後の行為としてのみ行われると言えます。
このことを知らないか、もしくは手慣れていない不動産業者は知らない場合がありトラブルになることもしばしば見受けられるので注意が必要です。

なぜ保証会社は任意売却を勧めるのか?

保証会社は、少しでも代位弁済金額を回収するため、最終的には、法的手続きである競売によって、自宅の売却を行うのか、それとも、当事者間の任意の意思のもとで、高値の売却ができる任意売却を行うのかを決めます。
もし任意売却で解決できる場合、競売費用など多額の費用を使う必要がないため、保証会社は任意売却を積極的に勧めるケースもあるのです。

しかしこれもケースバイケースと言っていいかもしれません。

もし債務者が保証会社の意向を無視した任意売却を選択した場合、保証会社は競売でのみのを選択してしまうでしょう。

あなたが任意売却を選択するにあたり知っておくべきこと

保証会社などの債権者は抵当権の実行によって裁判所に抵当物件の競売の申立てを行い、その売却代金から自己の債権の弁済を受けます。競売がこの抵当権の実行によってなされる行為なわけですから抵当権は消滅してしまいます。
ここで抵当権が消滅してしまったと喜んではいけません。
それは、競売による売却代金が債権額に満たなかった場合、その残額については担保のない債権としてなお存在し続けることになるからです。つまり、抵当権が実行されたからといって、
債務全てが消滅するとは限らないのです。
競売しても債務全額を超える売却金額に満たなかった場合、金融機関はあなたの給料を差し押さえることも考えられるわけです。

通常、競売より任意売却の方が債権者の回収できる債権金額多くなる場合がほとんどです。ということは、少しでも多く債務金額を返済したほうが良いこととなります。

よって、まずは、期限の利益喪失になりそう、もしくは、そうなってしまったのなら、早めに任意売却を得意とする不動産業者に相談をすることをおススメします。