安心R住宅

安心R住宅

国土交通省は、既存住宅流通促進に寄与する「安心R住宅」の本格運用に向けて、10月30日より事業者団体向けの説明会を開催します。
業界では話題となっていますが、果たして、この「安心R住宅」って一体どんな内容の政策なのでしょうか?

安心R住宅制度とは

安心R住宅制度では、既存住宅に対する「不安」「汚い」「わからない」といったマイナスのイメージを払拭し、「住みたい」「買いたい」既存住宅を選択できるようにし、耐震性等の品質を備え、消費者のニーズに沿ったリフォームの実施等について適切な情報提供が行われる既存住宅に対して、国の関与のもとで商標付与を行うしくみを創設します。

安心R住宅の要件とは

安心R住宅は、中古住宅に対する「不安」「汚い」「わからない」といったイメージを払拭するために、以下のような基準を設けています。

(1)耐震性を有すること。 
(2)インスペクションを実施し、構造上の不具合及び雨漏りが認められず、購入予定者の求めに応じて瑕疵保険を付保できる用意があること。
(3)基準に合致したリフォームを実施し、従来の既存住宅の「汚い」イメージが払拭されていること。
(4)外装、主たる内装、水廻りの現況の写真等を情報提供すること。
(5)新築時の情報、過去の維持管理の履歴に関する情報、保険・保証に関する情報、省エネに関する情報、共同住宅の共用部分の管理に関する情報などの情報収集を行い、情報の有無等を開示のうえ、購入検討者の求めに応じて開示を行うこと。

(1)耐震性

既存住宅で、いずれかを満たす住宅であること。
①新耐震基準であること。
②旧耐震の場合は耐震診断や耐震改修を実施していること。
昭和56年6月1日以降に着工したもの。
昭和56年5月31日以前に着工したもので、耐震診断や耐震改修を実施し、広告時点において耐震性が確認されているもの。

(2)インスペクション

インスペクションは、建物の築年数にかかわらず建材や設備などの状態を把握し、物件のコンディションを調査してもらうことです。
新耐震基準だとしてもメンテナンス状態が良くなければ耐震性が低下してしまう可能性もあります。
例えば、外壁のひび割れは、これを放置するとひびの間から雨などが流れ込み、中の鉄筋が錆びてしまう可能性があります。これでは、新耐震基準であっても安心はできません。
インスペクションでは、このような点について専門家のアドバイスをもらうことが可能です。

(3)リフォーム

安心R住宅では、「汚い」という中古住宅にありがちなイメージをなくすため以下の2つのうち一方を満たしている必要があります。
①リフォームを実施していること
②リフォームを実施していない場合は、参考価格を含むリフォームプランの情報を付すこと
建築後極めて短いものなどはリフォームは不要です。
部位に応じて原則的な取替時期等の数値やチェック項目等を参考までに提供することを検討しています。

(4)現況写真の情報提供

当然のことながら、水廻りとは、キッチン、浴室、洗面所、トイレのことです。
リフォームを実施した場合に、仕上がり具合が広告に掲載されていることで、イメージがしやすくなります。

(5)詳細情報の開示

詳細情報とは、具体的には以下のような内容となります。
①新築時の情報
 適法性に関する情報、認定等に関する情報、住宅性能評価に関する情報、設計図書に関する情報
②過去の維持管理の履歴に関する情報
 維持管理計画に関する情報、点検・診断の履歴に関する情報(給排水管・設備の検査、定期保守点検等)、防蟻に関する情報<戸建て住宅のみ>、修繕に関する情報、リフォーム・改修に関する情報
③保険・保証 に関する情報
 構造上の不具合及び雨漏りに関する保険・保証の情報、その他の保険・保証の情報(給排水管・設備・リフォーム工事に関するもの、シロアリに関するもの<戸建て住宅のみ>等)
④省エネに関する情報
 断熱性能に関する情報、開口部(窓)の断熱に関する情報、その他省エネ設備等に関する情報
⑤共同住宅の共用部分の管理に関する情報
 管理規約に関する情報、修繕積立金の積立状況に関する情報、大規模修繕計画に関する情報、修繕履歴に関する情報

日本の中古物件市場

一戸建てを購入するとき、日本ではだいたいの人が新築の物件を選びます。
国土交通省が2013年に行った調査(既存住宅流通シェアの推移)によると、国内の全住宅流通量のうち、既存住宅が占める割合はわずか14.7%しかありませんでした。
既存住宅は「見た目や設備が古い」といったマイナスイメージをもちやすく、また老朽化によって、耐震性の低下や雨漏り、配水管の腐食といった問題が発生している可能性があります。
アメリカやイギリスなどの欧米諸国は、住宅の中古市場が整備されているため、生活レベルの変化、家族の増減などから、現在の住まいを売却し、新しい生活にあった家を購入することが当たり前のように行われています。
また、欧米で中古物件の市場が大きいのは、住宅の価値をリフォームなどによって手入れをしながら価値を保っていることが背景にあります。
しかし、日本は、住宅の中古市場がなく、中古物件の価値が大幅に下落するため、売らずに一生住むほうが良いと考えられています。
日本でも、同じように中古物件の価値を維持し、価値に見合った金額で売買できる市場が広がることが期待されています。

まとめ

政府が「安心R住宅」など法制度を改正して既存住宅流通を促進することで、ますます既存住宅市場は拡大していくことでしょう。
一方、旧耐震で耐震診断、耐震改修が出来ない、インスペクションで不具合が発見されるなどすべての既存住宅が救えないといった課題もあります。
2018年4月から始まるインスペクションを斡旋する改正宅建業法と併せて、既存住宅の買い方そのものを変えていく「安心R住宅」は起爆剤になるのか。
不動産業界に新たな物議が起き始めています。